インバスケットという言葉を聞いたことがあるだろうか?インバスケットとは、まだ決裁がされていない書類が入った「未処理箱」のことである。
一般的にビジネスで用いられる場合は、架空の人物となり、制限時間内にできるだけ多くの案件を処理するワークのことを指す。
本記事では、インバスケットとは何かというところからその活用方法まで紹介していく。研修や勉強会テーマとして取り扱いたい方はぜひ参考にしてほしい。
インバスケット研修とは、架空の登場人物になり、業務上起こりうる未処理タスクを制限時間にできるだけ多く処理していくというものだ。
もともとインバスケット(未処理箱)に入っている案件を処理していく、という意味でつけられたといわれている。
近年では、企業に所属する管理職向けに「一定の時間に適切に業務をこなせるか」「適切なマネジメントや部下への仕事の割り振り、指示ができるか」を測るものビジネス研修としてよく使われている。
インバスケット研修などを実施することで、強化できるスキルは以下の通りだ。
架空の業務ではあるが、インバスケットで与えられる業務は何かしら問題が発生している。取引先とのトラブルや部下からの退職の相談など、多岐にわたるものだ。それらに優先順位を立てつつ、問題の本質となる原因は何かを即座に分析し、対応策を考える力が強化される。
普段の業務で無意識に行っている方も多い部分ではあるが、研修や勉強会という形で架空の事例で考えることにより、問題解決における参加者それぞれの癖や改善点を洗い出すことができる。(例:自身の経験に基づく方法論ばかり出してしまい、原因分析ができていないことがわかるなど)
インバスケットには必ず時間制限がある。(例:◯分以内に1~9の事例を対処してくださいなど)時間内に即座に適切な判断を下していかなければ処理しきれない量が手元にくるため、判断力が強化される。また、こちらも上記と同じく「自身の判断における問題点・改善点」を洗い出すことができる。普段、判断した後にそれを振り返る機会は少ないため自身の癖に気づく良い機会となるだろう。
管理職などマネジメント層には、全体の流れや複数の案件との関連性を把握し対応する力が必要だ。個別最適ではなく全体最適になるための観察力・洞察力が強化されることもインバスケットの特徴だ。一つひとつの業務だけではなく、関連したものは無いか・事例1に対応したら事例4への影響や配慮は必要ないかなどを実践的に学ぶことができる。
インバスケットをすることで行動の変革・改善が行え、幅広い可能性を企業にもたらすことが期待される。自らの弱点に気付くことができ、効果的に行動することができるようになることは企業の組織力を上げることにつながるためだ。
インバスケット思考では、2つ重要な指標がある。優先順位を付けることと完璧な正解を求めないことだ。
複数のタスクが並行する場合、適切にまた迅速に処理するためには優先順位をつける必要がある。その際、緊急性と重要性のバランスで考えることがポイントだ。
インバスケットは「どういった結果を出したか」ではなく「どのようにして導いたか」のプロセスを重要視としているため、完璧な正解ではなく、結果につながるより良いプロセスを第一に考える必要がある。
例えば、以下のような案件が同時に重なった場合はどう処理するかを考えてみよう。
1.新規案件の見積もりの依頼の確認
2.顧客からの苦情の連絡対応
3.1時間後に迫った商談書類の最終確認
回答例としては、まず優先順位を分ける必要がある。緊急性が高く重要なのは「顧客からの苦情の連絡対応」だろう。まず顧客対応が先、次に書類の最終確認、最後は新規案件として処理をするプロセスの測定だ。
インバスケット思考は試験としても使える。どういったものがあるのか見ていこう。
受験者が、案件処理の判断・行動を回答するもの。 自由に回答を記入するのが基本。また例題に沿って、メール文を作る場合もある。文章での表現力やコミュニケーション能も判断されることが多い。
現在就いている職種や職位の設定とは異なるシチュエーションが用意されていることが多い場面シーンの対応法でのトレーニング。ある特定の受験者に優位になることを避けるため、まったく異なるシチュエーションでどう対処するかというものだ。
大きく2つのポイントを下記に紹介しよう。
計画的に案件処理を進めるためにも時間配分の徹底が大切になってくる。トレーニングによっては、資料を見ながら答えたりするものも多くあるので案件と照らし合わせて使用すると、時間が意外とかかったりする。ポイントを箇条書きにし、資料内容をまとめておくなどトレーニングの中で意識、工夫することが必要になる。
求められている関連案件が全く違う答えになってしまったり、聞かれている案件が複雑に思えてしまってはプロセスも組み立てられなくなる。総合的に解決する能力をつけるため多くのパターンをこなしてみること。
後に重要な案件が隠れていたり、関連している案件が出てくる文面もあるので注意する。「重要度」と「緊急度」を軸に優先順位をつけて取り組む基本は変わらない。
本記事では、インバスケットとは何かというところから、どのような流れで進み何が身に付くのかまで解説してきた。
人によって強化すべきポイントや企業として補強したいポイントがあるだろう。必要な効果を得るために、繰り返しトレーニングすることが重要となる。なにより、参加者が意欲的に行うことができる研修を心掛けなければ何のメリットも生まれてこないので、興味を持たせて主体性を持たせてインバスケットを行うことが必要だ。
なお、自社での実施が難しい場合、インバスケット研修など、社外の研修会社を活用することも一つの手だ。本記事を作成したリスキルも研修を提供している。ぜひ参考にしてほしい。