仕事を手際よく進めてくれるチームにするには、社員に「タイムマネジメント」を習得させることが大事だ。タイムマネジメントのスキルを習得させれば、各社員が時間に対する意識が上がり、チームの業務が効率的に進む。
しかし正しい方法を知らなければ、タイムマネジメントを習得させるのは難しい。そこで今回はタイムマネジメントの概要を紹介しつつ、習得させる手順やポイントなどを解説する。
タイムマネジメントとは、与えられた時間の中で自分の仕事をコントロールしながら計画通りに進めていくスキルのことだ。時間を管理しながら生産性を上げることで、業務を効率よく進めていく。仕事の生産性を向上させる上で大事だ。
なおタイムマネジメントでは、自身の行動を変化させることが重要だ。時間を意識するだけでは、自分の行動を変えることはできないためだ。そのため自分の業務を把握し、効率的な働き方を見つけることが、タイムマネジメントを身につける第一歩だと言える。
タイムマネジメントが必要な理由は以下の通りだ。
一昔前の働き方では通用しない場面も増えてきている。テレワークの導入など様々な変化が起こっている。何も考えずに働いていると、これらの変化に対応できない。時代に取り残されないためにも、タイムマネジメントは必要と言える。
日本では高齢化などによって、労働人口が減ってきている。数年前と比べて社員の人数が減り、1人あたりの業務量が増えている企業もある。その場合、仕事をこなすのは厳しくなっていく。社員の人数が減った状態で業務を回すのも、タイムマネジメントが必要な理由と言える。
タイムマネジメントを習得させると、以下のメリットがある。
業務の棚卸しができ、効果的な行動の見直しができる。結果、先をイメージできるようになって、仕事を計画通りに進めるのが簡単になる。チームの管理も楽になるだろう。
タイムマネジメントによって、計画通り仕事を進められるようになれば、残業が発生しなくなる。定時で仕事を終える社員を増やしたい場合も、タイムマネジメントを習得させるといい。
新たな時間をつくれば、他のことに時間を割けるようになる。よって、新たなことに挑戦できる機会が増える。社員を成長させる機会をつくる意味でも、タイムマネジメントは習得させるべきだ。
タイムマネジメントを習得させるには、以下の手順で実施するといい。
日頃行っている業務を全て洗い出して、内容・時間を把握していく。洗い出さない状況で行わせると、自身の勘を頼りにしたり、客観的事実がない状況で動いたりしてしまう。それを防ぐために業務の洗い出しは重要だ。
なお業務の洗い出しを行うときは、以下のことに気を付けるべきだ。
たとえば「事務作業に〇分」といったように、大きな括りで洗い出すと、どの作業に何分かかっているか分からない。それを防ぐには、いくつものタスクに分けて洗い出すことが大事だ。
「書類整理〇分」「データ入力〇分」といった形で洗い出せば、事務作業にかけている時間の内訳が分かる。自身の状況を具体的に把握してもらうためにも、細かく分類した方がいい。
表にして分かりやすく記載することも大事だ。洗い出したタスクを作業の種類ごとに書いておくと、洗い出した内容が見やすくなり作業の見直しも楽になるだろう。
業務の優先順位をつけていく。優先順位をつけるときは、下記の4つに分類するといい。
それぞれのタスクを4つのいずれかに当てはめることで、自社にとって必要な内容が見えてくるはずだ。
優先順位ごとに、業務の見直し方を考えていく。たとえば優先順位が最も高いものに該当する場合は、直ちに方法を変えた方がいい。
逆に優先順位が最も低いものは、自社にとって必要のない業務と言える。社内から業務を失くしたり、外部へ委託したりするのが効果的だ。
方法を変える必要がある業務については、目標設定をする。たとえば「〇〇の業務時間を今よりも半分に減らす」「担当者を半分に減らした状態で、今までと同じクオリティで作業ができるようにする」といった形で決めていく。ただし目標設定をするときは、以下のことを意識した方がいい。
内容が理解できていない状況で社員を行動させても、目標を達成するのは難しい。難しい用語や横文字などを控えて、分かりやすい目標にすることが大切だ。
「作業を短縮させる」という目標だと、進捗状況や成功基準が分からないため、目標として好ましくない。数字を入れることで目標が具体的になる。
たとえば「30分以内に作業を終える」といった形で具体的にすれば、進捗状況も成功基準も分かるため、適した内容だと言える。
QCRDSとは5つの項目の頭文字をとったもので、目標を達成させる上で大事になってくる。それぞれの内容は以下の通りだ。
業務に携わっている社員ではなく、第三者が満足できる品質になるよう行動していく。自己満足ではなく、他の社員に納得してもらうため、どこまで品質を上げるべきか考えながら行動させていく。
