昔からの伝統や文化、仕事のやり方を尊重する企業もあるだろう。これらの企業では、官僚主義型の経営が見られる。官僚主義にはメリットがある一方でデメリットもある。しかし、今後の時代背景を考えると脱却した方が良い。
本記事では官僚主義の概要やメリット・デメリットを解説しながら、脱却方法を紹介していく。
官僚主義とは既存のルールを尊重する考え方のことだ。官僚主義の企業では新しいことを積極的に取り入れない。なぜなら変化を嫌うからだ。
一般的に官僚主義の企業では、今まで通りのやり方で仕事を進めていく。つまり流れを変えることに対して、否定的な考えを持つ。たとえ良いアイデアだとしても、昔からの文化が壊されるのであれば否定する。それが官僚主義の特徴だと言える。
ここからは官僚主義のメリットを紹介していく。
官僚主義の場合、設定された規則やルールに沿って進めていく。マニュアルや決められたルールに沿って進める分、ムダがない。そのため、無駄な時間やコストを抑えるのに役立つ。
官僚主義では、上下関係が決まっている。司令・命令系統が明確になっているため、責任や担当の所在が分かる。社員間の仕事の流れが見える分、業務トラブルが起こったときの対応も速い。そのため、スピーディーに仕事を進められる。
官僚主義型の企業では、専門性の高い方が業務を進める。専門性のない方と比べて知識が豊富であるため、業務が早く進む。そのため、チーム全体の業務スピードを上げるのに効果的だ。
官僚主義には様々なデメリットがあるため紹介する。
権力の集中と固定化が起こる理由は、自身にとって不都合なことを取り入れない流れができるからだ。社員の中には、長期にわたり権力を持ち続けたいと思う方がいる。そのタイプの社員に権力が行きわたると、自分の権力が脅かされる意見を却下することが増えていく。その結果、新たな風を吹き込むのが難しくなる。よって官僚主義では、権力の集中と固定化が起こりやすいと言える。
社員が新たなことにチャレンジしたいと思っても、会社から何度も却下される。すると社員はモチベーションが下がり、挑戦する意欲をなくす。結果、チャレンジ精神の喪失へつながる。
この状態ができると、保守的な職場になって社内の改革が起こりづらくなる。その結果、時代の流れに乗れない企業になってしまう。
新しいことを是とせず、枠に捉われた発想しかできない。したがってアイデアを生むのが難しくなる。アイデアが生まれないと、課題があったときに解決できない。その結果、会社は悪化の一途を辿ることになる。
事なかれ主義とは、波風を立てずに周りの流れに合わせる考えのことだ。官僚主義の職場では、何を言っても無駄だという空気が流れやすい。それが事なかれ主義の加速につながる。事なかれ主義が加速すると発言する社員がいなくなり、議論が活発化しない。その結果、特定の社員が都合よくルールを決める事態が起きて、会社を私物化される恐れがある。
時代の流れは今後も加速していく。会社として臨機応変に対応する意味でも、官僚主義からは脱却した方が良い。そこで最後に、官僚主義からの脱却方法について紹介する。
まずやるべきことは、社内制度の見直しだ。社内制度にメスを入れない限り、官僚主義の考え方を改めるのは難しい。したがって官僚主義から脱却するための制度にすることが大事だ。なお、見直しでは以下のことを意識すると良い。
目的を明確にする理由は、惰性で見直しをしないためだ。いくら見直しても、効果が挙がらなければ意味がない。組織の文化を変えるためにも、目的は明確にすべきだ。
目的を明確にする上で大事なのが「ゴール設定」だ。ゴール設定を誤ると、目標を達成できなくなる。作業時間を無駄にしないためにも、正しいゴールを設定すべきだ。
いきなり大きな改革を行うと、社員達は変化についていけない。さらに失敗したときのリスクも大きくなるため、小さく行った方が良い。いきなりゴールを目指すのではなく、いくつかのステップを踏んでからゴールを目指すと達成しやすい。
仕組みを直しても運用コストが大きくなると、企業の財政状態は悪くなる。企業としては、財政状態を良くしなければならない。よってコストパフォーマンスを考えながら、見直すことも重要だ。
コストパフォーマンスを知る上で大事なのが、数字の算出だ。見直しにかかる費用・見直し後の利益増減額を算出すれば、コストパフォーマンスの良い見直しか判断しやすい。
見直し直後に効果が出るとは限らない。一定の時間が経たないと、結果が出ないケースもある。よって目先の利益に捉われるのではなく、長期的な視点で見直すことが大事だ。
見直しても社員たちが知らないと機能しない。機能させるためにも、見直した内容を周知すべきだ。ミーティングや社内サイト・グループチャットなど周知できる場所は多い。社員たちを困惑させないためにも大事だ。
社員に権限を与えれば、自分事として仕事に取り組むきっかけが生まれる。「昔の慣習を変えなければいけない」という気持ちが生まれて、官僚主義からの脱却が期待できる。なお、社員に権限を与えるときは、以下のことに気を付けるといい。
