ビジネスシーンにおいて、「意見が言いづらい」「上手く依頼できない」などの場面は多く発生する。その際に活用したいスキルがアサーティブな表現方法だ。
本記事では、アサーティブコミュニケーションと呼ばれる話し方について詳しく解説する。相手への伝え方、依頼方法、上手い断り方について知りたい方は必見の内容だ。
目次
アサーティブコミュニケーションとは、相手の立場を尊重しながらも自己主張していくコミュニケーションのことだ。
相手に言いづらいことがある場面や、断り・依頼などの場面で「自身も相手も気持ちよくコミュニケーションをとりたい」という際に活用できる便利なスキルと言える。
仕事におけるコミュニケーションとは、「様々な手段を用いて、話し手と聴き手が互いの思いや考えを伝え、良好な関係を構築すること」だ。
大きなコミュニケーションというくくりの中で、様々なコミュニケーションスキルが存在する。
その一つがアサーティブコミュニケーションだ。
アサーティブコミュニケーションを習得するとメリットがある。具体的には以下の通りだ。
アサーティブコミュニケーションを身に付けると、生産性向上が期待できる。
社員間の意見が活発になり、意思疎通しやすい状況が生まれるためだ。
建設的な意見を交わすことで、適切な情報共有がなされ、今より風通しの良い職場になるだろう。
会話の中でアサーティブな表現を活用できれば、社員間での信頼関係構築につながるため、良好な関係性を築きやすくなる。
感情を抑圧する場面が減り、自分の気持ちを伝えやすい雰囲気ができていく。結果、上司に依頼や相談がしやすくなったり、部下にフィードバックしやすくなったりする。
アサーティブな表現は、コミュニケーションスキルの中でも伝える際に活用するものだ。同じことを伝えるにしても、表現一つで相手が受け取る印象は変わる。
今後も関係性がある職場のメンバーとより良い状態で働き続けるためにも、アサーティブな伝え方を身に付け、お互いにストレスなくコミュニケーションを取ることは有用と言えるだろう。
アサーティブコミュニケーションは様々な場面で活用できる。具体的には以下の通りだ。
相手を傷つけずに自分の気持ちを伝えられるため、依頼時に不快な気持ちを持たれずに済む。
例えば、ツールの導入を依頼する場合は「チームの作業時間が毎月〇時間短縮されるため、AかBのツールを導入したいです」と依頼するイメージだ。
周囲のことを考えていることが伝わるため、依頼しやすくなる。
相手の機嫌を損なうリスクを小さくできるため、伝えづらいことを話すときも便利だ。
例えば仕事のミスを報告する場合は「申し訳ございません。〇〇の工程でミスをしました。△△を実施してミスの分を取り返します」と話すと良い。
ミスを重く受け止めていることや、次につなげようとしていることが伝わるため、許してもらえる確率が高くなる。
相手を不快にさせず伝えられるため、断るときも便利だ。
例えば、依頼された仕事を断るときは「手伝いたいのですが、明日の午前11時までに終わらせなくてはいけない業務があるため、本日中の対応は難しいです。明後日であれば対応できそうです」と伝えると良い。
自分の事情を具体的に伝え、代替案も提示しているため、断りやすくなる。
DESC法とは、Describe(描写する)、Explain(説明する)、Specify(提案する)、Choose(選択させる)の順で話を進めることだ。
アサーティブコミュニケーションは「DESC法」を用いると活用しやすい。
部下から上司へ伝える場面を想定しながら、DESC法の各工程について紹介していく。
例)
上司の田中さん
部下の佐藤さん
あなたが部下の佐藤さんだったとしたとき、業務Aを行っていたところ、新しく業務Bを依頼された。
業務A:今日の16時締切の資料。現在当日13時であと1時間もあれば終わる予定
業務B:今、同じ上司から新しく依頼された仕事。17時までに終わらせてと言われた。
項目 | 説明 | 詳細説明 |
---|---|---|
Describe | 事実を客観的に描写する | 実は、先日〇〇さん(上司)からご依頼いただいたA業務を行っています。 今ご依頼いただいたB業務を優先させると、A業務が間に合わなくなってしまう状況です。 |
Explain | 自分の気持ちを説明する | ご依頼いただいたBについてお手伝いしたいところなのですが |
Specify | 提案する | 明日11時ごろまで時間を延ばしていただければ A業務を優先させていただき終わり次第B業務を行うという形で対応可能ですが、よろしいでしょうか |
