理想通りのキャリアを歩める方もいれば、そうではないキャリアを歩んでしまう方もいる。その決め手となるのが「キャリア形成」だ。これに力を入れるかで将来の道が決まってしまう。
しかし「キャリア形成」という言葉は知っているものの、正しい方法を知らない方もいる。そこで今回はキャリア形成が必要な理由を紹介しつつ、実践で必要となる4つの手順について解説する。
キャリア形成とは、個人が自らの人生においてどんな「経歴」「経験」「スキル」などを得たいのか、自分にとって理想的な働き方は何かをイメージしてキャリアを描くことだ。私たちは社会人として数十年間、活動していく。そんな中、目の前の業務に追われ、キャリア形成を行わないでいると、次第に理想の自分から離れていってしまう可能性がある。自分が描いた人生を送り続けるためにも、キャリア形成は大切だ。
キャリア形成が必要な理由は、以下の2つだ。
VUCAとは、あらゆるものを取り巻く環境が変化し、今後の予測が困難になっている状況を示す言葉だ。終身雇用型の働き方を辞めようとする企業が増えたり、新型コロナウイルス感染症の流行で世界経済にダメージを与えたりなど、予測できないことが起こっている。先の見通せない時代が到来したと言っても過言ではない。そんな中でも企業は、時代の変化に対応しながら利益を挙げなければいけない。しかし企業だけの努力ではどうにもならない場合もある。
そこで大事になるのが、各社員が主体的に行動をとることだ。企業に指示されたことのみをこなして、毎年給料が上がる時代は終わった。時代の流れに対応できる企業をつくるには、各社員が企業から求められている内容を汲み取って、1人あたりの生産性を高めることが必要になってくる。企業としての組織力を上げて生き残るためにも、キャリア形成を行うべきだ。
人生100年時代とは今後100歳まで生きる方が増えるにあたり、国や自治体・組織・個人が、生き方について再度、定義しなければいけないことを表すときに使われる言葉だ。日本では平均寿命が伸びて、100歳まで生きるのが珍しくなくなってきた。
それに伴い、今までのライフプランで当たり前だとされていた「教育・仕事・引退」の流れで生活を送るのは厳しくなった。これからの人生では、有形資産(現金や株など形のある資産)だけではなく、知識や人脈・健康などの無形資産(形として残らない資産)が必要になってくる。無形資産を手に入れれば、充実した生活を送れるようになる。しかし、陳腐化しないよう何度も学びなおさなければならない。
現代では一昔前とは違うキャリアの築き方が求められる。今後に見合ったキャリアを築かなければ生きていくのが難しくなるため、キャリア形成は重要だと言える。
ここではキャリア形成のメリットを3つ紹介する。
将来のための行動が分からなくなったときにキャリア形成の内容を見直せば、自分のすべきことが分かる。自分の行動に自信が持てなかったり、選択肢が多すぎて迷ったりするときに役立つ。
自分のキャリアをイメージできれば、それに向かって行動できる。やる気を出すきっかけになり、自発的に仕事へ取り組む社員を増やすことにつながる。受け身の体制をとる社員が減るため、社員が積極的に業務をこなしていく職場に生まれ変わるはずだ。
キャリアとは自身が進んできた道を振り返りながら、将来的にどのようなジャンルで活動していくか考えていくことだ。会社員として忙しい日々を送っている場合、自分自身について考える時間をとるのは難しい。世の中に流れてくる情報を見たり、自分に任された業務をこなしたりするだけで1日は終わる。
しかしキャリア形成をすれば、必然的にキャリアについて考える時間(キャリアデザイン)が生まれる。結果、企業が求めていることや自分のことを知ろうとする機会が増える。今後のビジネスシーンにおいて、自分がとるべき行動やスキルの高め方を見つけるヒントになるのもキャリア形成のメリットだ。
キャリア形成を行うには、いくつもの能力が必要とされる。ここでは、必要とされる能力を5つ紹介する。
自分の状況を客観視できない状況でキャリアを築いてしまうと、進めなくなる恐れがある。行動し続けるのが難しくなる恐れがあるため、第三者目線で自分の状況を把握しておくべきだ。
自分が望むキャリアを形成するには、様々な問題を解決していかなければならない。自分が望むキャリアを進むための克服ポイントも出てくる。よって、自分の課題を解決する能力も必要だ。
プランを立てても、その通りに歩めなければ理想のキャリアを掴むのは難しい。そのため自分が立てたプランに基づいて、実行する能力も求められる。
計画したキャリアに沿って進んでいくには、それを実現させるためのスキルが必要だ。難易度が高い資格を取得したり、最低限の基礎知識を身に付けたりなど様々だ。努力を惜しまずに、必要とされるスキルを手に入れられるかもキャリアを叶えるための必須条件と言える。
自分が立てたキャリアに対して後悔しないためにも、自分の将来を推測する能力も必要となる。時代の流れや自身のライフスタイルなど、様々な視点で予測していくことが大事だ。
