職場によっては、メンタル面の悪化を引き起こす社員もいる。それを防ぐうえで大事なのが、社内での「メンタルヘルス対策」だ。日頃からメンタルヘルス対策に力を入れておけば、精神的に滅入ってしまうリスクを抑えられる。
本記事ではメンタルヘルス対策の概要を解説しつつ、ケアの種類や取り組み例について紹介する。
メンタルヘルス対策とは、心の健康を保つための取り組みのことだ。精神的に滅入っている社員の他に、現段階で何も異常が見られない社員にも実施する。継続的に取り組むことで、精神衛生上良い状態をつくる。
ここからは、メンタルヘルス対策が注目される理由を紹介する。
厚生労働省の調査によると、精神疾患を抱えている方は2002年の段階で258.4万人だった。しかし2017年になると、419.3万人にまで膨れ上がった(厚生労働省「精神疾患を有する総患者数の推移」)。
政府がメンタルヘルス対策に力を入れていることもあって、様々な企業で注目されるようになった。
メンタルヘルスの不調は、仕事のパフォーマンス低下をもたらす。それによって、チームの生産性も悪くなってしまう。多くの企業は、チームの生産性を高めたいと思っている。それも注目されている理由だ。
メンタルヘルスの不調をきたす社員が増えると、業績悪化を招く要因が次々と発生する。たとえば欠勤の社員が増えると、他の社員にしわ寄せがきて、チームの業務が回せなくなる。その結果、機会損失を生んでしまうかもしれない。
また、メンタルヘルスの不調によって顧客への応対が雑になる恐れもある。これが常態化すると悪い口コミが広まり、売り上げが下がる。企業としては、メンタルヘルスの業績によって業績を落としたくない。これも注目される理由だ。
メンタルヘルスの不調が起こる原因は様々だ。ここでは、代表例を紹介する。
人間関係が悪化すると、自分の意見を伝えられなくなったり、会社に居場所がないと思ってしまったりする恐れがある。自分のイメージ通りに業務を進められなくなり、メンタルヘルスの不調をきたす。
普段から長時間労働をしているとストレスが溜まったり、感情を抑制したりする場面が増えてしまい、心身ともにすり減らしてしまう。それを放置することで、メンタルヘルスの不調を引き起こす。
クレーム対応では、顧客の不満を聞き続ける。クレーム対応によって自信をなくしたり、クレームを受けるのが怖くなったりすると、メンタルヘルスの不調へとつながっていく。
メンタルヘルス対策は三段階に分かれている。ここでは、各段階の内容を紹介していく。
全社員のメンタルヘルスの不調を防ぐ。メンタルヘルスの不調をきたしていない社員を対象に行う。以下の内容が該当する。
ストレスの原因となるものを取り除かないと、解消しても溜まり続ける。その環境を変えることで、メンタルヘルスの不調を防げる。とくに、以下の状況は社員のストレスを溜めやすくなるため要注意だ。
残業や休日出勤が常態化すると、心身ともに休まる機会がない。結果、ストレスを溜めやすくなる。残業をしない日を設けたり、社内での残業を原則禁止にするルールをつくったりすることで、残業や休日出勤の常態化が防げる。
たとえば出社する働き方しかない場合、長時間通勤をしたり、満員電車に乗ってストレスを抱えたり、育児や介護の状況によって働き方を変えたりできない。これらはストレスが溜まる原因になる。
それを解消するには、働き方のバリエーションを増やすことが大事だ。時短勤務やフレックスタイム制、テレワークなど働き方を選択できるようにすれば、ワークライフバランスがとりやすくなる。自分に合った働き方を選べるため、メンタルヘルスの不調もきたしづらくなるはずだ。
ストレスチェックテストとは、いくつかの問題に答えてもらうことで、社員達のストレス度が分かるテストのことだ。ストレスが高いと判断された社員については、それを解消するケアが必要になる。
なおストレスチェックテストの導入については、厚生労働省のホームページにて導入例が紹介されているため、参考にするといいだろう。
メンタルヘルス関連の研修を実施するのも良いだろう。社内の産業医による研修もあれば、外部の専門家へ依頼するケースもある。メンタルヘルスに関する知識を入れておけば、自身での予防につながる。
ただし、メンタルヘルス関連の研修と言っても様々な種類があるため、目的に合わせて選ぶことが大事だ。具体的には以下の通りだ。
ニーズに合わせて社内・社外で実施することを推奨する。
