メンバーが力を合わせて行動できている集団もあれば、そうではない集団も存在する。それを決定づける一つの要素が「一体感」だ。一体感の高さによって、チームの成果が変わると言っても過言ではない。
しかし「一体感」という単語を聞いたことがあるものの、中身や生み出し方について知らない方もいると思う。そこで今回は一体感の概要を紹介しながら必要な理由や生み出す方法・高めるポイントなどを解説する。
そこにいる方たち全員が共通の考えを持つことで現れる、まとまりのことだ。一体感があるチームには、チームワークがある。メンバーが一丸となって行動する上で、必要な要素だ。
組織の中で一体感が必要な理由は以下の5つだ。
現在はインターネットやSNSなどにより、様々な情報があふれるようになった。結果、様々な価値観を持つ方々が現れてきた。メンバーたちが異なる価値観を持っていると、各メンバーの考え方に違いが出てきて、チームにバラツキが出る原因になる。それぞれの個性をチームへ上手に取り込むためにも、一体感は必要だ。
一体感を高めると各メンバーのモチベーションが上がり、社内のコミュニケーションを活発にさせる効果が期待できる。お互いの考えが分かったり、意思疎通を行ったりするのが容易になる。
大半の仕事はチーム単位で業務に取り組むため、自身の考えのみで業務を進めるのは難しい。団体プレーでスピーディーに業務を進める意味でも、一体感は必要だと言える。
会社のために自分が頑張るという気持ちが生まれて、会社への忠誠心を高くする効果が期待できる。忠誠心が高くなって会社に尽くす社員が増えれば、それが共通の目標となって社員達が行動しだす。会社のために動いてくれる社員を増やす意味でも、一体感は大事だ。
一体感を高めると、職場内に思いやりの精神や協力し合おうとする雰囲気が現れてくる。それがきっかけで働き続けたいと思う方が増えれば、社員の離職率低下が期待できる。優秀な人材がいなくなる確率も下がるため、チームの体制が崩れることもなくなるはずだ。
メンバー同士がまとまれば、業務の生産性アップにつながる。生産性が上がれば、無駄なコストを削れるようになり、会社の利益を押し上げる効果が期待できる。会社の利益が上がれば、チームの予算が増額されるかもしれない。
予算が増額されれば新しい人材を採用できたり、別事業を設置してくれたりする可能性がある。業務の幅を広げたいチームにとっても、一体感を高めるのは役立つ。
職場に一体感がないと、不都合なことが次々と起こる。ここでは、想定されることを3つする。
一体感がないと、社員同士でコミュニケーションをとらない環境ができあがる。会話の機会が減ると、お互いの状況が分からなくなるため、連携ミスを引き起こしてしまう。
連携ミスが多発すると、余計な業務が増えたりチームとしての業務処理能力が下がったりするなど、様々なことが考えられる。それがきっかけで、利益を生み出せないチームになってしまうのだ。
自分のことばかり考えて、他の社員を助けない人材が増えるのも特徴だ。サポートすれば、すぐに終わる状況でも、自分以外の仕事には手を付けない。それが業務をストップさせることになって、業務の滞りにつながるのだ。殺伐とした雰囲気が社内に流れ、孤独感を感じる社員を増やすことになる。
自分が主体となって動くことが減ると、自分ができる仕事がないか探す習慣を減らすことになる。結果、指示待ち人間が増えてしまう。指示待ち人間が増えると、社員に対して指示を出す量が増えてしまう。最悪の場合、自分の業務をこなせなくなり、悪循環になっていく。
一体感を生み出すには、行動に移すことが大事だ。ここでは、どのような方法があるか4つ紹介する。
チームで共通の目標を作る理由は、全てのメンバーが同じ目標に向かい進むようにするためだ。一体感を生み出すにはメンバーの足並みや方向性を、ある程度揃えなければならない。共通の目標がないと、何に向かって進めばいいか分からなくなる。
なおチームで共通の目標を立てるときは、達成できる可能性があると思わせることが大事だ。難しすぎる目標は、メンバーのやる気を阻害する要因になるため注意した方がいい。
さらに目標を決めるときは、メンバーと話し合うことが大事だ。代表者が勝手に決めると否定的な意見を持つ社員や、目標の意図が見えない社員が増えてしまい、説明する時間が増えてしまう。それを回避する意味でも、複数のメンバーで決めるべきだ。
社内の情報を共有・伝達する理由は、業務に対する認識を揃えておくためだ。初めは全メンバーが共通の目標に向かい進んでいると思っても、足並みが次第に揃わなくなってしまう恐れがある。ズレを直すと軌道の修正方法が分かるようになり、メンバーと足並みを揃えやすくなる。定期的に共有・伝達をして、理想とギャップを埋める作業が一体感を生み出していくのだ。
ちなみに共有・伝達をするときは、ツールを活用するといい。各メンバーのスケジュールや大事な情報を共有できるツールは複数ある。予算や使い勝手などを意識して選ぶといい。
社員が喜ぶ仕組みを作って、一体感を高めるのも効果的だ。社員のモチベーションが高くなれば、メンバーと一緒に仕事を頑張ろうとする気持ちが生まれていく。
たとえば社員が行った行為や出した結果に対して表彰したり、臨時で賞与を渡したりなど様々な方法がある。労いの意味も込めて行うと、社員からの印象も良くなる。
