顧客の中には、会社に対して悪質な要求をするケースがある。その理由として「カスタマーハラスメント」の増加が挙げられる。
カスタマーハラスメントが多い会社では、さまざまな悪影響を及ぼす。本記事では、カスタマーハラスメントが起こった時の対応方法や対策を紹介していく。
目次
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先から悪質なクレームや不当な要求をされることだ。「カスハラ」とも呼ばれている。
カスタマーハラスメントが増えると、従業員たちは解決するために時間を割く状態ができてしまう。結果、別の業務に時間を割けなくなり仕事がたまっていく。
カスタマーハラスメントが起こっている理由は以下の通りだ。
いまだに会社よりも顧客の方が大切という「顧客第一主義」が世の中に根付いている。顧客の中には、店よりも立場が上だと思い込んでしまい、横柄な態度をとってしまう。結果、カスタマーハラスメントを招く。
悪質な顧客になると、カスタマーハラスメントをしたことをSNSに挙げて拡散してしまい、場合によっては電話対応に追われてしまう。
顧客からサービスの質を求められるケースも珍しくない。顧客獲得のために企業間で、サービス競争が激化している。
各社が過剰なサービスを提供し続ける状況が常態化すると、顧客はそのクオリティのサービスを受けるのが当然だと思ってしまう。顧客の目が肥えた結果、カスタマーハラスメントを招く。
ストレスのはけ口として利用されているのも、カスタマーハラスメントが横行する原因だ。現代社会はストレスがたまりやすい状況となっている。
ストレスを発散する場として、顧客として理不尽なことを言ったり、横柄な態度をとったりするケースが起こっている。結果、カスタマーハラスメントにつながってしまう。
ここからは、カスタマーハラスメントの内容を紹介していく。
乱暴な言葉や暴言を吐かれるパターンだ。数十分間、顧客から浴びせ続けられて、精神的に滅入ってしまう場合もある。
「どうなっても知らないぞ」というように、脅迫を受けるのも典型的なカスタマーハラスメントだ。従業員に恐怖を与えることで、自分の要求をのんでもらえる状況をつくろうとしていく。
長時間拘束するのも、カスタマーハラスメントの典型例だ。従業員が他の業務に携われないように業務の妨害をする。従業員はクレーマーの対応に膨大な時間を割くこととなり、何も業務ができない状況が生まれてしまう。
ここからはカスタマーハラスメントによって、企業が受ける損失を解説していく。
カスタマーハラスメントの被害が起こると、その会社に問題があると思われてしまうケースがある。世間に広まると風評被害につながってしまう。結果として、会社のイメージダウンを招く。
カスタマーハラスメントが起こったことが広まると、会社の状況がマズいと認識されてしまい、顧客離れにつながる恐れがある。結果、会社の業績悪化を招く。
従業員のなかにはカスタマーハラスメントによる被害を受けて、疲弊してしまうケースがある。ハラスメントの被害に遭うのが怖くなり、職場で働くのが嫌になるかもしれない。その結果、大量離職が起こってしまう。
会社には安全配慮義務がある。安全配慮義務とは企業や組織が、従業員を安全に働かせる環境をつくらなければならないという法律のことだ。
カスタマーハラスメントが頻発したり、重大な出来事が起こったりすると、安全配慮義務違反に問われる場合がある。
その結果、企業としてのブランド低下につながり、社内外の人材が離れる原因になってしまう。消費者や取引先から会社の管理体制を疑われてしまうと売上ダウンを招き、会社にダメージを与えることになってしまう。
最後にカスタマーハラスメントが起こったときの対応を上手にさせるコツを見ていく。
対応マニュアルがあれば、カスタマーハラスメントが起こったときにどのような対応をすべきかイメージしやすくなる。
結果、従業員たちはハラスメント被害が起こっても効率よく処理することができて、膨大な時間を割かずに済むかもしれない。
なお、対応マニュアルを作成するときは、以下のポイントを抑えることが大事だ。
マニュアル作成の目的を明確にする理由は、何のためにマニュアルが存在するのか従業員に知ってもらうためだ。
単にマニュアルをつくるだけだと、誰も見てくれない可能性がある。従業員に役立つマニュアルであることを認識させるためにも、目的は明確にした方が良い。
マニュアルの内容を盛り込みすぎると、従業員はどこを読めばいいか分からなくなってしまう。結果、カスタマーハラスメントが起こったときの対処法を見つけるのに時間がかかり、余計な時間を割くことになる。
長時間待たせると、クレーマーの怒りを増幅させてしまい、会社の被害が大きくなるかもしれない。効率よく対応できる状態をつくるためにも、必要な内容だけ盛り込むことが大事だ。
