近年、日本の労働環境に大きな変化が起きていることに伴い、人々の仕事に対する価値観も変化しており、目標に対する考え方も複雑化してきた。そこで、いま「コーチング」が企業の人材育成の手法として注目されている。
今回は、コーチングとは何か、活用する際のメリット・デメリット、効果的な活用法をご紹介する。
コーチングとは相手に教えるだけではない。相手の話に耳を傾け、ときに提案などを相手の内面の答えを目標達成のために引き出す手法を指す。
ビジネスにおけるコーチングは対象になる社員の自主性を引き出しつつ、可能性を引き出すことでなければならない。
ビジネスにおける「コーチングの定義」とは、対象者の可能性やメリット部分を最大限に引き出し、目標達成に向けてモチベーション上げていく手法を指す。
コーチングの特徴は、「対象者の自発性を引き出す」ことにある。目標達成に向け、アドバイスやときに並走しながら対話を続けることで、対象者が実力やそれ以上のモチベーションを発揮できる状態に導くことで成長につながる。課題に対する答えは相手の中に必ずあるため、コーチングはその答えを見つけさせるためのパートナーでなければならない。
コーチングとティーチングの違いについても触れておこう。コーチングとティーチングでは、コミュニケーション手法に違いがある。
ティーチングとは、指導者がスキルや知識を教えることだ。つまり先生と生徒のような関係を指し、一方的なコミュニケーションがメインとなる。
一方のコーチングでは、「並走する関係」だ。つまり、双方向の対話によって対象者から答えを引き出すスタイルだ。その答えで自己成長を見出していくものとなっている。
相手との関係性や必要なコミュニケーションスキルは『カウンセラー』とも共通している。
※参考:コーチングとカウンセラーの違いは?共通点や両方に活かせる資格を解説
モチベーションが上がり、個人の成長を促すことができるコーチングだが、効果はビジネスの場合も多くある。メリット、ビジネスでのマネジメント成功効果についてみていこう。
ビジネスにおけるコーチングのメリットは、答えを導き出す能力が身につくことや、主体性を持って物事に取り組めること、モチベーションの向上が期待できることなどがあげられる。
ただし気を付けてほしいのは即効果を求めないことだ。
コーチングの手法をビジネスで用いる場合は、目的によっては効果が出るまでに時間がかかることもある。また相手によっては理解度があるかないかで大きく効果の度合いが変わってくるため向き不向きが出てくる。またコーチングは大勢を一度でこなすことができない1on1的な手法のためある程度じっくり、定期的に行うことが大事になってくる。
コーチング技術について鍛錬していないマネージャーが現場でコーチングすると現場は、混乱するため鍛錬を積んだ管理者が行うことが大切だ。
コーチングを行う際の基本は「答えを教えないこと」そして、その答えを自分自身の中から引き出すことだ。目標が定まっていない、意欲がない、目標を達成するだけの能力がない場合もコーチングは時間がかかりすぎ、無駄になってしまうため、コーチングに向いている案件なのかは事前にしっかりと見極めることだ。
「コーチング」は、相手の話に耳を傾け、状況をきちんと把握することがまずは大切だ。
プロセスを見ていこう。
大事なことはコーチングの目的を明確化することだ。そして相手に対しても、その目的を達成するための道をきちんと一緒にやっていこうという体制をつくっていくことだ。
目的を達成するための明確な現状把握も大切だ。現状把握がしなければ目的を達成するためのプロセスも組み込むこともできない。
メンティーの従業員の行動把握と自身の評価も挙げておこう。それをどうやって導いていくかがコーチングのため、分析の基盤になる。
コーチングのなかでは定期的な面談が必要となる。次の面談までに行動をどうしたかということを把握できなければいけないため行動計画表でわかるようにしておこう。
行動計画通りにいかなくても、なぜいかなかったのかを分析し次に本人がどうすべきかを考えるフォローアップをしていこう。ここがコーチングの大事な部分となる。
コーチングに必要なスキルというのが、もちろんある。必要なスキルをコーチング研修などで学んだり、磨いたりすることでコーチングする側も成長できることとなる。
コーチングスキルで一番大切なのは押し付けではなく、相手の話を聞くことだ。相槌などを踏まえながらまずは、相手の話を聞く姿勢を学ぼう。傾聴とは、「相手の話を深部まで聴くこと」だ。
