新人研修・新入社員研修を企画する人事・研修担当にとって、毎年どのようなテーマにするべきか・研修の効果があったのかなど悩みはつきない。
本記事では、新人研修を企画する際によくある悩みとその解決策について解説していく。新人研修を企画する際にぜひ参考にしてほしい。
目次
まずは、新人研修の重要性から解説していく。新入社員に向けて研修を実施することは、大きく分けて以下のメリットがある。ほとんどの企業が実施しているだろうが、このメリットを再認識した上で研修内容について考えてほしい。
まず重要なことは、企業文化やミッション・ビジョンなど方針を浸透させるための研修であるということだ。
新人研修は、企業文化や価値観を新入社員に伝える絶好の機会だ。組織のビジョン・ミッションや求められる行動基準を理解させることで、社員の行動や意思決定が企業の方針に沿ったものになり、一体感を持った組織作りが可能となる。入社式後に社長や代表から講話をさせるなど、方針に関しての機会を設けることが重要だ。
研修を受けることで、新人は自分の役割を明確に把握し自信を持って業務に取り組むことができる。データを見てみよう。入社後に会社に求める(望む)ことの1位は「研修をしっかり行ってほしい」だ。まずは学ぶことができる環境・機会を整えてあげることが重要だということがわかる。
厚生労働省「早期再就職支援等 助成金ガイドブック」より引用
新人研修を入社直後に実施することで「漠然とした不安やストレス」が軽減されが軽減され、早期離職のリスクの減少が期待できるため、研修内容やカリキュラムを吟味した上で実施したい。
新人研修を行うことで、新入社員は企業のビジネスモデルや業務フローを迅速に理解し、即戦力として活躍できる土台が醸成される。そうすることで、早期に業務に貢献することができ、業務の効率化や生産性向上につながる。
新人側としても「どのようなスキルを身に付ければ良いかわからない」という状態にならないため効果的だ。
新人研修では配属先が異なるの新入社員(同期)と交流する機会があり、チームワークやコミュニケーションのスキルを養うことができる。これにより職場での円滑な連携が生まれ、組織全体のパフォーマンス向上につながる。
上記で挙げた早期離職防止にもチームワークは効果的だ。「同期も頑張っている」ということがモチベーションにつながることも少なくない。
このように、新人・企業双方にとって重要な新人研修だが、実際に企画~運用をしていくと様々な課題に遭遇する。ここからは、人事や研修担当がよく抱えがちな課題と解決案を説明していく。もちろん企業や新人の状況・背景にもよるが、参考になればと思う。
研修を通じてスキルがどれだけ向上したか、業務にどう貢献しているかを数値で測るのが難しいというものだ。研修を企画~実施するにあたり、それがどの程度効果を上げたかという事を見ていきたいものの、アンケート収集だけでは具体的な数値として出てこない。
解決案としては、以下のいずれかがある。企業によって選択してほしい。
項目 | 内容 |
---|---|
研修目標を明確にする | 研修開始前に、具体的かつ測定可能な目標を設定づつ。これにより、どの程度のスキル向上が必要なのかを明確にし、研修後にその成果を評価する基準ができる |
行動計画を立てさせ、進捗確認をする | 以下のような仕組みを作ることで研修で扱ったことが実行できたかということが把握しやすい。 - 研修の最後に「本研修を受けた上で、明日からどのように行動していくか」というアクションプラン(行動計画)を立てさせる - 研修終了後に配属先の管理職と面談を設定し、そこでアクションプランを共有する - 行動計画通り実行できるかを随時面談で振り返る |
フォローアップ研修を実施する | 一定期間後にフォローアップ研修を実施し、その際に再評価を行う方法だ。ExcelやWordなどのスキルについては初回研修時とフォローアップ時のスキルテストを実施することも良いだろう。スキルが定着しているかということについても確認できる |
研修で学んだ内容が実際の業務に直結しない場合があり、新人が現場で戸惑うことが多いというものだ。営業職をしないバックオフィス業務につく人がほとんどであるにも関わらず、名刺交換の練習を繰り返しさせられるなどギャップが生じる場合がある。
