「10年後にはこの人と同じようになりたい」とか、こんな風に働きたいと思う人に出会ったことはあるだろうか。
ロールモデルとは自分が目指すべき肖像を身近な人に見出して成長するようなしくみのことだ。現在の企業社員に聞くと、このようなモデルを持っているという社員が少ないことが分かった。ロールモデルがいる、いない企業では成長力に差が出ることもわかっている。なぜだろうか。
そこで、今回はその「ロールモデル」の設定方法や、効果などについて詳しく解説していく。
目次
ロールモデルとは、自分の行動や考え方など、キャリア形成の上でお手本になる人を指す。「こんな人になりたい」と思うような人がお手本で身近にいたら、仕事にやりがいが出る。ロールモデルには、自らが習得したい能力を具体的に持っている人を選ぶと自分と企業の成長につながるのだ。
企業でもロールモデルが注目されている。1つ目の理由は、ロールモデルが「具体的な目標」と分かりやすくなるからだ。なんとなくの目標と違い、的が絞れるので何をすべきかプランを立てやすくなる。
「なりたい自分」は具体的であるほど、イメージを描きやすく行動パターンもしやすいのだ。身近な人の場合は質問やヒアリングをできるのでなおさら良い。このようなきっかけが企業の中ではコミュニケーションが円滑になり、仕事効率も上がる。
ロールモデルを設定することで、その人物と自分を良い意味で比較するようになる。自分を客観視する機会が増えれば、自分自身の課題と向き合うことができるだろう。自分を客観視できるようになると、成長速度もアップする。
同じ職場の先輩や上司をロールモデルに設定すれば、キャリアプランが立てやすくなる。身近な存在であればあるほど、ロールモデルの考え方や行動を詳しく理解でき、習得すべきスキルなどが具体的にイメージできるようになるだろう。
憧れの上司など、身近な人をロールモデルにすることで成長の速度が高まることが期待できる。ロールモデルとなる人物と自分の現状を比べることで、目標設定ができるためだ。
ロールモデルがあることで現時点での問題が意識づけされ、成長につながっていくと考えられる。
ロールモデルに近づくためにその人物と積極的にコミュニケーションをとることで、考え方やスキルを吸収し、一人ひとりのコミュニケーションが活発になり主体性が生まれれば、組織の雰囲気も良くなるだろう。
ロールモデルの設定は、離職者を減らす効果も期待できる。社員にロールモデルを設定させることで、身近な先輩や上司を参考にしやすくなり、アドバイスを求めやすくなる。そして、社員がキャリアプランをイメージできるようになれば、離職という選択をなくすことにつながるだろう。
身近にライフイベントをこなしてきたロールモデルがいれば、女性社員は勇気づけられ、それをお手本にするだろう。育児と仕事を両立している人をロールモデル設定にすることで女性のリーダー育成がしやすい環境となる。
どんな人がロールモデルになるのだろうか。自分の理想とする、真似したいと思うような人がロールモデルの要件となる。特に、身近にいる人がおすすめだ。成長するために刺激になる人も要件の一つだ。
新入社員は、上司や先輩からの指示で動くことが多いため、優秀な作業者であることが求められる。特に下記の点がロールモデルの要件として必要なポイントだ。
①先輩社員や上司から出される指示を的確に理解できる
②相手からの指示や問いかけに対して、自分の意見を的確に伝えられる
③計画に対して予定通りの成果を挙げられる
④業務知識を積極的に吸収できる
⑤自己成長のチャンスを探して積極的に仕事を引き受ける
人は、成長過程でさまざまなロールモデルに出会い、成長を刺激する存在がいることが大事なのだ。ロールモデルに影響を受けて、皆同じように成長していくのだ。
中堅社員になると社会人の基本は当たり前なので、決まった目標をきちんとこなせる社員をロールモデルにするとよい。また応用が利く面なども必要だ。特に下記の点が中堅社員のロールモデルの要件として必要なポイントだ。
①発言内容から問題や課題、リスクに至るまで整理できる
②推進案とその理由を端的に述べられる
③効率的に取り組める
④会議の事前調整や当日の仕切りができる
⑤自主的に学びを得ようとする
ベテラン社員は責任ある地位に就くことも多くなるため、組織全体を活性化させるのに、理想とする人物とコミュニケーションを密にとり、行動のパターンを学び取ろう。そこで、特に下記の点が管理職のロールモデルの要件として必要なポイントだ。
①相手の真意を引き出すためにサポートできる
