作業の無駄を放置すると、チームの成果は挙げるのに苦労する。それを解消するには、組織全体で作業の効率化を行った方が良い。実現できれば社員達は働きやすくなり、モチベーションアップにもつながる。また、案件に優先度をつけ、目標とする時間、アウトプットを意識することで、効率よく業務に取り組めるようになる。
そこで今回は、作業の効率化を組織全体で実施する方法を中心に解説していく。
現在日本では働き方改革が推し進められ、働き方に大きな変化が起きている。しかし、「労働時間を短くする」だけで、業務のボリュームが減るわけではない。つまり何の施策もなしに、これまで通りの成果を上げることは困難となるため、「作業効率を上げて労働時間を短くする」必要がある。
働き手1人あたりが成果を出す上での作業効率を数値化したものを「労働生産性」と呼び、労働生産性の値が高ければ高いほど、生産性が高いとされる。
次に作業効率化のメリットについて説明する。
「無駄」な作業をなくすことで、作業におけるコストが削減できる。例えば、古い習慣によって残るタスクや残業、休日出勤などがだ。これらの無駄につながる作業は、従業員の負担になり、コストの削減は負担の削減にもつながる。
コスト削減によって残業や休日出勤が削減され、働きやすい環境が整えば、従業員のモチベーション向上にもつながり、モチベーションが上がれば、従業員定着率や満足度の向上が期待できる。
作業効率の向上によって空いた時間やコストを、更なる業務改善や新規事業に充てることができる。また、新規事業にリソースを割けると、生産性の向上や成果物のクオリティ向上、組織強化につながる。
ここでは、作業の効率化を実現させるために必要な3つのことを紹介する。
仕事への取り組み方を見直すと、業務のこなし方が変わる。結果、作業の効率化へつながっていく。なお取り組み方を見直すときは、以下のことを意識すると良い。
目的を明確にしながら仕事をしないと、何も考えずに業務をこなすクセがつく。すると作業の中で問題点があっても、気づかずにスルーしてしまう。
しかし目的を明確にすれば、見直せる箇所がないか意識しながら業務をこなす。その結果、改善ポイントに気付きやすくなり、見直しの質を上げる効果が期待できる。
時間がないのにも関わらず、全ての項目を強引に見直そうとすると、見落としが起こりやすくなる。よって見直す項目が多い場合は、作業の重要度や優先度を考えることが大事だ。
重要度・優先度が高いものから順に行えば、一気に見直そうとすることはなくなる。見直す順番を決めやすくなるため、作業も捗るはずだ。
仕事の手間を減らせる方法がないか考えるのも重要だ。この視点を持って見直せば、作業の効率化を実現するアイデアを見つけやすい。「チームが楽できる方法はないか」という視点で探すといいだろう。
5Sとは「整理、整頓、清掃、清潔、躾」のことだ。5Sを意識した行動をすると、自然と無駄が見えてくる。余計な作業が何かわかるため、作業の効率化につながる。なお5Sを意識した行動では、下記の内容を実践した方が良い。
5Sを意識した行動によって作業の無駄を炙り出した後は、ECRSの原則を意識した行動をとると良い。ECRSの原則とは改善時に用いられるフレームワークのことだ。以下4つの工程に沿って作業を進めていく。
最初に取り組むのは排除だ。不要なタスクを失くすことで、作業の効率を上げていく。4種類の中で最も手間がかからず実行しやすい。
ちなみに、この記事を書いているリスキルという研修会社に業務効率化研修のメニューがある。そこでもECRSの原則について学ぶことができるが、Eliminate(除去する)を最重要としている。
2番目に行うのは結合と分離だ。結合とは複数のタスクを1つにまとめることだ。作業を集中させることで無駄なオペレーションが減る場面などで有効となる。一方、分離とは1つのタスクを複数に分けることだ。分散させることで、作業を進めやすくなる場合において有効だ。
結合と分離を効果的に使えば、担当者が作業しやすい状態をつくれる。よって、社内の業務スピードを上げる効果が期待できる。
3番目に行うのが、入れ替えや代替だ。作業の順序を変えたり、他の社員を作業に充てたりする作業が該当する。業務をコンパクトにすることで、取り組みやすくするのが目的だ。
簡素化とは、業務をあるべき姿に変えることだ。業務の現状を分析し、理想の業務体制をイメージしながら最適な状態へ持っていく。たとえば「頻度が高いタスクは、最適な回数まで減らす」「作業の範囲が広い場合は、適切な範囲に絞る」というように簡素化していく。
簡素化すれば、無茶な体制で業務を進める機会が減る。そのため、残業や休日出勤を減らすのにも役立つ。
ECRSの原則についてはこちらのコラムでも詳しく解説している。→ECRSの原則とは?具体例も多数紹介!業務最適化をもう一歩先へ。
様々な視点で無駄がないか見つけていくことも大切だ。無駄の一例として、以下のものがある。
作業中の動作には無駄が多く潜んでいる。「3つの工程で済む作業を5つの工程で行っている」「無駄にチェックの時間が多い」と言った形で、様々な視点から無駄を探してみるといいだろう。