Choose | 選択する | 代替案を出す もしくは、他に対応できるメンバーを探したほうが良いでしょうか |
アサーティブコミュニケーションを職場でうまく実践するコツは以下の通りだ。
アサーティブコミュニケーションをとる際は、場の空気を重くしないことが大切であるため、日頃からポジティブな言葉を口にした方が良い。
場の雰囲気が明るくなって、話しやすい環境ができる。会話がテンポよく進み、自分の思っていることを伝えやすくなるだろう。
なお、ポジティブな言葉を口にする際は、以下の内容を意識すると良い。
ネガティブな言葉を使わない理由は、ポジティブな言葉を口にする状況をつくるためだ。ネガティブな言葉が減れば、前向きな気持ちを持ちやすくなり、ポジティブな言葉が増えていく。
なお、自分だけで改善できない場合は、ネガティブな言葉を使った際に指摘してくれる人を周囲に置くと良い。指摘されるうちに、ネガティブな言葉を使わなくなるだろう。
将来のことを考える理由は、過去に捉われないためだ。過去に捉われると失敗したことばかりに目がいき、ネガティブシンキングになってしまう。
可能性を信じ、ポジティブな気持ちを持てる環境をつくる意味で大事だ。
自分のことを好きになる理由は、自己肯定感を高めるためだ。自己肯定感を高めるほど、ポジティブな気持ちが生まれやすい。
例えば「自分の欠点ばかりに目がいく人は、その部分も受け入れる」「自分の長所を探す」アクションをとれば、自分のことが好きになりポジティブな言葉を口にできるはずだ。
相手に想いを理解してもらうには、自分を主語にして話した方が良い。例えば「私は〇〇がしたい」「今、私は〇〇をすべきだと思う」と自分の気持ちをハッキリ伝えれば、相手に伝わりやすくなる。
なお、自分を主語にして話す際は以下のことに気を付けると良い。
簡潔に話す理由は、相手にワガママな人間だと思われないためだ。自分を主語にした状態で長々と話し続けると、相手から自己主張が激しい人間だと思われる恐れがある。
自己主張が激しい人間だと思われると、相手は身構えてしまいコミュニケーションを取りづらくなってしまう。さらに会話がスムーズに進まない原因にもなるため意識した方が良い。
相手の話を拒絶しない理由は、自分の意見だけを通そうとするワガママな人間だと思われないためだ。ワガママな人間だと思われると、相手を不快にさせてしまう。
お互いに自分の気持ちを言い合える状態をつくる上で重要だ。
自分軸を持つ理由は、周囲の意見によってコロコロ変えない状況をつくるためだ。自分軸がないと話の中で矛盾が生じて、説得力がなくなる恐れがある。
話に説得力を持たせて、相手に話を聞いてもらうためにも自分軸は持つべきだ。
話の内容を具体的に伝える理由は、話の内容を相手に理解してもらうためだ。話が抽象的だと両者の間で、認識の違いが起こりやすくなる。
結果、話の全体像が分かりづらくなり、会話が前に進まなくなってしまう。話を前に進めるには、相手に理解してもらうことが不可欠だ。したがって、具体的に伝えた方が良い。
なお、具体的に伝える際は以下のポイントを抑えることが大事だ。
一度に沢山話すと相手に伝わりづらくなるため、情報量を増やしすぎてはいけない。仮に伝えたい内容が10個ある場合は「優先度の高い3つのみ伝える」といった形にすると、相手は理解しやすくなる。
相手の業務状況やスケジュールを確認しながら、伝える量を調整することが大切だ。
具体例を織り交ぜながら話す理由は、話の内容をイメージしやすくするためだ。過去の事例や数字などを盛り込めば、相手の理解度はアップするだろう。
固有名詞や専門用語を多用しない理由は、話の内容を分かりやすくするためだ。相手が理解できない言葉ばかり並べて話しても相手に伝わらない。
誰にでも分かる言葉を使うことが大事だ。
アサーティブコミュニケーション研修を受講して、スキルを上げるのも重要だと言える。知識のない状態で、スキルを高めることは難しい。
効率よくスキルを習得する上で、アサーティブコミュニケーション研修の受講は欠かせないだろう。
アサーティブコミュニケーションを習得すれば会話がスムーズになり、仕事も進めやすくなる。アサーティブコミュニケーションのメリットは以下の通りだ。
上記の恩恵を受けられる可能性があるため、アサーティブコミュニケーションは全社員が身につけた方が良い。上手に実践するには、以下のポイントを抑えることが大事だ。
アサーティブコミュニケーションに慣れると、今までと比べて人との会話がしやすくなる。自分の気持ちを伝えやすい状況をつくるためにも、アサーティブコミュニケーションを活用していただきたい。