一昔前は「働く=出社する」という考えが強かった。しかし「スマートワーク」の出現で、働き方が変わりつつある。出社せずに働くことを、スタンダードとしている企業もあるようだ。円滑な運用をするには、スマートワークの導入方法を理解する必要がある。
そこで、本記事ではスマートワークの概要・メリットを紹介しつつ、導入のポイントを解説していく。
目次
スマートワークとは情報通信技術を活用して、業務の効率化を進める働き方のことだ。たとえば「手入力で行っていた業務をコンピュータで自動化する」「インターネットを活用し、どこでも働ける状態を作る」などは、スマートワークを活用したものだと言える。
スマートワークを活用すれば、ライフスタイルに合わせながら働き方を変えられる。働きやすい職場環境を実現させる上でも、スマートワークは導入すべきだ。
スマートワークが注目されている背景として、少子高齢化による人材不足が挙げられる。国内では働く人数が減少しており、従業員1人あたりの業務量が多くなっている企業も存在する。
さらに会社によっては、子育てや介護などを理由に出社できなくなり、退職してしまうケースもある。それを解消する手段として「スマートワーク」は注目された。
スマートワークを導入すれば社外での勤務も可能になるため、出社できないことを理由に退職する従業員を減らせる。万が一人手が足りなくても、スマートワークを取り入れれば業務の効率化が期待できる。よって、人手が足りない企業に役立つ。
人手不足による業務の負担が減れば、各企業の生産力はアップするため、日本の経済発展を後押しする働き方になるはずだ。
スマートワークがきっかけで、様々な働き方が登場した。ここでは働き方の事例を3つ紹介する。
テレワークとは、職場以外の場所で仕事をする働き方のことだ。インターネット技術やオンラインツールを使用できる今、職場へ行かなくともミーティングができる。その結果、自宅やコワーキングスペースで働く方が少しずつ増えていった。
複数の拠点を構えて気分に合わせながら働く場所を変えることも可能であるため、1カ所で仕事をするのが苦手な方に向いている働き方だと言える。
ワーケーションとは旅行先にいながら、仕事をすることだ。旅行気分を味わいながら仕事をしたい方に最適だ。観光地やホテルで仕事をするケースが多い。
パラレルワークとは、複数の仕事をする働き方のことだ。スマートワークの出現で、働き方が変化している。オンラインのみで完結する業務が多くなり、仕事の選択肢が広がった。企業や自治体の中には、副業のスタッフを募集しているケースもある。その結果、パラレルワークに取り組むのが楽になった。
スマートワークによって業務量が減った方や、時間に余裕のある方は取り組んでも良さそうだ。
スマートワークを導入すると、以下のメリットがある。
スマートワークの導入は、生産性を上げるきっかけになる。「業務の一部をシステム化して、作業時間が削った」「チャットやツールの導入で、社員がいなくてもミーティングが可能になった」など、様々な事例がある。
生産性が上がれば、従業員のコストパフォーマンスは高まり、無駄な時間やお金を使わずに済む。そのため、最小限の費用で最大限のパフォーマンスを挙げられるチームを作りやすくなる。
スマートワークを導入すれば、全ての従業員が職場で勤務している場合と比べて、管理する手間が減る。管理コストが減れば、他の従業員を気に掛ける頻度が減り、自分の業務に集中したり、他の業務に時間を割いたりすることが可能だ。
スマートワークの導入で作業時間が減れば、長時間労働の削減につながる。その結果、プライベートの充実が期待できる。
プライベートが充実すれば、日頃の疲れをとりやすくなり、仕事に支障をきたさずに済む。結果、ワークライフバランスを整えるのに役立つ。
スマートワークを導入すれば、ITシステムを活用して様々な働き方ができ、自身のライフスタイルや適性に合わせて働き方を変えられる。それが、多様な人材が活躍できる環境を整えることになる。
スマートワーク導入のポイントを紹介する。
ルールが抽象的だと、従業員たちはどのように動くべきか判断できないからだ。好き勝手に動いたり、消極的な行動をとったりする従業員が増える原因になる。その状態が生まれるとメンバーたちの統率が難しくなり、チームにまとまりができない。ルールに則って行動させるためにも明確にすべきだ。なおルールを明確にするときは、以下のことを意識すると良い。
シンプルにする理由は、ルールを見た従業員が理解しやすい状態を作るためだ。内容を盛り込むと覚えることが多くなり、理解するまでに時間がかかる。ルールの内容を全て理解するまで時間がかかってしまい、従業員にとって大きな負担となる。
しかし覚えることが少なければ、内容を理解しやすい。ルールが分からずに混乱する従業員は減り、スマートワークの運用が楽になる。
従業員によって解釈が違うルールだと、従業員間でルールに対しての認識が異なる。チーム内で齟齬が生じ、仕事がスムーズに進まなくなる。全てのメンバーが共通の認識を持たないと、スマートワークを導入しても業務は回らない。
