何年か働いていると、上司として部下に指導する場面が訪れる。しかし部下の指導がうまくいかない上司も多い。指導に力を入れても効果を挙げられないケースもある。上手に指導するには、正しい方法を知ることが必要だ。そこで今回は部下の指導方法に関する手順やポイントを紹介する。
はじめに部下の指導スキルを身に付けるべき理由を紹介する。
指導スキルが身に付けば部下の成長スピードが上がる。任せられる業務の幅が広がって、チームの戦力として役立つ。チームの成長スピードを上げることにもなるため、習得した方がいい。
指導スキルが身に付けば部下とのコミュニケーションが円滑になって、意思疎通がとれる。意思疎通がとれると上司の伝えたい意図を分かってくれるようになり、指導しやすくなる。これも指導スキルを身に付けるべき理由だ。
部下の指導を行うときは以下の手順で行うといい。
部下の状況を把握し、問題点を見つけていく。問題点が見つかれば、どのような指導をすべきかが分かってくるため、無駄な指導をせずに済む。ちなみに問題点を見つけるときは、以下の方法を使うといいだろう。
様々な方法を試すことで問題点を見つけやすくなる。
問題点を見つけた後は目標を設定する。設定するときは、MORSの法則を意識するといい。MORSの法則とは目標を具体的にするために意識すべき法則のことで、4つの頭文字から成り立つ。
内容を数えられる状態のことだ。たとえば「今月の売上目標100個」とした場合、売上個数を数えることで進捗状況や達成率が分かる。よってMeasuredを意識した内容だと言える。
何の行動をしているのか、誰が見ても分かる状態を指す。たとえば「売上を上げるために営業活動をしている」というのが、見た人全員から分かるのであればObservableを意識した行動だと言える。
誰が見ても同じ行動をしていることが、認識される状態のことを指す。「誰が見てもAの行動をとっていることが分かる」といった形だ。本人はAの行動をとっているつもりでも、人によってBに見える行動の場合、Reliableから逸脱した内容だと言える。
何をどうするのか、明確にしている状態を指す。たとえば「1カ月後に売上を100万円上げる」と言った形は、何をするのか分かるためSpecifyを意識した内容だと言える。これが「良い結果を出す」という目標だと、達成するために何をすべきか明確になっていないため、Specifyを意識していない行動になってしまう。
上記4つの内容を満たしている目標を設定すれば、具体的に何をすべきか分かるため、達成までのプロセスを考えやすくなる。そのため目標設定のときに用いた方が良い法則だと言える。
目標を設定したら、達成させるための指導方法を考えていく。指導方法を考えるときは、部下の状況に合わせて選ぶことが大事だ。部下に現場で作業を行わせながら指導していくOJTや、座学や講義などで知識を習得させるOFF-JTなど、様々な指導方法がある。コストパフォーマンスや効果を考えながら決めるといいだろう。
指導方法が決まったらスケジュールを組んで行動させる。ただし適当にスケジュールを組むと予定通り進められなくなる恐れがある。よって、以下のことを意識しながら組んだ方がいい。
1日の時間を把握してからスケジュールを組むと、どのような内容を盛り込めばいいかが分かってくる。内容が良くても、こなせない内容だったら意味がない。「絵に描いた餅」と言われないためにも気を付けるべきだ。
余白の時間をつくっておけば、スケジュール通りに予定が進まなかったとしても、時間調整できる。スケジュールが、予定通りに進まないことも珍しくない。予定が狂ったときに慌てないためにも、余白の時間を設定すべきだ。
数が多すぎてスケジュールに何を盛り込むべきか分からないときは、優先順位を決めるといいだろう。優先順位を決めるときは、以下のフレームワークに当てはめていくと楽だ。
4つのフレームワークに当てはめた後は、さらに細かく分類していき優先順位を決めていく。すると内容ごとの優先順位が分かり、スケジュールに当てはめやすくなる。
遅れが生じると、時間がおしてしまい他の指導ができなくなってしまう。結果、部下に必要なスキルを全て伝えられなくなる。その状態を避けるために、予定通り進んでいるかコマメにチェックすべきだ。
なお、チェックしたときに予定通り進んでいなかった場合、他の指導内容を削ったり順番を変えたりなど、様々な対処が必要となる。手遅れの状態にさせないためにも、コマメな確認が必要だ。
行動した結果をもとに、部下に対してフィードバックする。部下にフィードバックをするときは、以下のことを心掛けた方がいい。
フィードバックは部下に理解してもらわなければ意味がない。内容を聞いて部下に認識してもらうことが大事だ。そのため、部下が理解できるように伝えなければならない。