②議論に加わっていなかった相手に、現状と改善目標、過去の経緯を含めた大筋を端的に説明し、理解を促すことができる
③会議参加者の主体性を促す進行が可能
④チーム全体の作業効率を高められる
⑤コミュニケーションネットワークを広げている
企業がロールモデルを活用するためのステップを紹介する。
まずロールモデルを年代や部門などそれぞれのキャリアごとに分けて設定するロールモデルはその立場により異なるため、会社が求めるロールモデルをキャリア別に設定する必要がある。
・スキル面
・キャリア面
・ワークライフバランス面
など、会社の人材として望ましいかたちを思い描くようにしよう。
企業は計画的にロールモデルとなり得る人材を育成する必要がある。集合研修などを利用して下記の方法を用いて育成すると良い。
・計画的な異動や配置
・リーダーシップやマネジメントに関する外部研修への参加
・個別にメンターをつける
ロールモデルとなる人物が設定できたら、その存在の周知を実施する。会社によって、ロールモデルになり得る人物がいながら、その存在が社内全体に十分に知られていないこともある。そうすると、ロールモデルの役割を果たせない。そのためにも、広く社員に周知することが重要だ。
「キャリアが想像できない」という問題を露出させないためにもロールモデルはこの問題を解決する糸口として設定しよう。
ロールモデルの仕事の仕方を観察・分析したら、実際に模倣することで、徐々に行動のパターンが身についていく。その際に重要なのは、真似だけでなく行動の理由を考えることと、行動を振り返って生かすことだ。ロールモデルによって成長した人は、キャリアを理解しやすい。あとから続く人材の育成にも役立ち、社内が活気づく職場になるはずだ。
身近なロールモデルが職場にいることで、ビジョンやキャリアを描きやすい。必要なスキルや経験が「見える化」されることはロールモデルを取り入れる大きな利点だ。また組織の活性化も期待できる。主体的に業務に取り組むようになり、従業員同士のコミュニケーションが活発になることをきちんと分析していき、次に生かすようにせねばならない。
また女性社員の活躍にも役立つ。管理職を目指す女性や、出産後も働きたい女性は、経験者が身近にいることは安心感や刺激になる。結果、女性の離職率が低下し、女性が活躍できる企業を作ることができるようになる。これからは女性活用や仕事の多様化に対応するためのロールモデルも選別していかねばならなくなるはずだ。会社によっては国際的なロールモデルも必要になるかもしれない。
ロールモデルの行動特性を分析するためにまずは模倣するのが初期段階。漠然と「かっこいい」「素敵」ではなく、なぜそう思ったか、その根拠を考えさせるようにする。ロールモデルの具体的な行動ひとつひとつに目を向けさせることでロールモデルの行動特性を学び取ることにする。
ロールモデルの行動を実際に模倣し、次第にその行動の根拠なども理解し、行動パターンを習っていく。ロールモデルを身近な人物から選定し、その人物の行動特性を分析、行動を模倣して行動パターンを学ぶのは、さらなる知識やスキルを習得する殊にも大いに役立つ。
女性社員の「ロールモデルとして参考にできる先輩が近くにいない」という声を受け、先輩女性社員へのアンケートによるメッセージ集を作成し、若年時の階層別研修で配布したという。また、同研修では、自分のキャリアビジョンを考える時間も併せて提供した。
すると、これまでは漠然としていた「働く意義」が明確になったり、キャリアビジョンを明確にすることの重要性に気づくきっかけになったりとポジティブな反応が得られ、ロールモデルとなり得る先輩がいることに若手社員に気づいてもらうことで、自ら狭めていた活躍の場を広げるきっかけとなった。
社員個人の成長だけでなく組織を活性化するにもロールモデルの存在は必要不可欠だろう。
ロールモデルは企業が計画的に育成する必要がある。そのためには、まずは下記のポイントを意識してロールモデルとなる人材の育成をするといい。
・計画的な異動や配置
・リーダーシップやマネジメントに関する外部研修への参加
・個別にメンターをつける
また、個人でロールモデルを設定するときも、身近な人物からロールモデルを選定し、その人物の行動特性を分析、行動を模倣して行動パターンを学ぶのは、さらなる知識やスキルを習得するのに大いに役立つ。
もし身近でロールモデルの選定ができない場合は、会社の活性化や離職率が低くなることにつながるため、他社や同業で一目置かれている人なども視野に入れてみるといいかもしれない。