コミュニケーションスキルは、面接やプレゼンテーションの場面で特に重要となる。
面接官や聞き手が求めているのは、簡潔で構造的な情報伝達だ。そのため、効果的な情報の伝達法として「STAR法」が多くの人々に活用されている。特に面接の場面での自己PRや経験の説明において、STAR法は欠かせないツールと言えるだろう。
この記事では、STAR法の基本や活用例、さらには他の手法との違いについても触れていく。
STAR法は、具体的な経験や事例を明確かつ効果的に伝えるためのフレームワークだ。以下に各要素の概要とそのポイントを紹介する。
どのような背景やコンテキストでの出来事なのかを示す。
特定の状況を明確に描写することで、聞き手の理解を深める。
その状況で自分が担っていた役割や直面していた課題を明示する。
自分の責任や目的を明確にし、聞き手に課題の大きさや重要性を感じさせる。
課題に対する具体的なアプローチや手段を紹介する。
主体的な行動や意思決定の過程を強調し、解決への取り組みを伝える。
行動後の具体的な成果や結果を示す。
行動の後にどのような良い変化や達成があったのかを、具体的な数字や事実で伝える。
Situation:新しい商品の売上が伸び悩んでいました。
Task:その主な原因として、消費者の認知度の低さが挙げられました。
Action:ソーシャルメディアのキャンペーンを実施し、人気インフルエンサーとのコラボを計画しました。
Result:キャンペーンの結果、商品の認知度が向上し、売上が20%増加しました。
Situation:学生時代、サッカー部のキャプテンをしていました。
Task:チーム内の連携が不足していると感じていました。
Action:定期的な合宿を企画し、チームビルディングの活動を取り入れました。
Result:その取り組みの結果、チームの連携が大きく向上し、地区大会で優勝することができました。
Situation:開発途中のソフトウェアで大きなバグが見つかりました。
Task:リリースまでの期間が短い中での修正が必要でした。
Action:チームを再編成し、専門のデバッグチームを結成して、集中的に修正に取り組みました。
Result:予定通りの日程で、問題のないソフトウェアをリリースすることができました。
Situation:セミナーの企画を担当することになりました。
Task:参加者数の増加を目指していました。
Action:有名な講師を招待し、宣伝戦略を見直しました。
Result:その結果、前回のセミナーに比べて、参加者が50%増加しました。
以上の例文からもわかるように、STAR法は具体的な経験や事例を伝える際の有力なフレームワークだ。
状況や課題、行動、結果を明確に伝えることで、聞き手に情報をわかりやすく、具体的に伝えることができます。
これを活用することで、効果的なコミュニケーションが期待できます。
この章では、シチュエーション別に敢えて分かりづらい例文を用意し、STAR法を用いて改善をしてみる。
「昨年度、営業部の成績が良くなかったですが、色んな人と色々な方法を提案したり見直したりした結果、今年度は少し良くなりました。」
どのような改善施策を行ったのかが重要ですが、「色んな」「色々な」という言葉で片付けてしまいもったいないですね。
【S】昨年度、営業部の月平均売上は前年度比で10%減少していました。
【T】売上の低下要因を特定し、対策を考える必要がありました。
【A】営業メンバーとのミーティングを何度も行い、顧客ニーズに合わせた新しい提案方法を導入し、顧客のフォローアップ方法も見直しました。
【R】これらの取り組みのおかげで、半年後には売上が前年度比で15%アップし、営業部の成績は大幅に回復しました。
とても具体的になり、説得力のある内容になりました。
「社員の離職率が高かったので、色々な方法を試して、何とか下げるよう、とても努力をしました。努力の結果、離職率は低下しました。」
【S】昨年度の終わりに、当社の離職率は業界平均を10%上回っていました。
【T】離職率を下げるための原因分析と解決策の策定が必要でした。