フィードバックを行うときに、上記の内容に該当している場合、部下に伝わりづらくなる場合がある。どのように話せば部下に理解してもらえるか考えてから、フィードバックすべきだ。
反省点や改善点だけではなく、部下を褒めることも大事だ。たとえば「〇〇の作業はとても良かった」「△△の工程は得意分野だから伸ばせる」といった形で伝えると、部下のモチベーションを上げる効果が期待できる。前向きな気持ちで業務に取り組んでもらうためにも必要だ。
部下が答えられなくなるまで追い詰めると、逃げ場がなくなってしまう。翌日以降出社するのが怖くなってしまい、出勤拒否となる場合がある。その状態をつくらないためにも、部下を追い詰めるのは良くない。
部下の指導を行うポイントは以下の通りだ。
部下の段階に合わせて、指導をしなければ失敗に終わってしまう。たとえば「A→B→C」の順番で指導すべき内容を「B→A→C」の順番で指導すると、スキルの習得を妨げてしまう恐れがある。
段階を考えず誤った順序で指導してしまうと、部下のスキルアップに支障をきたす。そのため、段階に応じた指導が必要だと言える。
部下の意見を全て否定すると、上司と部下の間で信頼関係を構築できなくなる。指導がスムーズに進んでいかなくなる恐れがあるため、部下の意見を全て否定すべきではない。反論したいと思っても、全ての内容を聞いたうえで自分の意見を言った方がいい。
上から目線で指導すると部下に嫌われてしまい関係性が悪くなる。指導を妨げる要因になるため、上から目線で伝えるのは良くない。しかし無意識のうちに、上から目線になってしまう方もいる。その場合は、下記を意識するといいだろう。
自分の意見だけが答えだと勘違いすると、違う考え方の社員を否定してしまう。それが上から目線につながる。その状態にならないためには、様々な答えがあると認識することが大事だ。すると違う意見を言っている部下を受け入れる体制ができて、上から目線で指導することも減るはずだ。
相手の状況や立場・気持ちなど様々なことを考えながら接していけば、自分本位で行動することはなくなる。結果、上から目線で指導することも減るはずだ。
感情的に指導しても、部下に上司の気持ちは伝わりにくい。なぜなら可視化されていないためだ。抽象的な表現であるため、自分の感情を的確に説明して伝えるのは難しい。そのため、指導のときに私情を挟むべきではない。
とは言っても私情を挟むことが多い上司もいる。その場合、以下のことを心掛けるといいだろう。
自分の好き嫌いを基準に指導すると、部下によって指導方法を変えるクセがついてしまい、スキルの習得度にバラツキが出てしまう。社員のスキルは、ある程度統一させないと社内業務に支障をきたす。その状態をつくらないためにも、好き嫌いで判断するのは辞めるべきだ。
プライベートのことを仕事で持ち込んでしまう場合は、オンとオフを切り替える習慣をつくるといい。「デスクの上に私物を置かない」「プライベート関連のことを調べない」と言った方法で、オンとオフの切り替えが楽になる。
上司が先に答えを言う行為は、部下の考える時間を奪うことになる。結果、思考力が上がらず一向に成長しない。物事を考えたり自発的に行動したりするのが難しくなり、受け身の状態になってしまう。
受け身の状態になると、上司から指示された業務しかこなさなくなる。自発的に物事を考える部下として育ってほしいのであれば、先に上司が答えを言うべきではない。
上司としては簡単な内容を指示したとしても、部下の目線だと理解してもらえない場合がある。その状況になると、部下のモチベーションを下げてしまう。積極的にスキルを習得してもらうためには、モチベーションを維持させることが大事になる。そのため、部下の目線に合わせて指導すべきだ。
しかし部下の目線に合わせようと思ってレベルを下げすぎると、簡単なスキルしか習得できなくなってしまう。部下の成長スピードを落とさないためにも、バランスが大事だ。
上司とは言え人間である以上、何らかの過ちは起こる。過ちを犯したのに認めない上司は、部下からの信頼を失う。部下からの信頼がなくなると、上司の言うことを聞かなくなり、指導するのが難しくなるかもしれない。よって過ちを犯した際は、上司であっても認めるべきだ。
部下への指導スキルを身に付けておけば、部下のスキルアップに役立ったり、信頼関係を構築しやすくなったりする。よって部下を持つ上司にとっては必要だ。指導をするときの手順は以下の通りだ。
⓵から順番に行っていくのが、部下を指導するときの手順となっている。手順を踏んでいけば、スムーズな指導ができるはずだ。その他にも指導をするポイントもあるため、覚えておくといいだろう。
これらの内容も部下を指導するときに抑えておきたいポイントとなる。
なお、部下育成・後輩指導研修にてこれらを学ぶこともできる。ぜひ参考にしてほしい。
部下の指導をするときは上司だからと言って傲慢な態度をとらず、部下に歩み寄ることが大事だ。部下との関係性を大事にしながら、指導をしていただければと思う。