従業員たちのモチベーションを上げるには、従業員エンゲージメントが重要だ。なぜなら従業員エンゲージメントを高くするほど、会社に良い影響を与えるからだ。しかし高め方を知らないと、なかなか向上しない。
そこで本記事では、従業員エンゲージメントについて解説しながら、高め方について解説していく。
目次
従業員エンゲージメントとは、従業員が会社に対して持つ愛着心や忠誠心を指す。エンゲージメントは「約束」や「雇用」などを意味する言葉だ。会社と従業員が、どのくらい繋がっているか表すときの指標として、従業員エンゲージメントは用いられる。
従業員満足度は会社や上司、業務内容に対して従業員が持っている満足度を表すときに使われる言葉だ。
一方、従業員エンゲージメントは会社への貢献度を表すことが多い。従業員満足度が高くなった結果、自然と貢献度があがっていく。したがって「従業員満足度が高い=従業員エンゲージメントが高い」とはいえない。
ここからは、従業員エンゲージメントが必要な理由を紹介していく。
現代では人材の流動化が活発になってきており、退職や転職などで職場を去るケースも珍しくない。離職者が増えると人材不足によって、社内業務が回らなくなってしまう恐れがある。
その結果、会社の弱体化を招く。能力の高い人材を退職させないためにも、従業員エンゲージメントは必要だといえる。
ITの発達やリモートワークの導入などで、社員間の関係性が希薄化している職場も見受けられる。関係性が希薄になってしまうと、同僚に興味・関心を持たなくなり、メンバー間での連携がとれなくなるかもしれない。その状態を防ぐのも、従業員エンゲージメントが必要な理由だ。
従業員エンゲージメントを向上させるメリットは以下の通りだ。
従業員エンゲージメントを向上させれば、会社にとってPR素材となる可能性がある。うまくPRできれば、就職活動をしている人が自社に対して良いイメージを持つ。その結果、就職希望者が増えて、優秀な人材を確保するのが楽になるだろう。
なお、採用の観点だけではなく、優秀な人材の離職を未然に防ぐ効果も見込めるだろう。
※参考:従業員エンゲージメント測定で得られる3つの効果
従業員たちのやる気アップが期待できるため、社内の士気を高めるのに役立つ。士気が高まれば、社員たちが一致団結して、業務に取り組む姿勢が生まれる。結果、チームワークの強化につながり、成果を挙げやすい組織になるかもしれない。
従業員たちがやる気を出して、仕事の質が高まる可能性がある。すると業績アップにつながる。業績が良くなれば、株主や取引先から、良い印象を持ってもらえるかもしれない。第三者との関係性を良くする意味でも、従業員エンゲージメントの向上は必要だ。
従業員エンゲージメントが向上すれば、社員たちのモチベーション強化が期待できる。
その結果、顧客に良いサービスを提供しようとする社員が増えて、顧客応対が良くなっていく可能性がある。
最後に従業員エンゲージメントを向上させる方法を紹介していく。
企業理念や会社の価値観を共有すれば、会社側と従業員側との距離が縮まる。距離感が縮まれば、お互い何を思っているか分かるようになるため、意思疎通がうまくいく。
お互いの気持ちを考えながら行動する姿勢が身につくため、従業員エンゲージメントの向上が期待できる。なお、企業理念や会社の価値観を共有するときは、以下のことを心掛けるといいだろう。
会社の価値観を強引に押し付けてはいけない理由は、社員に拒絶される恐れがあるからだ。社員が理解していないにも関わらず会社側が無理に共有しようとしても、社員は賛同しようとしない。
会社に敵意をむき出して、何も言うことを聞かなくなる場合がある。その状態をつくらないためにも、会社の価値観をシェアする視点を持つことは大事だ。
社員は押し付けられている感覚を持ちづらくなり、会社のことを吸収しようとする気持ちが生まれるだろう。
繰り返し伝える理由は、会社の価値観を正しく理解させるためだ。一度伝えただけで全てを理解させるのは難しい。なぜなら、会社と社員側で感じ方が違うからだ。
会社が求めているものと、社員が感じ取ったものの間で齟齬が生じるケースもある。ギャップを埋めるためにも、定期的に伝えた方がいい。
会社の価値観を反映させた行動をとる習慣をつくるのも大切だ。口で伝えただけでは、会社の価値観が浸透しない場合があるからだ。業務の中に組み入れることで、会社の価値観を理解しやすくなるだろう。
たとえば、会社から良い評価を得るコツを教えたり、会社の価値観を分かってもらえるまで何度も伝えたりすると、企業理念を反映した行動をとる習慣が生まれていくはずだ。
社員が納得できる人事制度をつくれば、社員は仕事のモチベーションが上がる。会社への信頼が生まれ、従業員エンゲージメントの向上につながっていく。
ちなみに社員が納得できる人事制度をつくるときは、以下のことを抑えると良い。
評価内容を明確にする理由は、何に力を入れると評価が上がるか分かりやすくするためだ。評価内容が抽象的だと、社員はどのようなアクションを起こすべきか分からない。「評価制度が分かりづらい」「良い評価を与えない制度になっている」など、社員の中から不満が生まれるきっかけになる。
社員に不満を持たれると、従業員エンゲージメントの低下につながってしまう。社員たちが目標に向かってイキイキと働ける状態をつくるためにも、評価内容は明確にすべきだ。
人事評価制度の概要ができたら、シミュレーションを実施することも大事だ。理由は、問題点や改善点を見つけて、制度上の不備をなくすためだ。