【A】アンケートを実施して社員の不満点を明らかにし、福利厚生の見直しやキャリアサポートの強化を行いました。
【R】これらの取り組みにより、半年後の離職率は業界平均を5%下回る結果となりました。
離職率を業界平均と比較することで、高かったことがわかりやすくなり、具体的な施策内容も分かります。
「マネージャーとして、社員の残業が多かったので、何とかして減らしました。しかも、売上に影響はありませんでした。」
【S】マネージャー就任時、チームの平均残業時間は月40時間で、売上は安定していました。
【T】売上をキープしたまま、社員の残業時間を減少させる必要がありました。
【A】タスクの優先順位を再評価し、非効率な業務を削減または自動化しました。定期的にミーティングを行い、作業の進行状況や障壁を共有し、問題解決に取り組みました。
【R】これらの取り組みの結果、3ヶ月後のチームの平均残業時間は月20時間へと半減しましたが、売上はキープされました。
BEFOREの文ですでに「売上をキープしたまま残業を減らした」ということは分かりましたが、AFTERの文ではどれくらい減らしたのか・どのような取り組みをしたのかが分かります。
STAR法を用いると、あいまいな記述や抽象的な説明から脱却し、具体的な事例や数字に基づく説明が可能だ。具体性が高まることで、説得力や信頼性が増す。
各要素(S, T, A, R)に分けることで、情報の整理や無駄な情報の排除が行える。ポイントを絞った伝え方ができ、相手に必要な情報だけを効果的に伝えられる。
状況、課題、行動、結果という順番で情報を伝えることで、自然なストーリーの流れが作れる。相手はその論理的な流れに沿って情報を頭に入れやすくなる。
STAR法を用いると、自らの経験や行動を明確に整理できる。これにより、何がうまくいったのか、どこに問題があったのかを明確にし、将来の自己改善のための材料として活用できる。
PREP法は、ポイント(Point)、理由(Reason)、例(Example)、ポイントの再確認(Point)の4つの要素から成る話法だ。意見や主張を明確に伝える際に使用されるフレームワークである。
参考:PREP法とは?ビフォーアフターで見る例文も紹介!「何言ってるの?」からの脱却
主に過去の経験や実績を構造的に伝える際に利用される。具体的な事例をベースに、どのような状況でどのような課題に直面し、どのような行動をとり、その結果何が得られたのかを明示的に示す。
ある主題や意見についての立場や考えを明確に伝えるためのフレームワークだ。ポイントを先に述べ、その後の理由や例で補足し、最後にポイントを再確認する。
実績や事実ベースの内容が中心。特定の出来事やプロジェクトに焦点を当て、具体的なアクションと結果を強調する。
意見や感想、提案が中心。理論や信念を述べ、それをサポートするための実例やエビデンスを用いる。
あるプロジェクトやタスクの成功例、問題解決の経緯などを伝える際にはSTAR法が適している。特に面接や評価の場面での実績の紹介に有効だ。
あるテーマや議題に対する自身の考えや見解、提案を伝える際にはPREP法が適切だ。会議やディスカッションでの意見発表、説得のシチュエーションなどで有効に使用できる。
両方の方法にはそれぞれの強みがあります。STAR法は経験や事例を具体的に伝える際の強力なツールです。一方、PREP法は自らの意見や考えを効果的に伝えるのに最適です。
適切な場面でそれぞれの方法を使い分けることで、コミュニケーションの質を向上させることができます。
STAR法は、具体的な事例や経験を伝える際の強力なツールとして認識されている。この手法は、事例の背景から取った行動、そしてその結果までを明確に整理し、相手に伝えることができる。特に、実績や経験の紹介が求められる場面、例えば面接や自己PRの際に、STAR法の適切な使用は極めて有効である。
なお、より自身で学びたい、もしくは部下や社員にプレゼン力を高めてほしいという場合、プレゼンテーション研修を実施することも良いだろう。
様々な場面で活用できるSTAR法をぜひ身に付けてほしい。