一生懸命働くのは良いが、無理をしすぎると心身ともに滅入る。社員に働き続けてもらうには、休息をとれる環境を作った方がいい。
それを解消するのに効果的なのが「休み方改革」だ。休み方改革に取り組めば、社員たちは休みをとりやすくなる。しかし正しく取り組まなければ、企業全体としての生産性が低下してしまうだろう。
本記事では休み方改革の概要を紹介しつつ、進めるときのポイントや取り組み事例などを解説する。
休み方改革とは、労働者が休みやすい状況を作る取り組みのことだ。女性や高齢者が社会進出する機会が増えてきたが、その一方、仕事とプライベートの両立が難しくなってきた。休息をとらないと、疲れを引きずってしまい仕事の質が低下する。社員たちのワークライフバランスを充実させるためにも「休み方改革」に取り組んだ方が良い。
働き方改革とは、働き方の改善をメインに取り組むことだ。「各社員の仕事量を調整する」「スムーズに仕事をこなせる状態を作る」といった形で、仕事の仕方を変えることを目的としている。
一方、休み方改革では社員が休める状況を作ることに力を入れている。「休日に仕事の電話をしない」「通常の休日とは別で休める日を設ける」といった形で、社員が休みを確保できる環境を整えていく。両者とも長時間労働を防止することを目的としているが、取り組み方が違うため両者は別物だと言える。
休み方改革が推進される背景は、健康で働ける状態を作るためだ。一昔前の日本では、残業をしている社員は良い評価を得られるケースが多かった。社員に「有休」を取得する権利が与えられても、上司に却下されるケースも珍しくなかった。
しかし、その結果「精神疾患」や「過労死」の増加を招いた。心身ともに滅入る社員を減らすためにも、国を挙げて休み方改革に取り組んでいる。
休み方改革のメリットは以下の通りだ。
休みがとれる環境を作りやすくなり、長時間労働を減らせる。仕事によるストレス軽減が期待でき、社員は健やかな心を手に入れやすくなる。結果、ワークライフバランスを整えるのに役立つ。
休み方改革が進めば、上司は部下からの休日申請を断りづらくなる。休みをとるのが簡単になり、プライベートを確保しやすくなる。
疲れが溜まった状態で働くと、仕事のミスを生み出す。それを解消するには、疲れが溜まりにくい環境を作るのが大切になる。そこで効果的なのが「休み方改革」だ。
休み方改革に取り組めば、仕事と休みのメリハリをつけやすくなる。疲れが溜まりにくくなり、仕事のパフォーマンスアップに役立つ。
良い休み方をして、リフレッシュの質を高められる効果もある。リフレッシュの質が高まれば、プライベートの質が高まっていく。それは社員たちの活力になり、活気のある職場に変わる。
休み方改革が社内に根付けば、休息をしっかりとれる。体力回復できる社員が増えるため、体調不良者の減少につながる。仮に体調不良者が0になれば、欠勤者の業務を他の社員が行わずに済む。そのため、欠員による業務効率の悪化を防ぐのに役立つ。
上司に業務の削減を提案しやすくなる理由は、労働時間の削減によって休みを確保しやすくなるからだ。業務の削減と休み方改革は大いに関係性がある。
しかし会社として休み方改革に取り組んでいるのに、上司が業務の削減を却下すると、会社から悪い評価を受ける恐れがある。従業員である以上、上司は業務の削減を行い、休みを確保しやすくなる環境を作らなければならない。以上のことより、業務の削減を提案するのが楽になると言える。
休み方改革に取り組むときはポイントがある。ここでは、ポイントを4つ紹介していく。
休み方改革を進めると言っても、仕事と休日のバランスによってとるべき対策は違う。肌感覚で経営陣や人事が取り組んでも、社内に浸透しない。効果的な対策を行うためにも、社員たちの休日状況を把握するのは大事だ。
休みをとれているか判断するときは、厚生労働省が運営しているサイト「働き方・休み方改善ポータルサイト」を活用するといい。現状把握や他企業の取り組みを閲覧できるため、最適な案を考えるのに役立つ。
各部署が目標を作れば、ゴール設定ができる。ゴールから逆算すれば、休み方改革の推進で必要な行動を決めやすい。ちなみに目標設定のときは、以下のことを意識するといい。
数字を用いて設定すべき理由は、ゴールや進捗度合いを明確にするためだ。たとえば「長時間労働を減らす」という目的だと、どのくらい減らすべきか分からない。
しかし「毎月の残業時間を30時間減らす」と設定すれば、進捗度合いが明確になる。その結果、社員たちは何をどのようにすべきか分かるため、成果を挙げやすい。よって目標設定のときに意識すべきだと言える。
実現可能な目標にすべき理由は、無理だと思われないためだ。ハードルが高い目標は、社員にとって高い壁に見える。取り組む前から「達成できない」という気持ちになり、社員たちのモチベーション低下を招く。最終的には、仕事の生産性ダウンにつながる。
