社員自身に働きがいを持って長く企業で活躍してもらうためには、優秀な社員が退職しない仕組みが必要だ。また、退職を希望した場合に対しても、上手くヒアリングをしながら引き止めるという手法を習得しておきたい。
本記事では、部下から退職の申し出や相談が合った際、適切な対応を紹介していく。
会社を辞める部下には、退職を決意するまでに様々な前兆が見られる。ここでは、どのような前兆があるか紹介していく。
仕事内容にやりがいを感じなくなると、転職を視野にいれるようになる。そして退職を検討し始めると、仕事に関する愚痴が増える傾向がある。
仕事の手を抜くようになった場合「退職するから適当に仕事をしよう」と思い、不真面目になっている場合がある。そのため、退職を考えている部下に見られる前兆だと思っていいだろう。
退職を考え始めると、職場内の交流に消極的になる。退職を検討していなかった場合も社内の人間関係にトラブルを抱えており、最終的に退職を検討する要因にもなるだろう。
転職活動を行うと、休む回数が増える傾向がある。基本的に面接は平日に行われるため、仕事を休む必要が出てくる。また、退職前に、有給を消化し切るということも想定できるため、退職を考えている人に見られる前兆だと思っていいだろう。
突然、部下に業務を引き継ぎ始めた場合も、辞める前兆だと思った方がいい。なぜなら自分が退職しても、社内業務が回る環境をつくろうとしているからだ。余裕を持って、退職までの準備を進めたいと思っている部下もいるため警戒した方がいい。
そもそも優秀な部下が会社を辞めてしまうのには理由がある。ここからは、代表的な理由を紹介していく。
社内に成長の機会がないと判断した場合、部下は他の会社で成長したいと思い出す。成長できる会社がないか探し始め、転職先が見つかった段階で退職する。
キャリアパスが見えないと、将来が不安に感じ、自分の思い描くキャリアパスを違う会社で築けないか考える。成長の機会を求めているときと同様に、内定先が決まった段階で退職する。
人間関係に問題を抱えているのも退職の理由になる。上司や同僚との関係性がうまくいっていない方や、社内で孤立したりする方に多い。
評価に不満があるのも退職の理由だ。成果を挙げているのに認めてもらえなかったり、正当な理由がないのに悪い評価をつけられたりするなど様々だ。納得できない評価をつけられた結果、部下は退職の道を歩んでしまう。
業務量に不満がある方も、退職を考えるきっかけになる。膨大な業務を振られたり、全く業務が振られなかったりなど様々だ。自身が納得できる業務量でないと、今の会社を辞めたいと思ってしまう。
会社を辞めたいと思う理由について、こちらの記事では、筆者独自の意見なども交えてまとめられているので、是非あわせて読んでみてほしい。
→【仕事を辞めたい人へ】6つの辞める理由別自己分析
業務の質を下げないためにも、優秀な部下の退職は引き留めた方がいい。最後に上司がとれる対策を紹介する。
日頃からの声がけを行えば、部下との距離感が縮まっていき、信頼関係を築ける。自分のことを気にかけてくれる上司のもとで働き続けたいと思う可能性が上がるため、退職を防ぐのに役立つだろう。なお、声がけでは以下のことを心掛けるといい。
部下のモチベーションを上げる声がけを行うことも大切だ。労いの言葉をかけたり、笑顔で声がけをしたりなど部下に喜んでもらうことを意識するといい。
部下のやる気を削ぐ声がけは、職場の雰囲気を悪くし、チームの業務スピードを落とす原因になるため、気を付けた方がいい。
たとえば、周囲に社員がいる中で「苦手な同僚がいないか」聞いても、部下は返答に困る。意地悪な質問をする上司だと思われて、関係性を築けなくなる。関係性を築きやすくするためにも、部下が答えやすい声がけをすべきだ。
明確なキャリアパスを提示すれば、自社で働き続けたときのキャリアをイメージできる。部下がそのキャリアを目指したいと思えば、他社への転職を考えなくなる。そのため、退職したい気持ちを失くすのに役立つ。なおキャリアパスの提示では、以下のことを心掛けるといい。
部下が理想としていないキャリアパスを提示しても意味がない。自分が理想とするキャリアを築けないと思われると、退職をプッシュしてしまう。その状況を防ぐには、部下が目指している方向性に合ったものを提示することが大切だ。
仮にシステム開発としてのキャリアを築きたい部下であれば、その内容が盛り込まれたキャリアパスを提示すると良い。自身が描いているキャリアを築けると思うため、引き留めるのに役立つ。
