生産性向上の為、会議の進め方を見直す企業が増えてきた。そんな時は、「ファシリテーション」を身につけておけば役立つ。なぜなら会議の運営をスムーズにしたり、中身を充実させたりする効果が期待できるためだ。
ファシリテーションを活用するには、4つの能力を身につける必要がある。そこで今回は、ファシリテーションの概要を解説しながら4つの能力を紹介する。
ファシリテーションとは、会議などを円滑に進めるための手法を指す。参加者たちにとって、最高の場となるよう様々な手法が用いられている。
ちなみにファシリテーションを活用して、会議を仕切る方はファシリテーターと呼ばれる。ファシリテーターはメンバーたちがスムーズに参加できるよう、その場の雰囲気に合わせて立ち振る舞い方を変える。そのため前へ出ることもあれば後ろへ下がることもある。TPOに応じて対応の仕方を変えるのが、ファシリテーターの役目だと言えるだろう。
ここではファシリテーションの目的を3つ紹介する。
仮に参加者が誰も意見を言わなかったとしても、ファシリテーションを上手く機能させれば活発な議論は生まれる。参加者に発言させるきっかけを作ったり、参加者の意見に対して褒めたりするなど、あらゆる手法がある。
終了予定時間を大幅にオーバーしてしまうと、次の予定のスケジュールが狂ってしまう。しかし時間内に会議が終われば、次の予定を予定通り進められる。次のスケジュールを狂わせないためにも、ファシリテーションの仕組みは大事だと言えるだろう。
会議によっては様々な意見が発表されて、収拾がつかなくなる場合もある。すると結論が何も決まらないまま会議が終わってしまう。それを防ぐ意味で発表された意見をまとめ、参加メンバーが納得する結論を導き出すのは重要なことだ。
最大の理由は、世の中の動きが変わったことだ。たとえば一昔前の会議では、誰かが答えを決めて他の従業員は、その流れについていくことが多かった。しかし現代では様々な価値観が生まれたこともあり、「多様性」が尊重されている。結果、全員で話し合って結論を決める場面が増えてきた。
また国内では、働き方改革の一環で従業員の残業を減らす風潮となっており、会議を効率的に行う働きが増えてきた。これらの内容によって、ファシリテーションが注目されだしたのだ。
会社によっては外部からファシリテーターを呼んだり、社内でファシリテーションの勉強会を実施したりするケースもあるようだ。ファシリテーションのスキルは、今後も求められる可能性が高いだろう。
ここからは、ファシリテーションに必要な能力を4種類紹介する。それぞれの能力を発揮するために何が必要になるかも載せているため、参考にしていただきたい。
この能力がなければ、時間内で会議を終わらせるのは難しいだろう。ちなみにこの能力を磨くには、以下のことを意識した方が良い。
会議が始まる前に、スタートからゴールまでの流れやスケジュールをイメージしておくといいだろう。正直、イメージ通り会議が進むことは少ない。しかしイメージできれば、話が脱線したときに軌道修正しやすくなる。
特に複数の議題が用意されている会議だと、スケジュールが少し遅れただけで時間調整が発生してしまう。より一層、スタートからゴールまでの流れをイメージすることが大事になるだろう。
各参加者に会議の目的や内容を伝えておけば、どのような視点を持って会議に臨めばいいかイメージしやすい。無駄口をたたいたり会議の内容から逸脱した発言をしたりする参加者が減るため、会議を進めやすくなるはずだ。
相手の意見を理解できなかった場合、どのような展開に持っていけばいいか分からなくなり、空白の時間が発生してしまう恐れがある。そうなると会議が止まってしまい、進行させるのが難しくなるかもしれない。
しかし相手の意見を瞬時に理解すれば、会議をどのような展開に持っていけばいいか設計しやすい。したがって会議をスムーズに進められるのだ。ちなみに相手の意見を瞬時に理解するには、日頃から様々な内容をインプットしておくことが大事だ。本やインターネット・新聞などあらゆる媒体を使って、知見を深めよう。
参加者と会話のキャッチボールをすることが多いため必要だ。コミュニケーション能力がないと、会議の中で会話が生まれにくくなり議論が起きにくい状況になる。結果、設定したゴールとは別の方向へ進んでしまう恐れがある。その状況を回避するためにも、コミュニケーション能力は身につけた方がいい。ちなみにコミュニケーション能力を上げるコツは以下の通りだ。
とにかく相手の話を聴こう。参加者の中には聴いてもらっている内に話すのが楽しくなり、次々と意見を言ってくれるかもしれない。自分の意見を言う方が増えれば、議論が活発化し様々なアイデアが出やすくなる。ちなみに相手の話を聴くときは、これらのことを意識しよう。
参加者に対し聴いていることをアピールすることで、ファシリテーターと参加者の間で信頼関係ができる。参加者が発言しやすい状況を作る意味でも、実践した方がいいだろう。