これは、今年度入社した新人の配属先での業務と研修内容を把握していないことが主な原因だ。「毎年やっているからこれで良いだろう」ということではなく、今年度の新人に対してこの内容が適切だろうかと、検討する時間を設けてほしい。
例えば、名刺交換を業務で実施することがほとんどない場合、それほど名刺交換に研修時間や内容を割く必要はない。それよりも、来客の対応時の内線の取り方・受付での名刺の受け取り方や会議室への案内方法など、具体的なシーンを想定した内容にした方が効果的だ。
毎年研修テーマを変える必要はないが、例年実施している研修の内容は、今年度の新人に合っているかという基準でカリキュラムなど内容を見返すことは実施してほしい。
研修が一方的で、受講者が興味を失ってしまうという課題もよく上がる。モチベーションを維持できるようにするためには、
解決案としては、以下のいずれかだ。企業や受講生(新入社員)のタイプに合わせて検討してほしい
項目 | 内容 |
---|---|
研修のゴール設定と進捗の見える化 | 研修の開始時に明確なゴールや達成すべき目標を設定し、どこまで進んでいるかを常に可視化することだ。進捗が目に見える形にすることで達成感を得やすくなる |
インタラクティブな学習の導入 | 講義形式だけでなく、ディスカッション、グループワーク、ロールプレイなどを取り入れ、新入社員が主体的に参加できるようにすることも良いだろう。研修中のアクティブな参加はモチベーション維持に繋がる。理想としては1時間に1回はなんらかのワークやロールプレイを入れたい |
バラエティに富んだ研修形式 | 研修内容が単調になるとモチベーションが下がりやすい。入社後5日間は社内研修という場合、1日は実践重視のものを入れる・外部講師を招いたセミナーを入れるなどの工夫で、飽きがこないプログラムを作成しよう。ビジネスゲームを取り入れた内容などもおすすめだ |
新人研修までは問題なく進んでいたにも関わらず、配属後に新人のモチベーションが落ちてしまうなどの課題もある。上記で挙げた「研修内容と現場で求められるスキルが異なる」ということも一つだが、もう一つとしては「現場の受け入れ体制が整っていない」「研修で何をしたのか知らない」など、事前に対策ができる原因もある。
解決策は情報を共有しておくことだ。人事・研修担当として十分に実施していると思うが、以下は配属先に事前に共有しておきたい。
研修内の課題点については、講師からフィードバックを受けたものや人事・研修担当が同席していて感じたこと、本人のアンケートなどからわかることを伝えよう。(例:Excelのスキルに不安が残った、希望と異なる配属のため研修が終盤になるにつれてモチベーションが下がっている状態など)
また、OJT担当者の設定や職場環境の整備、配属初日に誰が新人を担当し何をするかについても準備しておくように伝えておきたい。職場でなんとかしてほしいという気持ちもわかるが、ある程度準備しなければならないものを伝えておくことでリスクも減っていく。ぜひできる範囲で実施してほしい。
新人に求められるスキルとしては「即戦力として職場で活躍できる基礎部分を学ぶ」というものを扱うことが基本だ。しかし、扱いたい研修は多くある一方で研修期間や時間は限られている。どのテーマを選べば良いのかに迷う人事・研修担当者は多いだろう。
解決策としては、今年度の研修目標を決めるということだ。具体的には以下の流れで考えると良いだろう。
どの企業も毎年実施する「ビジネスマナー研修」や「Office系(Excel研修・Word研修・パワーポイント研修)」についても、「現場で使えるところまでを目指す」か「知識として理解してもらい、あとはOJTや職場で必要なスキルを追加して学んでもらうのか」により、研修の内容や時間も変わってくる。
その他の方法としては、研修会社を活用するということも良いだろう。本記事を作成しているリスキルでは、実施したい研修と背景・現状をヒアリングした上で、適切な研修カリキュラムやカスタマイズ方法を提案することができる。リスキル以外の研修会社でも同様の対応をしていると思われるため、一度問い合わせるということは良い手段だと言えるだろう。
本記事では、新人研修を企画する際によくある悩みとその解決策について解説してきた。
新人研修は、入社してすぐに受けるものがほとんどのため企業のイメージや信頼関係を作るために重要なものだ。これからの企業を担っていく人材を育成するためにも、そのスタートとなる新人研修についてぜひ課題を解消し運営してほしい。