ここではキャリア形成の手順を紹介する。
自分の過去を振り返って、今まで行ってきた仕事の内容を棚卸しする。棚卸しをした後は、以下の3つについて考えていく。
過去、何に対するモチベーションが高かったかを振り返る。なお振り返るときは、充実度や時間軸を記載できる「ライフラインチャート」を活用すると作業しやすい。その後、自分がやりたいこと(Will)を洗い出していく。
Willの段階で、充実度が高く将来的にやりたいと思ったことを実現させるために、現段階でできることを考える。自分の強みを把握しておくと、何ができるか見つけやすくなる。
組織の中や周囲から求められている役割を把握し、自分が何をすべきか考える。
Will、Can、Mustを全て実現できる内容が、満足度を持って行動できるとされている。充実度を高めるためにも、3つを叶えるものがないか探すといい。
ステップ①で出てきた内容を参考に、具体的な目標を立てていく。なお目標を立てるときは「SMART」の法則を意識すると、自分に合った目標を設定しやすい。
現状と理想(目標)のギャップを理解すると、何をすべきか分かってくる。理想を実現させるために習得すべきスキルや必要な経験、それを叶えるための行動を考える。さらに行動計画を立てるときは、理想から逆算することも大事だ。するとキャリアを実現させるための道のりが見えやすくなり、計画立てが簡単になる。
キャリアプランを実現させるための行動をとるときは、計画に沿って行動することが大事だ。キャリアを実現できないと思ったときは、軌道修正をしたり代替案を考えたりした方がいい。さらに行動の最中に行き詰まらないよう、周囲のサポート体制を整えておくのも大切だ。
最後にキャリア形成のポイントを5つ紹介する。
ネガティブな発想を持った状態でキャリア形成すると、できない理由ばかり考えて可能性を狭めてしまう。自分の可能性を広げた状態でキャリア形成をしてもらうためにも、ポジティブな発想を持たせるべきだ。とは言っても、ポジティブな発想を持てない方もいる。そのときは成功体験を何度も重ねさせるといい。
成功体験を何度も重ねると、自分に自信が持てるようになりポジティブな発想へとつながる。成功体験と言っても、小さなことでも良い。「朝7時に起床できた」「掃除する時間をつくれた」などだ。
様々な価値観を知れば、キャリア形成を考えるときに様々なシチュエーションを考えられるようになる。それを実現させるには、様々な経験をさせることが大事だ。今まで経験したことがない業務を任せたり、スキルを高めるために必要な研修に参加させたりなど、会社としてできることは多い。
勉強する習慣を身に付けさせる理由は、スキルを磨いてキャリアの可能性を広げてもらうためだ。勉強を怠ると理想とするキャリアを実現させるのが難しくなる。自分が理想とするキャリアを手に入れるには絶対行わなければならない。
なお勉強の習慣を身に付けさせるには、共通の目標を持った社員達で勉強させるといい。切磋琢磨し合う環境ができるため、モチベーションを維持している状態を保てる。定期的に勉強会を行っている企業もあるようだ。
好きだという理由でキャリアを形成してしまうと、行き詰まる恐れがある。たとえば人と話すことが好きだからと言って、全員営業職に向いているわけではない。営業成績を上げられなかったり、お客様に不快感を与えたりする方など、仕事に向かない方もいる。したがって全ての方が「好きなこと=得意なこと」になるわけではないことを、覚えておくべきだ。
キャリア形成は一度すれば終わりではない。何度も軌道修正しながら、最善のキャリアを見つけていくことが大事だ。失敗して反省・改善し続けることで、理想とするキャリアを手に入れやすくなる。
ちなみに軌道修正をするときは、「計画→実行→確認→改善」(PDCAサイクル)の順で回すといい。何度もサイクルを回せば、たくさんのデータを収集できるため改善までの速度が上がる。スピーディーさを求めるのであれば、PDCAサイクルを活用すべきだ。
キャリア形成は、各社員が自分の理想とする道を歩んでいくために必要だ。必要な理由は以下の通りだ。
1.VUCA(ブーカ)(不安定・不確実・複雑・曖昧)時代の到来
2.人生100年時代の到来
それぞれが主体性を持たなければ、仕事をしていくのが厳しい時代になっている。だからこそ、キャリア形成は必要なのだ。しかし正しい手順でキャリア形成を行わないと、理想とするキャリアを手に入れられなくなる恐れがある。そのため、下記の手順に沿ってキャリア形成すべきだ。
これらについて、キャリア研修などを開催することで、該当者に教育していくことも効果的だ。
ただし理想とするキャリアを手に入れるには、最低限の行動が必要だ。計画だけ立てても、理想とするキャリアは手に入らない。行動を促すには周囲のサポートが必要になる。社員が動けるよう、社内のサポート体制を整えていただければと思う。