良い制度ができたと思っても、運用が始まると理想通りにいかないケースもある。その状態を極力減らす意味でも、シミュレーションは実施した方が良い。
新しい人事評価制度を始める前に、社員へ伝えることも大事だ。会社側で勝手に始めると、社員に不信感を持たれる原因になるからだ。
なお、社員へ伝える際は日にちに余裕を持った方がいいだろう。たとえば運用開始の3カ月前に伝えれば、社員は心の準備がしやすくなる。結果、社員の受け止め方も変わるはずだ。
承認し合う環境があれば、従業員間で気持ちが高ぶっていくきっかけをつくれる。その結果、自発的にアクションを起こしていく習慣がつき、従業員エンゲージメントの向上に役立つ。ちなみに従業員間で承認させるときは、以下のことに気を付けると良い。
具体的な内容を伝えさせる理由は、何を承認しているのか相手に分からせるためだ。抽象的な内容を伝えても、相手は何を認めてもらったのか理解できない。何を認めてもらったのか理解させるためにも、具体的な内容で伝えるべきだ。
他の人と比較して承認させない理由は、他の社員の気分を悪くさせないためだ。たとえば「AさんはBさんよりも仕事ができてすごい」と言ったとしよう。その場合、BさんはAさんと比較されて嫌な気持ちを持つ恐れがある。
比較したことが社内に広がれば、部下からの信頼を失くし、自分の居場所がなくなってしまう恐れがある。社内の空気感を悪くしないためにも、他の人と比較すべきではない。
承認の言葉を積み重ねることを実践させるのも大事だ。理由は、承認されたという気持ちを強く持ってもらうためだ。
たとえば「〇〇さんすごいですね」と一言で終わらせるのではなく、「〇〇さんすごいですね」「とても大事なことですよね」「私も取り入れたいと思います」といった形で、二言・三言伝えるといいだろう。一言で終わらせないことが、承認の効果を高めるのに役立つ。
コミュニケーションを活性化させると、従業員間の信頼関係を築ける。チーム内の居心地が良くなって、従業員エンゲージメントを向上させるきっかけになる。ちなみにコミュニケーションを活性化させるには、以下のことを心掛けると良い。
コミュニケーションツールを導入すると、社員間の会話が増えて活性化に役立つ。主なサービスとして、チャットワークやスラックなどがある。社員たちが違う場所にいてもメッセージを送ったり、オンライン通話ができたりするため便利だろう。
会話するためのスペースを設置するのも効果的だ。「リラクゼーションスペース」として、社員たちが交流できるような仕組みをつくっている企業もある。
会話スペースを設置するメリットは、従業員たちが話しやすい環境をつくれることだ。メンバー間の交流を深められるため、社員たちの絆を強めるのにも役立つだろう。
社内イベントを実施すると、従業員間で交流しやすくなる。従業員間の関係性が良くなり、お互いに積極的に話しかけようとする姿勢が身についていく。結果、コミュニケーションの活性化につながる。
「社内イベント」の事例を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてほしい。
企業イベント運営を手掛ける株式会社ニューズベースでは、従業員エンゲージメントの向上に繋がった具体的な社内イベント事例を紹介している。ぜひ参考にしてもらいたい。
・参考:従業員エンゲージメントとは?効果と向上させる事例を解説
キャリア形成をサポートすると、従業員は自分の可能性に向かって突き進んでいく体制が生まれやすくなる。自分のキャリアに関する目標が明確になり、従業員はアクションを起こしやすくなるだろう。
理想とするキャリアに向かって頑張っていく中で、会社から認めてもらえば、さらに頑張ろうとする。結果、会社に尽くす気持ちが生まれるため、従業員エンゲージメントの向上に役立つ。
なお、従業員のキャリア形成を行うときは、以下のことを意識するといいだろう。
理想のキャリアを考えさせるときは、ゴールからスタートに向かって逆算して考えさせることが大事だ。スタートからゴールまでのルートをスムーズに描ける状況をつくるためだ。
たとえば「10年後、5年後、3年後、1年後」といった順番で考えさせると、ゴールまでのキャリアをスムーズに築けるだろう。
キャリア形成に必要なスキルを把握させる理由は、キャリア形成に意味のあるスキルを習得させるためだ。キャリア形成に意味のないスキルを習得することに時間を割くと、時間の無駄になるケースがある。それを防ぐ意味で大事だ。
スキルを身につけさせるために実践する場を与えるのも大切だ。キャリアを積み上げる上で何をすべきか分かっていても、取り組まなければ意味がない。従業員が理想のキャリアを築けるように、社内に会社や上司などがサポートする姿勢をつくった方がいいだろう。
従業員エンゲージメントの向上は、現代において必要とされる。理由は以下の通りだ。
‐人材の流動化が進んでいるから
‐社員間の関係性が希薄になっているから
従業員の離職防止や社内の士気を高めたり、会社の業績アップにつながったりする可能性があるため、力を入れた方がいいだろう。ちなみに従業員エンゲージメントを高めるときは、これらのポイントを抑えるといい。
‐企業理念や会社の価値観を従業員に共有する社員が納得できる
‐人事評価制度をつくる
‐従業員たちで承認し合う環境をつくる
‐コミュニケーションを活性化させる
‐従業員のキャリア形成を会社としてサポートする
上記のことを行えば、従業員エンゲージメント向上を実現できる可能性がある。社員が働きやすいと感じる職場をつくるためにも、力を入れていただきたい。