研修を実施し一体感を高めやすくするのも効果的だ。一体感を高める研修には、様々なカリキュラムがある。たとえばチームビルディング研修では、コミュニケーション力の上げ方やチームでの業務にあたり必要となるスキルについて理解していく。社員に一体感を高める方法を習得してもらえば、チーム自体が変わっていく。
その他にも、テーマ別研修なども良いだろう。学びたいテーマをチーム全員で受けることで一体感や方向性が統一される。リスクマネジメント研修では、チーム内でおこりうるリスクを全員で洗い出して対処法を考えたり、企画力研修を受けることでチーム全体の企画力の底上げも期待できる。
ただし座学しかない研修だと、参加者が飽きてしまう恐れがある。そのためグループワークなど実践型のカリキュラムを用意して、積極的に吸収させようとする雰囲気をつくることが大事だ。
一体感を高めるには、3つのポイントがある。
社員を置き去りにして一体感を高めようとすると、職場内に不穏な空気が流れる場合がある。運営側の目線のみで考えずに、大勢の社員に納得してもらえるか意識した方がいい。社員に不満を持たれないためにアンケートをとったり、生の声を聞いたりしながら高めるといい。
また社員の中には質問をしてくるケースもあるため、答えられるように準備しておくことも大事だ。答えられないと社員から不信感を持たれる。一体感を高めるときに阻害要因となってしまうため気を付けるべきだ。
社員同士でコミュニケーションをとれる環境をつくるのも、一体感を高める上で重要だ。本音で話せる場があると、相手が何を思っているのかが分かる。相手のことを尊重した行動が取れる機会が増えて、一体感を高めやすくなるのだ。
たとえばミーティングの時間を設けたり、終礼のときに社員が発表する時間をつくったりすると、コミュニケーションの機会は増やせる。ルーティン化するといい。
一体感は社員同士の信頼を築く上で仕上がっていく。短期間で一体感を築こうとすると、無理が生じてしまい社員との関係性が崩れる原因になる。焦らずに時間をかけて築くものだと意識すべきだ。
スキマ時間を使って社員と接する時間をつくったり、交流する時間を増やしたりして、少しずつ良好な人間関係を築いていくといい。
一体感を高めるための取り組みを行っている企業も数多く存在する。最後に取り組み例を見てみよう。
社員同士で一体感を生み出すための活動(ICHIGAN活動)を行っている。社員のボーリング大会や「ICHIGAN活動」のキャラクター募集、駅伝への参加など様々なことを実施してきた。
仕事以外で交流できる場面を設けると、お互いの人どなりが分かって距離感が縮まるケースがある。ただし業務以外の行事に参加することが苦手な社員もいるため、職場の雰囲気を見ながら実施することが大事だ。
「ミルコミ」と呼ばれている社内報を社員へ発行して、一体感を高めようとしている。現場で働いている社員の声や、社内での業務に関する情報、会社の想いなど、社内の情報を中心に載せている。
発行時期によって載せる内容は変わるものの、会社が目指す方向性を掴むのに最適だ。会社と社員が認識を合わせるツールとして、社内報を活用してもいい。
フィードバックに力を入れているのが特徴だ。採用されなかった企画であっても、ダメだった理由を記入して、社員へ共有している。フィードバックの内容が載っていれば、次回のプレゼンで活かせる。
何がダメだったのか分からない状況だと、負のスパイラルにハマってしまう恐れがある。一体感を高めるだけではなく、業務をスムーズに進めるきっかけ作りとしてもいい。
CBREではオフィス移転のときに、経営陣だけではなく従業員の意見も取り入れながら進めた経歴がある。会社側と従業員側が認識をすり合わせ、組織の一体感を高めるために行った取り組みだ。
イベントスペースをつくったり、人とのコミュニケーションを増やすためにテクノロジーを用いたり、立って仕事ができるようにスタンディングテーブルを設置したりなど、様々なことが行われた。
移転後に自社でアンケートをとったところ「生産性が向上した」「働きやすくなった」という、ポジティブな声も多かったようだ。
社員同士の一体感を高めるために、社内で独自の三本締め(ネオ三本締め)を開発した。今までの3本締めのエッセンスに、独自のリズムを加えることによって実現した。さらにプロモーションビデオを作成しWeb上の動画で流したため、PRにもなったようだ。
一体感は現代社会において必要なことだと言える。現代では様々な価値観が存在する。個性あるメンバーをまとめる意味で、一体感は必要だ。ちなみに一体感がないチームには、以下のことが起こりがちだ。
1.社員同士の会話が少ないため連携ミスが起こる
2.他の社員を助けない人材が増える
3.指示待ち人間が増える
上記の内容は社内の業務が止まったり、チームが崩壊したりする理由になるため避けるべきだ。その状況を起こさないためにも一体感は必要だ。しかしチームの一体感を高めるつもりで行動しても、失敗する場合もある。成功させるには、以下のポイントを抑えることが大事だ。
1.社員を置き去りにしない
2.社員同士がコミュニケーションをとれる環境をつくる
3.長期にわたり、一体感を築いていく
上記の内容を意識するだけでも、一体感を高めやすくなる。集団の力は個々で活動するよりも大きな力が発揮されるため、日頃の業務だけではなく大きなプロジェクトを進めるときにも役立つ。チームで業務を効率的に進めるためにも、力を割いていただければと思う。