どこに何が書いてあるか明確にするのも重要といえる。たとえば目次をつけておくと、自分が見たい内容がどこに書いてあるか見つけやすい。
そのためカスタマーハラスメントの被害に遭った際も、迅速な対応がとれるようになるだろう。
文章だけでは、内容が伝わりづらい恐れがある。そのときは、図やイラストを用いるのも大切だ。
画像を添付して対応方法を解説した方がいいケースもあれば、イラストで分かりやすく説明した方がいいケースもある。マニュアルを読んだとき、瞬時に内容を理解できる状態をつくるためにも必要だ。
カスタマーハラスメントによっては、従業員1人では対応しきれない場合がある。そのときは、従業員1人に任せっきりにするのではなく、同僚がサポートすることが大事だ。
周囲のサポートがあれば、数人で知恵を出し合いながら対応できるため、解決までのスピードを速くしたり、被害を抑えたりできる。そのため、社内が混乱せずに済むだろう。
クレーム対応研修や、カスタマーハラスメント研修の実施も有用だ。研修を通して、顧客対応を行う従業員にカスタマーハラスメント発生時の対処法をまとめて学ぶことができる。
社内の共通認識として必要なことを伝えたり、ロールプレイングを実施したりすると、研修のクオリティが高くなるだろう。なお、研修実施時は以下のことに気を付けるといい。
どちらが向いているか見極めないと、研修の効果が出なくなってしまう。どちらが向いているか見極める際は、社内に研修ノウハウがたまっているかで判断すると決めやすい。
社内に研修ノウハウがある企業であれば、社内研修で効果を出せる可能性が高いし、ノウハウがなければ社外研修に参加させた方が、効果は出やすくなるだろう。
カリキュラムに沿って研修を進めるだけでは不十分だ。なぜなら研修を実施しても、受講者が理解していなければ、時間の無駄になるからだ。
受講者の中には、疑問点があるにも関わらず質問できないケースがある。その場合、分からない箇所を一生解決できずに終わってしまう。全受講者が理解できている状態をつくるためにも、確認しながら進めた方がいい。
研修後の効果を検証する理由は、受講者にとって意義のある研修になっているか確認するためだ。たとえば研修後もカスタマーハラスメントに対する対応の仕方が変わってなかった場合、カリキュラムの内容を変えた方がいいと判断できる。
効果がないのに同じカリキュラムの研修を実施しても意味がない。受講者の理解度を高める研修を実施するためにも、研修後の効果は検証すべきだ。
社内に相談窓口を用意するのもいいだろう。相談できる人がいれば、従業員にとって心のよりどころになる可能性があるからだ。
同じ部署の従業員には相談できないが、違う部署の従業員であれば相談できる人もいる。1人で悩んで悪循環に陥らないためにも、相談窓口はあった方がいい。ちなみに相談窓口を用意するときは、以下のことを心掛けるといいだろう。
相談窓口を用意するときは、カスタマーハラスメントの事例をためこめる体制をつくった方がいい。事例がたまっていけば、社内で起こりやすい事例が分かるからだ。
頻繁に起こる事例を中心に対策をとれば、従業員が疲弊してしまう機会を減らしやすくなる。結果、従業員たちは働きやすくなるだろう。
産業医やカウンセラーなどの専門家と連携すれば、社内で対応するのが難しい事例でも対応できるケースがあるからだ。
社内に知識を持つ人材がいなかったり、カスタマーハラスメントを解決するための取り組みが難しかったりするときに便利だろう。
相談窓口ができても、誰も使わなければ意味がない。稼働率を上げるためにも、従業員に相談窓口があることを周知すべきだ。
相談窓口で行っていることを具体的に示したり、個人情報保護に力を入れたりしていることを伝えると、安心して利用できるだろう。
社内で解決できない場合は、警察・弁護士への相談を検討することも大事だ。解決できない状況を放置すると、被害が大きくなり社内が混乱してしまう。
迅速に解決するためにも、最寄りの警察署や顧問弁護士などに相談することが大事だ。
会社によっては、1日に何件ものカスタマーハラスメントが発生して、従業員が次々と退職してしまうケースもある。
その状況を防ぐためにも、カスタマーハラスメントの対応について会社として力を入れた方がいい。カスタマーハラスメントに会社として力を入れないと、以下のことが起こってしまう。
結果的に会社として存続させることが難しくなる。会社を弱体化させないためにも、カスタマーハラスメントに対して力を入れた方がいい。
カスタマーハラスメントに対して、上手に対応できる従業員を増やすには、会社としてさまざまな取り組みが必要だ。効果的な取り組みの例として、以下の内容が挙げられる。
上記のことを実施すれば、カスタマーハラスメントが起こってもスムーズに対処できるはずだ。カスタマーハラスメントの多発は、会社の士気を下げる。社内全体の業務効率を落とさないためにも、カスタマーハラスメントの対応に力を入れていただきたい。