1つのキャリアパスを提示するだけでは、部下が納得しないかもしれない。その状況を生まないためには、複数の選択肢を提示することが大切だ。複数のキャリアプランを提示すれば、自身に合うキャリアパスを見つけやすくなる。結果、部下の退職を防ぐのに役立つ。
ロールモデルを用意すれば、提示されたキャリアパスをイメージしやすい。自社で勤務し続けようと思い、退職したい気持ちがなくなる。
ちなみにロールモデルを用意するときは、その部下が憧れるものを用意することが大切だ。ロールモデルを提示しても、憧れを持たなければ退職をストップさせるのは難しい。そのため、どのようなキャリアを目指しているか見極めた上で、ロールモデルを用意することが大事だ。
心理的安全性とは、周りの視線を気にしたり不安な気持ちを抱えたりせずに発言できる環境かを示す言葉だ。心理的安全性の高い職場では、部下は発言しやすくなる。居心地の良い職場だと感じるため、退職を止めるのに役立つ。ちなみに心理的安全性の高い職場をつくるには、以下のことを意識すると良い。
ダイバーシティ化とは、様々な考え方を受け入れる姿勢のことだ。これが実現すれば、多様性のある職場となり、様々な種類の意見を言いやすくなる。発言を恐れることが減るため、心理的安全性の高い職場をつくるのに役立つ。
普段からメンバー間のコミュニケーションを活性化させると、自然とメンバー間で信頼関係ができあがる。社員間の距離感が縮まるため、心理的安全性の高い職場を実現させるのに役立つ。
上層部の社員だけではなく、それ以外の社員も発言できる機会を与えるのも大切だ。発言の機会を平等に与えれば、発言する文化が根付く。その結果、意見を言える雰囲気となり、心理的安全性の高い環境が整う。
しかし会社によっては、発言の機会を与えても意見を言わない場合もある。そのときは、指名するといいだろう。発言しなくてはいけない状態が生まれ、意見を言うのが当たり前の環境になる。
仕事が充実していても、待遇や評価に不満を持つ部下もいる。その場合は、部下の希望を聞いて待遇や評価を見直した方がいい。なお、待遇や評価を見直すときは、いくつかのポイントを押さえておくと良い。
部下の仕事ぶりや役職などを見て、適切な待遇になっているか確認するといい。役職や業務量と待遇が見合っていない場合もある。他の社員と比較すれば、その部下の待遇が適切か見分けやすくなる。
部下によっては、公平な評価が受けられていないのではないかと懸念している場合がある。そのため、公平な評価がつけられているか確認した方が良い。業務の様子や成果などを参考にしてチェックすれば、公平な評価がついているか分かりやすい。
役職や現場の状況によって、適切な評価基準は異なる。仮に全社員へ同じ評価基準を適用している場合、良い評価を獲得できない役職の社員が現れてくる。その状況に陥っているのであれば、評価基準を変えた方がいい。
配属や業務内容によって、部下が不満を溜める場合もある。それを解消するには、配属や業務内容の見直しが効果的だ。見直すときは、以下のことを心掛けるといいだろう。
希望配属先の人数が少ないなど物質的な理由のみで配属先を決めると、裏目に出る場合がある。そのため配属を見直すときは、当人の能力や実績などを分析し、異動先で能力を発揮できる環境か考えた上で、異動先を決めた方が良い。
業務内容を見直す上で徹底すべきなのは、不要な業務を確認することだ。惰性で不要な業務をし続けているケースもある。その状態が続くとリソースの無駄遣いになる。そのため、会社に影響しない業務は迅速になくすべきだ。
他の社員と比べて、膨大な業務量となっている場合もある。そのため、関係部署の従業員に調査した上で、業務量が適切か確認した方がいい。業務量が多かった場合は、他の社員との業務バランスを調整することで、社員間の不公平感をなくしていく。
部下が会社を退職理由は様々だ。キャリアパスが見えなかったり、会社に対する不満があったり、人間関係で困っていたりなど、たくさんの理由が挙げられる。
しかし退職をする部下には、何かしらの前兆が見られる。したがって、部下が辞める前兆をキャッチして適切に対処すれば、退職者を抑えることが可能だ。ちなみに部下が辞める前兆として、以下の事象が見られる。
部下に上記の行動が見られる場合、退職を検討している可能性があると考えた方がいい。前兆をキャッチしたら、そこから退職をストップさせるための対策をとっていく。ちなみに自社で働き続けてもらう対策として、下記の方法がある。
社員のことを気に掛ける行動をとって、上司が不安や悩みを解消するための取り組みを行えば、退職したい気持ちを抑えられる。優秀な社員を手放さないためにも、部下が辞める前兆をつかみ、適切な対策をとっていただきたい。