否定をするのではなく、なぜそうなのか、どうしたいのかというように相手の答えを引き出すように質問をしていこう。そこから発展するプロセスは問題点も見つかりやすい。
相手の努力やプロセスはいったん認めてあげることが大切だ。それを皮切りに相手がモチベーションを上げていけるきっかけになるからだ。否定するのではなく、こういう方向もあるね、というように認めながら軌道修正するのひとつの方法だろう。
人は褒められると人は褒められた行為をまた繰り返したくなるもののため、その心理も応用しよう。
コーチングを職場で実践する場合、 部下との信頼関係があることが前提となる。ありのままの部下を知ろうという気持ちから信頼関係が構築される。
自分から積極的に関わる姿勢を持つことが信頼関係を築く。自らコミュニケーションを取るようにし、協働関係を保とう。部下が相談しやすい環境や雰囲気作りをすること。言葉に出すべきことはきちんと出そう。
「限られた時間の中で、コミュニケーションをとる」という目的のもと、まずは部下を知ろうとすることだ。部下のことを見ない、一方的なコミュニケーションをしないことが大事だ。部下の中で答えがないものを一緒に考えていくことで信頼関係が生まれる。
働き方改革によって時間の制約が厳しくなっている場合は、相手に合わせたコミュニケーションも有効となる。
自身で本を読んでいても、コーチングを一人で身に付けることは難しいものがある。なぜなら他者との会話の中で、相手から話を引き出す手法であるためだ。
コーチング研修などを受けることでスキルを身に付け、強化することができる。ぜひ参考にしてほしい。
コーチングの勉強をするにあたって様々な資格もあるため覚えておき、機会があれば受講や資格習得をするのもおすすめだ。
世界最大規模の国際コーチ連盟のコーチング資格だ。国際資格のため取得すると海外においても資格が通用する。どのようなコーチになることを目指すのか、その目的によって、取得の種類は異なるが、下記の3種類がある。
・アソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)
・プロフェッショナル・サーティファイド・コーチ(PCC)
・マスター認定コーチ(MCC)
コーチングの普及・発展を目的とした日本コーチ連盟の資格だ。格の発行のほか、コーチング技能養成校「コーチアカデミー」の運営や検定試験を運営しており、下記の資格が取得できる。
・コーチ資格
・インストラクター資格
上記のように、コーチとして活躍するための資格(コーチ資格)、 コーチングの技能を教授するインストラクター資格という、2種類の資格があるようにコーチングでも種類によって、目的によって取得を考えるとよいだろう。
一般財団法人生涯学習開発財団のコーチング資格は文部科学省所管の一般財団法人生涯学習開発財団の資格だ。これは、コーチングだけでなく、生涯学習全般に関する情報提供や推進が行われている財団だ。
認定コーチ、認定プロフェッショナルコーチ、認定マスターコーチに分かれており3種類の資格を取得する、受験資格を得るには実践経験も必要という現場ですぐに役立てるような資格となっている。
ここでコーチングの成功事例を見ていこう。
もっと社内の中を風通しよくオープンにすることでお互いを信頼しあえる楽しい職場づくりにしたいということでコーチングを導入。リーダー陣やマネージャー陣に向けてコーチングの導入プログラムを遂行してくと、質問の仕方を意識しながら相手の考えを引き出すという思考の癖付けが可能となり、それぞれの社員が感じる問題や思ったことをきちんと伝えられる雰囲気への変化が見られるようになった。そして、以前と比べると、社内の風通しが少しずつよくなってきているという。
マネージャー層の意識改革と組織力向上が目的でコーチングを始める。研修対象者は本部の課長代理および、販売店舗のブロックマネージャー・エリアマネジャーにしたそうだ。導入プログラム・研修を経て、エリアごとに実践すると最後まで相手の意向を聞こうとする姿勢から、面談の質があがりエリアごとの従業員の悩みや解決手段を見出しやすくなったという。また、メンバーとの信頼関係が強くなり、意欲的に仕事に取り組む指導につながっている。
人材育成の手法として、注目する企業が増えているコーチングについて述べてみた。これからの企業はコーチングの理論をきちんと持っているマネジメント層が不可欠になるだろう。企業としても本腰を入れて、学ばせていかなくては企業の成長はないかもしれない。