仕事をする上で、問題は常に発生していくものだ。問題を解決力する力を持つことで、適切・的確な対応が可能となる。
本時事では、問題解決力の概要を解説しながら、手順や高めるポイントを紹介する。
問題解決力とは、問題が発生したときに自分なりに分析をして、解決まで持っていく力のことだ。
問題の種類は、大きく分けて3種類ある。
現段階で目に見えて、異常な事態が起こっている問題のことだ。たとえば「売上目標を達成できていない」というのは、現在進行形の問題であるため①に該当する。既に異常な状況が起きていると認識されており、放置し続けると更に深刻な状況を生み出す恐れがある。したがって、早急に解決すべき問題だと言える。
現段階では認識されていないが、将来的に自社へ悪影響を及ぼす恐れがある問題のことだ。問題を起こさないための対策や、万が一起こったときの対処法を考えておくと、慌てずに対応できる。
現段階で起こっていない問題であるが故に、①と比べると優先順位は低い。しかし前もって対策を立てておけば回避できる。リスクを減らす意味でも対策した方が良い。
問題であると認識されていない問題のことだ。当事者は問題なく仕事ができていると思っても、他の方が見ると問題だらけの場合がある。
⓷に該当する問題は、第三者が調査したり当事者が見直したりすることで発見される。ちなみに発見された後は①の「すでに発生している問題」として扱われるため、迅速に対応した方が良い。
問題を解決しようと思っても、やり方を間違えると失敗に終わってしまう。ありがちなのが、いきなり「対策案(HOW)」を考えてしまうことだ。
普段の生活では「対策案(HOW)」から考えて、解決できるケースも多い。しかしビジネス上で起こる問題は、普段の生活で起こる問題と比べて複雑だ。一筋縄でいかない問題が多いため、いきなりHOWを求めるのではなく、手順に従って問題解決していくべきと言える。
HOWから考えてしまうのは、様々な原因がある。ここでは代表的な原因を3つ紹介する。
日々仕事に取り組んでいると、自分の業務における問題点や原因、改善策をイメージできることは多い。それが当たっているうちは、経験則に基づいてHOWを考えながら解決していった方が効率的だ。
しかし事業の内容や環境が変わると、今までとは違う環境に置かれるため経験則が活きなくなる。結果、HOWから考えると失敗してしまう。今まで経験論をもとに問題解決してきた社員はHOWから考える習慣が身に付いているため、過ちを犯すことになるのだ。
社内のアクションプランや対策(HOW)に対して疑問を持っているものの、「別の方がやるだろう」という気持ちがあると、指示されたHOWのみをこなす流れになる。
結果、受動的な対応となってしまいHOWから考えてしまう。各社員が他部門に興味・関心を持って、高い意識で取り組まないと抜け出すのは難しい。
管理職が何も考えずにHOWに関する指示ばかりすると、部下はHOWから取り組むのが当然だと思ってしまう。緊急時などHOWから取り組んで良い場面はあるものの、毎回同じ指示の出し方だと、言われたことだけをやろうとする習慣がつく。結果、思慮不足の状況に陥りHOWから取り組む習慣が身に付いてしまうのだ。
部下の問題解決力を高めるにはHOWの指示だけではなく、問題を分析させたり原因を考えさせたりすることを忘れてはならない。
問題解決力を高めるメリットは以下の3つだ。
問題を把握してから解決するまでのスピードが上がれば、限られた時間の中で、数多くの改善ができる。業務を妨害する阻害要因を減らせるため、仕事を進めやすくなる。
問題解決までのプロセスを組み立てるため、思考力のアップが期待できる。思考力が上がれば、他の方が思い付かないアイデアを生み出せるようになり、新たな視点で問題解決の糸口が見つかるかもしれない。難易度が高い問題を解決する意味でも、思考力のアップは必須だ。
問題解決までの流れが分かっているため、トラブルが発生しても適切に対処できる。適切な対応がとれれば問題を複雑化したり、間違った解決策を提示する可能性が低くなる。最短ルートで解決するためにも大事だ。
ここでは問題解決させるときの手順を紹介する。
問題が起こっている場所を特定しなければ、原因を分析し対策を考える作業には進めない。したがって正しい解決方法も見つけられなくなる。なお所在を正しく特定するには、3つのポイントを意識すべきだ。
たとえば「売上が悪い」という問題の場合、考えられる原因は複数ある。「製品群Aの売り上げが悪い」ケースもあれば、「近畿エリアで売上が悪い」など違った原因も考えられる。問題の全体像を見誤ると、本当の原因が分からなくなる。原因究明を正しく行うためにも、全体像を正確に読み取るべきだ。
たとえば製品群Aの売上が悪い場合は、「全体的に売上が悪いのか」「特定の製品の売上が悪いのか」。近畿エリアで売上が悪い場合は「特定の県で売上が下がっているのか」、「全ての県で売上が下がっているのか」といった形で、細かく見極めていく。すると問題の詳細が判明されていくのだ。
