仕事をしていると、色々な要因で怒りの感情は生まれてしまう。しかし怒りが生まれたからと言って、他人にぶつけていいわけではない。怒りが生まれた場合は上手にコントロールすることが大事だ。
今回紹介する「アンガーマネジメント」と呼ばれる考え方を身につけておけば、怒るべき部分に怒り、怒る必要のない部分には怒らないと「感情を振り分ける」ことができるようになる。部下の価値観が多様化する現在、個々を丁寧にマネジメントするためには、相手に合わせた伝え方が必要だ。
そこで今回は、アンガーマネジメントの概要や5つのメリットを紹介しながら、実践するためのポイントや注意点を解説する。
目次
アンガーマネジメントとは、怒りなどの強い感情を適切にコントロールし、伝えることで問題解決を図るスキルだ。ここで重要なのは、アンガーマネジメントは、怒りを感じなくするための手法ではないということだ。
大半の方は、怒りが良くないものだと捉えてしまう。しかし怒りの感情は「嬉しい」「悲しい」「楽しい」と同様、自然に生まれる感情であるため0にする必要はない。ただ他の感情と比べてエネルギーが強い。発信方法を間違えると後悔する結果を招くことがあるため、怒りの感情が生まれたときは注意しなければいけないのだ。
一人ひとりの「ゆずれない価値観」「〇〇するべき」という思考から、怒りは生まれる。つまり、自分の期待や理想が裏切られたとき、思っていた通りにならなかったときに生じるのだ。
ここからは、アンガーマネジメントが注目されている理由を2つ紹介する。
インターネットの発達により価値観の多様化が進み、価値観の異なる方と関わる機会が増えている。そのため、自分とは違う価値観を持っている方に対して苛立ちを感じたり、怒りを募らせたりする場面が多くなった。結果、人間トラブルの増加につながっている。このようなトラブルを回避する手段として、アンガーマネジメントが注目されているのだ。
会社のハラスメントを防ぐ目的で活用し始めたのも、注目されだした理由だ。怒りをコントロールできなくなると理性が効かなくなってしまい、ハラスメントの発生につながる。
ここではアンガーマネジメントを身につける5つのメリットを紹介する。
社員が怒りを上手にコントロールできれば、他の社員に怒りをぶつける場面が減る。よってストレスを溜める社員の減少が期待できる。メンバーと良好な関係性を築きやすくなるため、ギクシャクとした雰囲気を取っ払いたい企業にアンガーマネジメントは最適だ。
アンガーマネジメントを身につければ、感情が怒りに支配されなくなる。素直に物事を伝えられるようになるため、円滑なコミュニケーションが期待できる。意思疎通の質やスピードアップを目指している企業にもおすすめだ。
組織の成功循環モデルの中に、関係の質がある。組織を成功させるためには、行動や結果のような目に見えやすい部分ではなく、成果として見えづらい「職場で働く社員の関係の質」を向上させることが近道だ。遠回りのようで組織の成功のためには必要な技術であることに間違いない。
アンガーマネジメントを用いて社内コミュニケーションをとることは、関係の質を担保することにも繋がる。
相手に対して寛容になる社員が増えれば、相手に対して腹を立てたり、イライラしたりすることが減る。お互いの価値観を認め合える職場になり、成果を生み出しやすくなる職場になる。
自分の感情をコントロールし、相手に合わせた伝え方を身に付けることで、コミュニケーションがとりやすく、育成で感じるストレスも軽減される。
ここではアンガーマネジメントを実践させるときに、意識すべき4つのポイントについて紹介する。
「べき」に正解・不正解はない。人それぞれ持っている価値観は異なる。会議の例でいうと「会議には遅れるべきではない」ということは全員が思う「べき」だが、余裕を持って来るべきか、10 分前には到着すべきかどうかは人により異なる。
全員が違う価値観を持っているという考えを持つことが、アンガーマネジメントの基本だ。
自分がどのような「べき」を持っていて、何をどのように行動して欲しいかを相手に具体的に伝えることが大切だ。あなた自身が感じる「べき」を相手が知っているか、言わずともわかると思い込んでいないか振り返りをする必要がある。
怒りの逃がし方を覚えさせるのも忘れてはならない。下記2つの方法を実践するといい。
人の怒りのピークは6秒だといわれている。ただし、この 6 秒は、怒りが消え去るまでの時間ではなく、最悪の事態を防ぐための時間だ。怒りを感じた際、すぐに言葉や行動に出して後悔することがないようにコントロールする必要がある。
怒りから逸らすために、別のことをするのも効果的だ。仕事に関する怒りが出そうになった場合は「外を眺める」「散歩をしてみる」「食事を食べる」といった感じで、仕事のことを忘れられる状況へ持っていくといい。簡単にでき、効果的な手段だ。
その時の気分によって許容範囲を変えてはいけない。信頼関係を壊すきっかけにもなりうる。先週は大丈夫だったのに今日はだめだったなど、気分や人により態度を変える人だと認識される場合もある。境界線の広さを、自分の機嫌によって変えることのないように気を付ける必要がある。
最後にアンガーマネジメントを実践するときの注意点を3つ紹介する。
アンガーマネジメントを実践する方法は複数あるが、全ての社員に合っているとは限らない。性格や怒りが生まれた理由・シーンによって、対処方法は異なる。そのため、自分に合う方法を見極めてから実践することが大事だ。
アンガーマネジメントは、怒りの感情を全てなくすための手法ではなく、怒りをコントロールするための知識だ。怒りの感情を持つのは当然のことだ。そのためアンガーマネジメントで、怒りの感情を全てなくそうとするのは良くない。
質の良い生活習慣を心掛けるのも大事だ。心に余裕ができ、ストレスをストレスと感じにくくなる。睡眠、運動、食事を意識して生活をする必要がある。
アンガーマネジメントは日本でも多くの企業が活用している。社員がアンガーマネジメントを身につけると、このようなメリットが期待できる。
1.ストレスを溜める社員が減る
2.スムーズにコミュニケーションをとれるようになる
3.組織内の関係をより良くすることができる
4.相手に対して寛容になる社員が増える
5.部下育成時のストレスが軽減する
アンガーマネジメントによって怒りをコントロールできる社員ができれば、人間的に変われるだけでなく、仕事にも良い影響を与えてくれる。それぞれが怒りをコントロールできれば、職場に良い流れができて働きやすくなるはずだ。人間関係のトラブルによる退職者を出さないためにも大事だ。
とは言っても、正しい方法で実践させなければアンガーマネジメントの効果は期待できない。アンガーマネジメントを実践させるときは、以下4つのことを意識すべきだ。
1.「べき」は人それぞれ違うことを理解する
2.自分の境界線を伝える努力をする
3.怒りの逃がし方を覚えさせる
4.境界線を安定させる
これらのポイントを抑えれば、アンガーマネジメントを実践させやすくなる。現代では怒りを抑えられない方もいる。そのような方が社内に増えると、業務を進めるのが難しくなってしまう。
職場の阻害要因を増やさないためにも、アンガーマネジメントの習得は大事だ。ぜひ怒りのコントロールが上手な社員を増やしていただければと思う。
なお、アンガーマネジメント研修を受けることで、これらのスキルをまとめて学ぶことができる。本記事を作成したリスキルでも研修を提供しているため、ぜひ検討してほしい。