しかし実現可能な目標にすれば、ゴールまでの道のりをイメージしやすい。その結果、意欲的に頑張る姿勢が身につく。モチベーションアップにつながるため、意識した方がいい。
たとえば「社員の労働時間が減った結果、管理職の業務量が大幅に増える」「業務時間が短くなった結果、取引先への対応がしづらくなった」など、業務に支障をきたす状態が起こると、労働環境は悪くなる。その結果、働き続けたいと思う社員が減っていく。退職者を増やさないためにも、社員の負担が大きくならない目標にすべきだ。
社員の休みを阻害している業務がないか調べれば、労働時間を減らすための対策ができる。結果、休息を確保しやすくなり、休み方改革に役立つ。ちなみに阻害している業務のチェックを行うときは、以下のことを行うと良い。
現状の業務を書き出せば、対処すべき箇所の抜け漏れを防げる。業務内容だけではなく、業務の所要時間も抜き出すといい。作業の精度を上げるのに役立つ。
ECRSとは業務改善のときに使われるフレームワークだ。それぞれの頭文字をとってつけられた。以下の順番で対処すると良い。
Eとは「Eliminate」のことで、排除を意味する。無駄な業務を取り除き、タスクを減らしていく。不要な業務や惰性で行っている業務がないか調べるといいだろう。
Cとは「Combine」のことで、結合を意味する。複数の業務をまとめることでタスクを減らす。意味もなく工程が分かれたり、複数の社員で行ったりしている業務を中心に調べるといいだろう。
Rとは「Rearrange」のことで、交換を意味する。タスクの順番を入れ替えることで、業務の効率化につながる。待機時間が発生したり、手持ち無沙汰になったりする箇所を中心に行うといいだろう。
Sとは「Simplify」のことで、簡素化を意味する。業務内容をシンプルにして、作業時間を減らす。たとえば「10ある工程を5にする」「タスクの一部を外部に委託する」というのが該当する。
休み方改革に取り組んでも、机上の空論になっては意味がない。実現するには、社員たちが休める環境を作っていくことが大事だ。たとえば、以下の方法がある。
休み方改革の概要を提示すれば、その内容を見て社員たちは行動していく。自然と社内に休みを確保する流れができていき、休みをとりやすくなる。
上司がしっかりと休みをとれば、部下も休もうとする。全ての部下に根付けば、上司に気遣わず休める職場になる。
休みを取らざるを得ない状態を作るのも大切だ。たとえば「部内における年間の休日が〇日以下だと評価が下がる」という指標を設ければ、上司は自分の評価を下げまいと、部下に休むように促す。
この文化が根付けば、社内に休みをとっていく流れができる。結果、休める環境を作りやすくなる。
休み方改革を進めるために、政府では様々な施策を設けている。最後に施策の具体例を紹介していく。
キッズウィークとは学校の長期休暇を分散化させて、親と子供が一緒に過ごせる時間を作る施策のことだ。自治体が学校の夏休みや冬休みの一部を別の月に振り替えることで、親と子供が過ごせる時間を作り出す。それを理由に、親が休みやすい環境を作るのが目的となっている。
自治体の中には、キッズウィークによって親が休日をとれるように、イベントを実施するケースもあるようだ。
プラスワン休暇とは、土日と平日を組み合わせて長い休暇をとる取り組みのことを指す。平日出勤の企業であれば、金曜を休暇にして「金土日」の3連休にするイメージだ。この制度を活用すると、休日が増えて遠出がしやすくなる。プライベートの充実度が上がり、休み方改革につながる。
前もって有給休暇の日を決めさせて、有休をとらざるを得ない状況を作る制度のことだ。この制度があれば確実に休みがとれるため、プライベートの確保に役立つ。
ゆう活とは、夕方以降の時間帯を有効活用するための取り組みだ。朝の早い内から働き始め、夕方以降は仕事以外に時間を使うことを促している。外食をする方もいれば、スキルアップのために習い事をする方もいる。ライフスタイルを充実させるのに役立つ。
休息をとらないと、疲れが溜まり仕事に支障をきたす。その状態を作らない意味で「働き方改革」を進めるのは重要だ。働き方改革を進めれば、社員は休日を確保しやすくなる。長時間残業や休日出勤が多かった社員も、プライベートを充実させることが可能だ。
ただし休み方改革を推進するときには、いくつかのポイントがある。
上記の取り組みを行えば、休みの重要さが社内に広がるため、休み方改革を進めやすくなる。ちなみに休み方改革の取り組みは、国や自治体、企業など様々な場所で行われており、様々な施策が存在する。取り組みの事例は以下の通りだ。
上記の施策を導入すれば、社員の休みを確保するだけではなく、会社の生産性を上げる効果も期待できる。そのため、会社に良い影響をもたらすだろう。社員たちが快適に働ける職場作りを行うためにも、休み方改革を進めていただきたい。