メンタルヘルスの不調を発見し、重症化させないための対処をしていく。メンタルヘルスの不調に心当たりがある社員や、不調を訴えている社員が対象になる。下記の対策方法がある。
コミュニケーションがとりやすい職場であれば、社員同士で関わる時間が増える。結果、メンタルヘルスの不調を早い段階で見つけることができ、重症化を防げる。
部下の異変に気付いた段階で声をかければ、症状の悪化を防げる可能性がある。異変があるにも関わらず声をかけない状態が続くと、メンタルヘルスは悪化してしまう。
悪化していない内に声をかけた方が、回復までのスピードは速い。よって異変を気付いた段階で声をかけるべきだ。
相談窓口を設けておけば、メンタルヘルスの不調をきたしたときに、誰に相談すれば良いかが分かる。よって、ちなみに相談窓口を設置するときは、以下のことを決めると良い。
まず誰が、相談に対応するか決める。労務部のスタッフのみが対応する場合もあれば、産業医やメンタルヘルスに精通した専門家などを配置するケースもある。従業員数や確保できる予算を意識しながら決めるといいだろう。『プラットトークス』といった福利厚生サービスを利用する方法もある。
相談の方法を決めることも大事だ。窓口でのみ対応する場合もあれば、テレビ通話やメール・チャットを駆使する場合もある。
窓口でのみ対応する場合、運営側の手間はかからずに済むが、会社に来てもらう必要がある。一方、様々な相談方法を用意すると運営側の手間はかかるものの、相談方法を選択できるため、当事者にとっては使い勝手が良くなる。運営側と利用者側の両方の立場に立ちながら、決めることが大事だ。
相談窓口を設けても、誰も利用しなかったら意味がない。相談窓口を機能させるには、相談窓口の中身をスタッフに周知して、認知してもらうことが重要だ。
周知するときは、相談窓口に携わっているスタッフや相談の方法、相談の流れ、個人情報の取り扱い方などを伝えておくと良いだろう。
メンタルヘルスの不調によって、働けなくなった社員の支援を行っていく。復職支援やフォローなどを行っていく。
社員の支援と言っても、メンタルヘルスの不調をきたした原因や症状によって、適切な改善策は違う。改善策を適当に組んでしまうと仕事が上手くいかなかったり、会社での悩みを解消できなかったりして、再度症状を悪化させる恐れがある。よってメンタルヘルスに精通した専門家が、組んだ方がいいだろう。
職場との向き合い方や不調をきたさないための働き方など、様々なことを当事者に指南する。それと同時に当事者の上司など関係者にも色々と話しながら、職場復帰のフォローをしていく。これらの行動をとることによって、職場復帰のハードルが下がる。
メンタルヘルスの不調と言っても、社員によって異なる。自身での回復が難しい場合は、医療機関での治療を行わせた方が良い。産業医が在籍している企業であれば、当事者の症状を考慮して適切な場所へ紹介してくれる。
復帰後の受け入れ態勢をつくっておけば、メンタルヘルスの不調をきたしている社員が働きやすくなる。
現代はストレスが溜まりやすい時代だと言われている。社員達がストレスを溜めすぎると、精神疾患を患う原因になる。その状態をつくらないためには、会社としてメンタルヘルス対策を行うことが大事だ。ちなみにメンタルヘルス対策は、下記の三段階に分かれる。
-第一段階:メンタルヘルスの不調を防ぐ
-第二段階:メンタルヘルスの不調を発見し重症化させない
-第三段階:メンタルヘルスの不調をきたしている社員の支援を行う
当事者がどの段階にいるのか見極めながら、方法を決めていく。それがメンタルヘルス対策を成功させるカギだ。なお、メンタルヘルス対策の事例は以下の通りだ。
■第一段階の対処事例
-ストレスの原因となるものを取り除く
-ストレスチェックテストの実施
-研修の実施
-マインドフルネスの状態をつくる
■第二段階の対処事例
-コミュニケーションがとりやすい職場をつくる
-部下の異変に気付いたら声をかける
-相談窓口の設置
-自身に対して思いやりの精神を持つ
■第三段階の対処事例
-当事者に適した改善策を提案する
-職場復帰のフォロー
-医療施設での治療
-復帰後の受け入れ態勢をつくる
メンタルヘルスの不調は、仕事のクオリティーを下げたり業績悪化を招いたりなど会社に悪影響を及ぼす。その状態をつくらないためにも、メンタルヘルス対策に力を入れていただきたいと思う。
なお、メンタルヘルス研修や、ラインケア研修などを受けることで、3つの段階それぞれに必要なスキルを身に付けることができる。ぜひ検討してみてほしい。