内容を具体的にするのも、ルールを明確にするコツだ。たとえば「勤務中は長時間席を離れない」ではなく「〇分以上席を離れない」とすれば具体的になる。基準が曖昧ではないため、従業員も動きやすい。
セキュリティが不十分だと情報漏洩やデータの破損などにつながる。それを防ぐ意味でも、セキュリティ環境の整備は大事だ。セキュリティ環境の整備では、以下のことを行うと良い。
セキュリティソフトを導入ではパソコンとの相性やコスパ、機能面などをチェックすると良い。さらにアップデートの回数が多くて業務に支障をきたすケースもあるため、慎重に選ぶべきだ。
パスワードが漏れると、重要なデータが流出する危険性がある。その結果、同業他社に真似されたり、情報を売買されたりなど会社にとって悪いことが起こる。それを防ぐためにも、パスワード管理は徹底すべきだ。
パソコンが盗まれると情報漏洩につながるからだ。「用がないときは持って行かない」「電車の網棚の上に置かない」といった形で約束事を決めておくと、不用意にパソコンを持ち運ばなくなる。結果、盗難防止に役立つ。
従業員たちがスムーズに動ける状態を維持するためにも、スマートワークに合う業務体制を作るべきだ。
仮に全ての従業員が職場で勤務していれば、面と向かって話せる。しかしテレワークを導入した場合、相手が目の前にいない。そのため、連絡のやり取りでチャットを用いる機会が増える。
その他にもスマートワークの導入で、従業員たちの立ち位置や役割が変わる場合もある。このあたりを対策しなかった場合、スマートワークが始まったときに従業員たちは戸惑う。それを防ぐためにも業務体制は変えた方が良い。
スマートワークに合った評価基準を設けることも大事だ。なぜなら、職場での勤務とスマートワークの勤務では、見える部分が異なるからだ。
たとえば職場での勤務の場合、部下の様子が分かるため、プロセス重視で判断してもいいかもしれない。しかしスマートワークでは、部下の様子が分からない。プロセスが見えない分、必然的に結果重視の評価となる。そのときに職場での勤務時と同じ基準で評価すると、公平な評価ができない。評価の公平性を担保するためにも、スマートワークに合った評価基準を設けるべきだ。
スマートワークを導入しても、会社に利益がないと意味がない。よって、コストを意識して導入することも大事だ。
スマートワークを導入したときに期待できる売り上げや利益の増減額を計算し、それをもとに許容される初期費用やランニングコストなどを算出するといいだろう。
スマートワークは様々な企業で導入されている。最後に、スマートワークを導入している企業の事例を紹介する。
ソフトバンクグループでは、ITを活用して楽しく働くことを意識し「Smart & Fun!」と呼ばれるスローガンを掲げている。業務の効率化や働き方改革を進めることで、余った時間を自身の投資に使ってもらい、それを仕事に還元してもらう。その流れを回し続けることを目的としている。
実際に直行直帰やテレワークの導入、部門ごとによって働き方を変えられる仕組みなどが設けられており、従業員たちが働きやすい環境を作っている。その他に新しいイノベーションを生み出す場も設けられており、スマートワークの質を向上させるのにも力を入れている。
富士通株式会社では「Work Life Shift」を合言葉に、スマートワークを進めている。この言葉は、誰もが活躍できる環境にするために作られた。
時間や場所に捉われずに働ける環境を作ったり、従業員たちがコミュニケーションを円滑にとれるサービスの導入を行ったりしている。その結果、プライベートとの両立がしやすくなったり、副業に取り組む方が現れたりなど従業員の生活に豊かさを与えることになった。
リクルートスタッフィングには、スマートワーク推進室と呼ばれる場所がある。ここではスマートワークにより、成果を上げる方法が考えられている。
同社ではノートパソコンやiphoneの貸し出しを行っており、テレワークできる仕組みを導入した。
また、評価についても年齢や社歴ではなく能力給を重視しており、限られた時間で多くの成果を挙げられた方が評価される。スマートワークの運用に力を入れている会社だと言えるだろう。
「人材不足に陥り、社内業務が進まない」「作業時間を短くしたい」と思っている企業は、スマートワークの導入を検討すべきだ。業務時間の短縮や生産性の向上につながり、働きやすい職場へと変わる。会社を成長させる意味でも、スマートワークの環境はあった方がいい。
ちなみにスマートワークを導入すれば、以下の働き方が可能だ。
様々な働き方ができれば、従業員たちは自身のライフスタイルに合わせて仕事の仕方を選べる。この状態が生まれると、各従業員の強みが発揮されて、会社の成長をスピードアップさせる。さらに多様性も生まれるため、スマートワークの導入は組織力を強くしていく。
しかしスマートワークの導入方法を間違えると、働きづらさを感じる。導入のときは、以下のポイントを抑えると良い。
これらを意識すると、スマートワークで恩恵を受けやすくなる。現代ではITの発達によって、快適に働ける状態を作るのも簡単になった。今後は出社せずに働くことが、スタンダードとなるかもしれない。時代の波に乗るためにも、スマートワークの導入に力を入れていただければと思う。