多くの企業では採用活動が行われている。採用がうまく進む企業もあれば、思うようにいかないケースもある。その差が出る理由として「採用計画」の有無が挙げられる。計画を立てている企業は、採用活動を進めやすい。
採用活動を効率的に且つ効果的に行うためには、質の良い採用計画を立てる必要がある。
そこで、本記事では採用計画を立てる理由を紹介しつつ、流れを解説していく。
採用計画とは、自社で設定した事業戦略をもとに「採用開始~ゴール」までの計画を立てたものだ。採用計画では、採用活動で必要な流れやステップなどを決めていく。その内容を参考にしながら採用活動を進めることで、作業の効率化を図るのに役立つ。
ここからは、採用計画を立てる理由を紹介していく。
採用計画の立案時は、部署の人数や業務量を確認しながら採用すべき人数を割り出す。そのため、自社に必要な採用者数を明確にするのに役立つ。
採用計画と自社の経営方針を照らし合わせれば、両者がマッチしているか確認できる。間違った方向性で採用活動を進めずに済む。
採用計画を立てれば、計画に沿ってフローを進められる。採用活動の流れなどが載っているため、スピーディーに進めるのに役立つ。予定通り進まなかったときも、採用計画をもとに軌道修正できるため調整が楽だ。
採用計画を立てれば、計画と現状を比較できる。したがって、進捗状況を把握するのに役立つ。仮に採用予定人数が100人で現段階での採用者が70人だった場合、進捗度は70%であることが分かる。
採用計画を立てるときは、正しい流れに沿って行うことが大切だ。最後に採用計画の流れを紹介していく。
事業戦略に沿った採用戦略を立てる理由は、採用後のトラブルを防ぐためだ。事業戦略を無視した採用活動は、自社の目標が達成できなくなったり、会社の財務状況を悪化させる原因になったりする。最終的に従業員の負担増につながって、労働環境が悪くなってしまう。
従業員に迷惑をかけないためにも、事業戦略に沿って採用戦略を立てるべきだ。以下のことを心掛けると、作業がスムーズに進んでいく。
経営者、担当部署へのヒアリングを行う理由は、現場の声を反映させた採用戦略を立てるためだ。現場の声を無視すると部署にマッチしない人材を採用したり、採用人数を間違えたりして現場に迷惑がかかる。現場の従業員が働きやすい環境をつくるためにも、経営者や担当部署へのヒアリングは大事だ。
採用したい人材のペルソナを明確にする理由は、人材選びを楽にするためだ。ペルソナに合致する応募者を選べば、自然と自社にマッチする人材を選びやすくなる。結果、採用活動がスムーズに進んでいく。ペルソナを明確にするときは、以下のことを心掛けるといい。
設定が大ざっぱだと、自社にマッチしない人材を採用する恐れがある。そのため、年齢や性格、求めるスキルなど細かく設定した方がいい。
ペルソナを適当に設定すると、自社にマッチしない人材を採用してしまう恐れがある。それを防ぐには、根拠に基づいて設定することが大事だ。たとえば「〇〇のスキルを持つ従業員に働いてほしいから、ペルソナを××にする」とすれば、自社が求める人材を採用しやすくなる。
たとえば、技術職で専門知識が必要なポジションの場合、理系新卒をターゲットに設定することも選択肢の一つだ。このように特定のスキルやバックグラウンドが求められる場合には、理系新卒に特化したオファー型採用支援サービスなど、ターゲット層にマッチしたサービスを活用することで効率的に人材を確保できる。
過去の実績をもとに採用課題を明確にすべき理由は、採用活動の精度を高めるためだ。過去の実績を閲覧すれば、今までの失敗パターンが浮かび上がる。たとえば、採用者の大半が退職していた場合は「人材選びの基準を変えた方がいい」といった課題が出てくるはずだ。
課題が明確になれば、同じ過ちを繰り返さないために何をすべきか考える流れができる。そのため、採用活動の質を上げやすくなる。
今期の採用戦略を立てる理由は、時期によって有効となる戦略が違うからだ。転職市場や自社の業績などで、とるべき採用戦略は異なる。
極端な話、前年度まで通用していた採用戦略が、今年度から通用しなくなるケースもある。自社が求める人材を採用するためにも、今期の採用戦略を立てることは大事だ。
次に必要な採用人数の策定を行う。採用人数を策定する方法として、以下の算出方法がある。
利益を出すために、何人採用すべきか把握するときに使われる算出方法だ。計算方法は以下の通りだ。
必要人員数=(売上高-経費(人件費を除く)-目標利益)÷1人当たりの人件費
仮に売上高が1000万円で経費が300万円、目標利益が100万円、1人当たりの人件費が30万円であれば、20人必要となる。
何人採用すれば社内の業務を捌けるかという視点で、採用人員を算出する方法だ。計算方法は以下の通りだ。
必要人員数=自社の総労働時間÷1人あたりの労働時間
仮に総労働時間が800時間で1人あたりの労働時間が160時間であれば、5人必要となる。
投資として、人にどのくらいの予算を割けるかという視点で、採用人員を求めるときに使う算出方法だ。計算方法は以下の通りだ。
必要人員数=投資人件費÷1人あたりの人件費
仮に投資人件費が1000万円で1人当たりの人件費が50万円であれば、20人必要となる。