いくら品質が高いものをつくっても、費用対効果が合わなければ経営は成り立たない。とは言っても、絶対にかけなければならないコストもある。コストのかけ方を意識しながら、行動させるのも大切だ。
無駄に時間をかけるのは良くない。そのため、各作業に締め切りを設けさせるのも大切だ。すると社員は時間を意識して、締め切りに間に合わせる行動をとっていく。
業務の見直しをするときには、必ずリスクが発生する。回避すべきリスクもあれば、受け入れた方が良いリスクも存在する。種類によって使い分けることを意識させるべきだ。
自分以外の方に喜んでもらうための気配りも大事になる。顧客や同僚が喜ぶことは何か考えながら行動させるといいだろう。
一定期間、行動させたら評価をしていく。ただし社員の好き嫌いや、そのときの気分に合わせて評価の仕方を変えると、社内で愚痴が出たり職場の士気を下げたりする恐れがある。よって私情を挟まずに、公平な評価をすることが大事だ。
最後にタイムマネジメントを習得させるポイントを紹介する。
スケジュールの内容が雑だと予定通り進めるのが厳しくなったり、タイムマネジメントの習得に悪影響を与えたりする恐れがある。そのためスケジュールの立て方には気を付けた方がいい。以下のことを意識しながら、立てるといいだろう。
急用や仕事のトラブルなど、想定外のことが発生して予定通りに進められない場合もある。その際、予定を埋めすぎていると対応できなくなってしまう。イレギュラーが発生したときに冷静な対処ができるようにするには、時間に余裕を持たせてスケジュールを立てることが大事だと言える。
仮に「電話①→営業①→電話②→営業②」といった形で、同じ作業を違う時間帯に何度も行う状況だと切り替える場面が多くなり、作業に集中できなくなる恐れがある。したがって「電話①②→営業①②」といった形で、同じ時間帯に組み込むべきだ。
無茶をすると他の業務に支障をきたしてしまう。業務をストップさせたり、取引先に迷惑をかけたりなど、様々なパターンが想定できる。そのため、実現できる範囲で行わせた方がいい。実現できる範囲で行わせるには、以下のことを実践し社員のスキルを把握するといいだろう。
1対1で面談を行うと、社員の状況が分かってくる。得意分野や苦手分野、課題に感じていることなど幅広く質問するといいだろう。社員が話してくれるよう、良好な人間関係を築いておくことが大事だ。
情報を伝えないと、突然の変化に社員が戸惑う恐れがある。そのため、どのようなタイムマネジメントをしているのか情報共有することも必要だ。ちなみに情報共有のときは、以下のことを意識するといい。
情報共有を行うときは、ルールを設けることが大切だ。たとえば「5W1Hを意識する」、「客観的事実をもとに伝える」といった形で決めておくと、質の高い情報共有ができる。
情報共有の目的は必要な情報を伝え、会社の利益を増やすことだ。よって、その目的に関係ない情報は伝えるべきではない。情報によっては、社員を混乱させてしまう恐れもある。したがって、相手の立場に合わせて情報を伝えることを忘れてはならない。
普段から無駄を記録しておけば、どの工程を改善すればいいかが分かってくる。「〇〇の業務で△△の業務が余計だった」「〇〇の業務は時間がかかりすぎている」といった形で記録しておけば、タイムマネジメントに役立つはずだ。ちなみに記録するときの注意点は以下の通りだ。
たとえば夜にまとめて記録しようとすると、記入漏れが発生するかもしれない。漏れがない状況で記録するためにも、気付いたときに記録すべきだ。
過去の無駄を振り返ると、何度も発生している無駄が把握でき、効果の出やすいタイムマネジメントの仕方が分かってくる。よって記録するだけではなく、定期的に見直すことも大事だ。
社員にタイムマネジメントを習得させると、チームの業務が円滑に進んだり、社員の管理が楽になったりして、仕事に取り組みやすくなる。以下のステップに沿って業務の見直しをさせると、タイムマネジメントの習得につながるだろう。
内容によって対処の仕方が異なるため、事前準備をしっかりと行うことが大事になる。なおタイムマネジメントでは、下記のポイントも抑えておくべきだ。
上記のことを実践すれば、タイムマネジメントのときに役立つはずだ。
なお、タイムマネジメント研修を受けてもらうことで、これらをまとめて身に付けてもらうことも可能だ。これを読んでいる方が管理職であれば労務管理研修もおすうめだ。ぜひリンク先より内容を確認してほしい。
現代では働き方が変わったり労働人口が減ったりしているため、タイムマネジメントは必要な能力だと言える。チームの業務が捗るようにしたい方は、タイムマネジメントを習得させることに力を入れていただければと思う。