データなどを紐づけていき、問題の所在を確認する。たとえば製品群Aの中で、比較的大きな売り上げを占めていた製品aが、急激に売上を減らしているのが問題だ。と、結論を示せると、そこから原因究明のプロセスに進める。
WHEREで問題の特定ができたら、次に「原因の特定(WHY)」を進めていく。特定した問題の原因を把握するため、何度も「なぜ?なぜ?」と深堀していく。これを「なぜなぜ分析」と呼ぶ。手順は次の通りだ。
1. WHEREで絞り込んだ問題から掘り下げる
2. なぜを繰り返す
3. 論理の飛躍に気をつける
4. 打ち止めになるまで掘り下げる
「なぜ?」と問えなくなるまで、深堀することが大事だ。
手を打つ原因(WHY)を決めたら、ここで初めて対策(HOW)について考える。ちなみに原因がいくつもあるときは、原因ごとに分けて考えた方がいい。一気に考えると複雑化してしまい、問題解決までに時間がかかってしまう恐れがあるため気を付けた方がいい。
考えた方法をもとに行動させる。しかし行動していると、立ちふさがる壁が出現する場合がある。それを乗り越えさせるには、周囲のサポートが必要だ。質問に答えたりヒントを出したりなど、社員が動きやすくなるよう立ち振る舞うといい。
今回の経験を別の場面で活かしてもらうため、フィードバックの場を設けた方がいい。第三者視点で気付きを伝えるといい。新たな発見ができて、スキルアップにつながるはずだ。自分の状況がどうだったか認識してもらう意味でも、フィードバックはすべきだ。
なおフィードバックを行うときは、相手に伝わる言葉で行った方がいい。理解されない状態だと、発言者の自己満で終わってしまうため気を付けるべきだ。
最後に問題解決力を高めるポイントを5つ紹介する。
たとえ当たり前のように行われている行為でも疑問を持つ習慣をつけるべきだ。すると問題を発見するスキルや、解決までの糸口を見つけるスキルが上がり、問題解決力を高めることになる。
「数十年前から行われているのはなぜだろう?」「他に良い方法はないだろうか?」と疑問を持ち続けることが大事だ。
疑問や問題が起こったときに、可視化する習慣をつくっておくのも大事だ。問題の中身を細かく調べる習慣が身に付くため、問題解決力を高めることになる。
なお可視化するときは、発見したことを次々と紙に書き出すといい。その後、書いた内容を精査して問題解決までのプロセスをつくると、作業がしやすくなる。
ロジカルシンキングとは、筋道を立てて論理的に物事を考えることだ。問題解決ではデータと原因を紐づけて解決策について考えたり、時系列でプロセスを立てたりするなど、様々な場所で必要とされる。
ロジカルシンキングを手助けしてくれるフレームワーク(ロジックツリー、MECE)も存在するため、活用するといい。
問題解決策を考えても不可能な内容だと意味がない。チームの状況によって対応できる範囲は変わるため、それを考慮しながら解決案を提示することが重要だ。なお対応可能な問題解決策を考えるときは、以下の2点に気を付けた方がいい。
問題解決の業務に割ける人員を把握する。たとえチームメンバーが20人いたとしても、全員が取り組めるとは限らない。人員を間違った状態で問題解決しようとすると、他の業務に支障をきたす恐れがある。その状態を回避するため、正確な人員を把握すべきだ。
メンバーが持っているスキルや能力などを把握することも大事だ。人員が多くてもトータルの能力値が低いと、対応できるキャパは小さくなる。逆に人員が少なくても、トータルの能力値が高ければ、対応できるキャパは高くなる。どのくらいの能力を発揮できるチームか把握するのも、問題解決策の前に行うべきだ。
自分で問題解決力を高めようと思っても、ノウハウやスキルがなければ難しい。そこで効果的なのが研修だ。問題解決研修では、プロの講師から問題解決力を高めるコツを聞ける。しかしひと口に問題解決力を高める研修と言っても種類は多い。
問題解決までのプロセスを理解していく研修の他に、情報収集やデータを集めて問題解決するコツを教われる研修、原因究明するときの分析方法を理解していく研修など様々だ。必要とされるスキルによって、受けるべき研修は変わる。そのため社員の課題に応じて選ぶことが大事だ。
問題解決力は、仕事で起こった問題を解消する上で必要なスキルだと言える。能力を高くすれば問題解決までの時間が短くなり、業務効率を上げることにつながる。ちなみに問題解決力を高めるポイントは以下の通りだ。
普段から上記のポイントを意識しながら行動すると、問題解決力は上がる。問題解決力が上がれば解決までのプロセスも立てやすくなり、業務もスムーズになる。
しかしステップを誤ってしまうと問題を解決させるのは難しくなるため、正しい手順を覚えさせることが大事だ。
コツは問題の所在や原因を特定してから、対策案を考えることだ。いきなり対策案を考えてしまうと、原因を把握できなくなり問題解決の精度が落ちてしまう。社員の問題解決力を上げて、業務の効率化を目指していただければと思う。