参加者に質問をするのもコミュニケーション能力を発揮させる上で大事なことだ。ファシリテーターが話を振らなければ意見を言えない参加者もいるため、積極的に質問した方がいいだろう。質問するときは「〇〇さんの意見を聞いて、△△さんはどのように思われましたか?」、「〇〇さんは、××についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?」というように詳しく質問すると、相手も答えやすくなるだろう。
ファシリテーションは、中立的な立場で行うのが基本だ。自分の好みで、参加者が発表した意見の善悪を決めてはならない。好き嫌い関係なく参加者と接することが大切だ。たとえば参加者に話すときは、人によって声のトーンを変えない方がいい。参加者に「威圧的な態度をとられた」「自分に興味がないと感じた」と言われる恐れがあるためだ。
また参加者に話を振るときも、最低でも1人1回は話を振ろう。話を全く降らなかった場合「意見を言いたかったのに無視された」と言われる恐れがある。参加者に不満を持たれると、次回の会議などで冷たい視線をを浴びせられるかもしれない。それを防ぐためにも、中立性を大切にしながら会議を進めるべきだ。
会議の中では様々な意見が発表される。仮に意見を記録していなかった場合、過去にどんな意見が発表されたか参加者は覚えておかなければならない。しかし意見を記録しておけば、参加者は発表された内容を見ながら、自分がどのような発言をすればいいか考えられる。参加者が考えやすくするためにも、発表された意見を分かりやすく記録する能力が必要なのだ。なお、この能力を上げたいときは以下のことを意識するといいだろう。
賛成意見と反対意見に分けたり、ABCDのいずれかに当てはめたりするイメージだ。グループ別に記録する箇所を分けておくと、どの種類の意見が多いのか判別しやすい。そのため、参加者全体の思考の解像度が高まる。どんな状況で会議が進んでいるか把握する意味でも、大事な要素だと言える。
矢印などの記号を使えば、記録する手間が省ける。たとえば「〇が△になった」という文言であれば、「〇→△」と書くといいだろう。文字数が減るため参加者は読みやすくなるはずだ。
その他にカタカナや漢字の単語を、アルファベットで略す方法もある。「鉄筋コンクリート」を「RC」としたり、「ホームページ」を「HP」としたりするイメージだ。ファシリテーションを活用した会議では意見が次々と発表されて、記録するスピードが追い付かなくなることもある。そのため文章量を減らして記録するスキルは、覚えておいた方がいいだろう。
参加者の中には専門用語や横文字を多用して意見を述べる方がいる。その場合は、言った内容をそのまま記録するのではなく、参加者全員が理解できる言葉に置き換えよう。たとえば「アジェンダ」であれば「議題」、「シナジー」であれば「相乗効果」に変えるイメージだ。馴染みのある言葉に変えると、参加者は記録してある内容を理解しやすくなるため親切だ。ただ発言内容によっては、別の言葉に置き換えることが難しい場合もある。そのときは、発言者に聞きながら、置き換える言葉を探すといいだろう。
ファシリテーションのゴール地点は、参加者全員が納得する結論を導き出すことだ。上手く意見がまとまらなかった場合、会議の満足度を下げる原因になる。不完全燃焼だったと感じる参加者を増やすことにつながるため良くない。
その状況を起こさないためにも、参加者全員の意見を上手くまとめる能力は必須だ。この能力を身につけるには、以下のことを意識すべきだ。
会議の目的によって、優先すべき内容は異なる。仮にAとBの意見があった場合、Aの意見が優先されるケースもあれば、Bの意見が優先されるケースもある。どちらの意見を優先すれば参加者に納得してもらえる状況なのかを基準に決めると、意見がまとまりやすくなるだろう。
各参加者が納得しそうな妥協点を見つけるのもコツだ。妥協点とは参加者同士が歩み寄って、一致する箇所のことだ。参加者の状況を見て、ファシリテーター側で妥協点を提示しよう。何度もこなしていくうちに、参加者全員の意見を上手くまとめる能力が身につくはずだ。
参加者の反感を買う言葉を使わないことも大切だ。とくに意識してほしいのは、相手を否定するような言葉だ。「〇〇は意見として成立していない」、「〇〇よりも××の方がいい意見なので」などの言葉が該当する。
このような言葉を使うと参加者たちの逆鱗に触れてしまい、収拾がつかなくなることがある。よって参加者全員の意見をまとめるときは、反感を買う言葉は使わないようにしよう。
ファシリテーションを活用すれば会議が円滑に進むだけではなく、中途半端な状態で会議が終わってしまう確率を減らせる。結果、会社に良い影響を与えてくれる可能性が高い。ちなみにファシリテーションの目的は以下の通りだ。
ファシリテーションを上手く使えば、他の業務に支障をきたすことが減る。予定通りスケジュールを進めたい会社は、ファシリテーション研修などを実施することで、従業員にスキルを定着させるといいだろう。ただしファシリテーションを上手く使うには、以下の能力を身につけた方が良い。
これらの能力は1日で身につくのもあれば、長期間かけないと身につかないものもある。そのため計画的に身につけていくことが大事だ。ぜひファシリテーションで必要な能力を身につけ、会議の質を上げていただければと思う。