採用時の雇用形態を決めていく。以下の雇用形態がある。
正社員として採用した場合、基本的にフルタイムでの勤務となる。雇用契約期間がなく、基本的に長期での採用となる。企業によっては、勤務時間が短い「短時間正社員」を採用するケースもある。
契約社員とは、雇用契約期間が定められている社員を指す。正社員との最大の違いは、雇用契約満了に伴い、契約を終了できることだ。そのため、短期間での契約も可能だ。その他に給与体系や出世の有無など、さまざまな違いがある。
パート・アルバイトとして採用するパターンもある。正社員や契約社員のようにフルタイムで働けない方の応募も多いため、短時間勤務の従業員を、複数人採用したいときに役立つ。
人材会社からスタッフを派遣してもらう、派遣社員を採用する方法もある。派遣社員を採用するメリットは、会社の負担を減らせることだ。
健康保険料や厚生年金保険料などは、基本的に人材会社が支払う。会社が直接雇用しているわけではない分、自社で源泉徴収を発行する必要もない。
どのような人材を採用するか考えたら、スケジュールを決める。その際、以下のことを意識すると良い。
逆算しながら立てる理由は、現実的なスケジュールを設定するためだ。仮に採用試験から入社までの期間が3カ月かかる場合は、採用試験の日を入社から3カ月以上前に設定すれば予定通りスケジュールを終えられる。肌感覚でスケジュールを立てずに済む。
タイトなスケジュールにすると、採用活動でイレギュラーが起こったり、予定通りに進まなかったりしたときのリカバリーが難しくなる。しかしスケジュールに余裕があれば、リスケしやすい。臨機応変に対応できる分、採用活動を進めやすくなる。
採用計画やスケジュールを可視化する理由は、関係社員が採用計画の内容を理解できるようにするためだ。たとえば採用計画やスケジュールの内容を口頭で伝えるだけだと、お互いの間に齟齬が生じて、失敗やミスにつながるかもしれない。
しかし資料や表などで可視化すれば、相手に伝わりやすくなって齟齬が生じるリスクを抑えられる。ちなみに可視化する際は、以下のことを意識すると良い。
特定の社員にしか分からない状態だと、可視化しても理解してもらえない。そのため専門用語や、一部の社員にしか伝わらない略語は使わない方がいい。
採用計画やスケジュールの内容を、全てテキストで書くと見づらい。それを防ぐには、図や表を活用するといい。時系列に沿って表をつくったり、ガントチャートを用いたりすると分かりやすくなる。
採用活動の中でも重要となる箇所について、文字の色を変えておくと良い。たとえば強調したい箇所の字を赤にすれば、従業員は自然とその箇所を意識しながら作業する。結果、仕事のクオリティーアップにつながる。
採用計画が固まったら採用活動を行っていく。採用活動時は、以下のことに注意するといい。
計画の通りに進めるのが面倒だと感じ、都合よくアレンジする従業員もいる。その状態を放置すると、他の従業員も同じ行動をとる恐れがある。その状態が出来上がると、採用計画が機能しなくなるため、計画を無視していないか確認した方がいい。
計画通りに進めていても、ズレが生じる場合もある。予定通り進めるには、ズレの有無を確認することも大切だ。たとえば、以下の内容を確認するといい。
設定した日程と比べて、遅れが生じていないかなどを確認する。スケジュールよりも遅れていた場合は、解決方法がないか関係社員で考えていく。
当初、設定した数の採用説明会を行っているか確認することも大切だ。たとえば10回行わなければいけないのに8回だった場合、予定通りの結果にするには2回分埋めることが必要だと分かる。
予定通りの採用人数を集められているか確認することも大切だ。現段階で50人採用しなければいけないのに20人だった場合は、残り30人を埋める活動が必要だと分かる。なお、残念ながら選考辞退されてしまうケースもある。できるだけ辞退を防ぐ対策も講じておくといいだろう。
※参考:中途採用の選考辞退を防ぐには?原因から紐解く防止策を解説します
採用計画は、自社にマッチする人材を効率的に集める上で大事だ。計画を立てる理由として、以下の内容が挙げられる。
上記の状態をつくれば、人事部の手間が減ったり、会社の力が強くなったりするため、会社にとってメリットとなる。逆に採用計画がないと、採用計画がうまく進まなくなったときに、何をすべきか分からなくなる。
しかし採用計画を立てても、内容が適当だと効果は期待できない。そのため、正しい流れで採用計画を立てることが重要となる。ちなみに採用計画の立案から、採用活動までは以下のステップに沿って行うといい。
上記の流れに沿って行動すると、自社にマッチする人材を確保しやすくなる。自社のリソースが不足している場合や、より効率よく成果を上げたい場合は、採用コンサルティングや採用業務の代行サービス を利用するのもおすすめだ。
なお、人事研修などを人事部のメンバーに受けさせることで、本記事の内容などをまとめて学ばせることや、同じ方向性を向かせることも可能だ。
会社の戦力となる人材を効率的に採用するためにも、採用計画を活用して、それをもとに同じ方向に進めるような形で運用していただきたい。