理由は2つある。1つは適当に権限を与えないためだ。何のために与えるか目的を明確にすれば、誤った内容の権限を与えずに済む。
もう1つは、権限を与えられた理由を理解してもらうためだ。理由を述べずに権限を与えると、何も考えずに権限を行使していく。その状況が続くとミスを多発したり、他の社員に迷惑をかけたりする原因になる。以上のことが権限付与の目的を明確にする理由だ。
権限の範囲を変える理由は、社員によって活かせるかが変わるからだ。仮に同じ役職の社員だとしても、社員によって向き不向きは異なる。役職だけで権限の範囲を決めると、大きなトラブルにつながるため良くない。社内業務に支障をきたさないためにも、社員のスキル・適性を見ながら、権限の範囲を変えるべきだ。
膨大な量の権限を与えると、社員はキャパオーバーする。するとチームの仕事が回らなくなる。上手に業務をこなしてもらうためにも、少しずつ権限を与えるべきだ。たとえば「〇〇の業務をこなせたら、△△の権限を与える」という流れにすれば、社員はキャパオーバーせずに済むだろう。
成果主義を導入すれば自分の待遇を良くしようと、様々なことを試す可能性が高くなる。新たなことに取り組む姿勢が生まれやすいため、官僚制度からの脱却に効果的だ。成果主義の導入時は、以下のことを意識すると良い。
成果の内容を明確にする理由は、社員が歩むべき方向性を導くためだ。成果の基準が曖昧だと、社員はどのように業務を進めるべきか分からない。右往左往する状態が生まれて、業務の質が悪くなる。しかし成果の内容を明確にすれば、どのように結果を出せばいいかイメージしやすい。その結果、歩むべき方向が分かり、目標に向かって進みやすくなる。
ただし、個人の数字のみを成果にするのは好ましくない。なぜなら自身の数字を追いかけるあまり、他の社員に迷惑をかける恐れがあるからだ。メンバー間での足の引っ張り合いは、チームワークの乱れにつながる。そのため、個人成績以外の内容も評価に盛り込むべきだ。
特定の社員が有利になる評価基準を設けるのもNGだ。社員たちの反発が多くなり、指揮統制がとれなくなるからだ。機能しない成果主義は意味がない。したがって、評価基準は平等にすべきだ。
評価基準が決まっても、評価者の質が悪いと公平な評価はつかない。よって、評価者の教育に力を入れるべきだ。たとえば「感情や主観を入れて評価しない」「会社の基準を守って評価する」というように、評価者として大事なことを伝えておくと、評価者による差は開きづらくなる。
評価内容は、将来のキャリアに影響する。不当な評価が行われないためにも、評価者を教育すべきだ。
成果主義を導入した後に、問題点が出てくる恐れもある。それを防ぐには、評価基準を定期的に見直すことが有効だ。見直しを怠ると時代に合わない評価基準になり、成果主義が機能しなくなる。長期的に運用し続けるためにも大事だ。
社内のダイバーシティ化を進めれば、自然と新しい風を吹き込みやすい環境ができる。したがって、官僚主義からの脱却に役立つ。ダイバーシティ化を進めるときは、以下のことを意識するといい。
様々な意見を取り入れると、他の社員達が自分の考えを発信しやすくなる。その結果、社内に色々な意見が集まり、ダイバーシティ化が進んでいく。
社内に否定する雰囲気があると、人とは違う行動をとりづらい。その結果、当たり障りのない意見しか発言できなくなる。それを払しょくするには、否定しない文化を作ることが大事だ。
否定しない文化ができれば周囲の目を気にしすぎず、自身の考えを発言できる。そのような社員が増えれば、様々な意見が自然と集まる。よって、ダイバーシティ化を推し進めるのに効果的だ。
ダイバーシティに対して、理解していない社員もいる。その場合は、社員たちの理解度を上げると良い。するとダイバーシティ化を行う目的がイメージできて、社員たちが自主的に取り組む環境が出来上がっていく。
なお、ダイバーシティの理解度を上げる方法は様々だ。ダイバーシティに関する資料の配布や研修の実施、セミナー・イベントの参加などがある。会社の事情を考えながら、使い分けるといいだろう。
官僚主義は大企業に多く見られる考え方で、保守的なのが特徴だ。官僚主義の会社では、順序通りに作業を進めるため、作業に無駄が生じない。しかも、指揮系統も明確になっているため、社内業務がスムーズに進んでいく。
しかし、その一方で特定の社員に権力が集中したり、新しい発想が生まれづらかったりするデメリットもある。現代は時代の流れが速い分、昔の考え方で仕事を進めると時代に取り残されるかもしれない。その状態に陥らないためにも、官僚主義からの脱却を目指すべきだ。
なお、官僚主義から脱却する方法は以下の通りだ。
上記のことに取り組めば会社の文化を大きく変えられる。よって、官僚主義から脱却しやすくなる。官僚主義型の企業では、脱却に反対する社員が多いかもしれない。だからと言って、官僚主義からの脱却を辞めると会社の状態は悪くなる。会社として生き残るためにも根気強く取り組むべき課題と言える。ぜひ新しい文化を築くためにも、官僚主義からの脱却に力を入れていただきたい。