待ったことによって発生する損失も無駄だ。「上司から指示されないから何もしない」「作業終了後の確認時間がやたら長い」「書類を印刷するときの待ち時間も積み重なると地味に長い」というのは、待ちによる損失だと言える。
※参考:【総務担当者必見】仕事効率化を進める第一歩はプリンター選びから|インク革命
余計なコストが発生したり、利益を獲得するチャンスを失ったりするため、待ちによる損失は減らした方が良い。
不良品の大量発生も、材料費や制作時間が余計に発生しているため無駄だ。ロス率の計算を行ったり、不良品の発生個数を調べたりして、大量発生していないか調べるといいだろう。
たとえば消費者が求めていないにも関わらず高品質な商品をつくる行為は、売上に直結していないため、無駄な行為である可能性が高い。予算に見合った品質のものを提供することを心掛けるべきだ。
仕事の標準化とは、誰にでも仕事ができる状態をつくることだ。以下のステップに沿って、標準化するための仕組みをつくると良い。
標準化する業務の見える化を行う。業務の見える化とは、社員達に業務の内容が見えるようにすることだ。業務風景を見せたり、業務時に使用されているルールブックを共有したりして、業務の概要が分かるようにしていく。
業務を標準化する工程では、無駄なものを省くことが大事だ。余計なフローが入っている状態で標準化すると、社員達の業務効率が上がらなくなる。社員達がスムーズに業務を進められる環境を整えるためにも、無駄をなくしてから標準化するべきだ。
標準化した業務は、多くの社員がこなせるようにしなければならない。しかし対象者1人1人に口頭で説明すると、大量の時間を割いてしまう。その作業を効率的に行うためにも、マニュアルを作った方が良い。
マニュアルに業務の概要を載せれば、誰かに教わらなくても学習できる。上司は指導時間が削れるため、別の業務に時間が割ける。その状態をつくることで、業務効率化へつながっていく。ちなみにマニュアルを作るときは、以下のことを意識すると良い。
マニュアルが存在しても、社員が理解できなければ意味がない。したがって、対象の社員が理解できる言葉を使うことが大事だ。
手順を記載して、分かりやすいマニュアルを作るのも大事だ。たとえば「ステップ⓵:〇〇、ステップ⓶:〇〇」という流れで明記すれば、どのように業務を進めるべきか理解しやすい。時系列に沿って記載するのがコツだ。
ツールやテンプレートを使って、標準化した作業を簡略化することも大事だ。簡略化していない状態だと、手間がかかってしまい作業を完了させるまでに時間がかかってしまう。余計な時間をとらないためにも、ツールやテンプレートで簡略化しておくことが重要だ。
業務効率化の外部ツールを使ってみるのも良いだろう。無料で試せる業務効率化ツール(ミロジャパン)もある。
社員間でやり取りする時間が少ない場合は、定期的に情報共有の時間を設けると良い。たとえばチームメンバーで毎週1時間、情報共有をするだけでも各社員のインプット量は増える。
強みを活かせる環境をつくれば、社員達の作業は捗る。それが作業の効率化へつながっていく。強みを活かせる環境をつくるには、以下のことを実践すると良い。
社員のスキルや経験・性格を考慮して、人員を配置すべきだ。たとえば強みを活かせる部署に配属されれば、その社員は強みを活かせる。逆に強みを活かせない部署に配属されると、自分の持ち味を活かせなくなり、作業の効率化も期待できない。
誤った配置をすると、部下の可能性を潰してしまう。その状態を起こさないためにも、適材適所を考えながら配置すべきだ。
業務標準化研修やタイムマネジメント研修など、細かい部分に特化した内容でも良い。研修を通して身に付けてほしいスキルや考え方を明確にした上で、社内もしくは社外研修会社を探し始めよう。
これまで人間が行っていた業務をシステムが代行するなどできれば、人間はより本質的な仕事に集中できるだろう。単なる時短ではなく、ミスを減らすことも出来たらより総合的な業務効率化が期待できる。
業務効率化ツールは数多く存在するが、幅広い業種・職種で活用できそうなツールがこちらのコラムでまとめられているので、合わせて読んでみてほしい。→業務効率化ツールおすすめ15選!選び方も紹介(プログラミングスクール「SAMURAI ENGINEER」)
作業の効率化を組織全体で行うと社内の生産性が上がって、無駄な費用を抑えたり企業の利益をアップさせたりできる。よって、作業の効率化は会社にとって必須だ。
しかし作業の効率化を行おうと思っても、正しい手順を踏まないと効率化させるのは難しい。以下の取り組みを実施することで、作業を効率化できる。
上記の3つを実施すれば、作業の効率化はしやすい。効果を挙げることができれば、無駄な業務に時間を割かずに済む。その結果チームとして新しいことに挑戦したり、別の業務に時間を注いだりできる。業務の中に無駄な作業があっても、普段の業務に忙殺されていると改善まで手が回らない。それが常態化すると、仕事を頑張っても、成果を挙げづらい状態ができてしまう。
作業の効率化は、仕事のクオリティを上げるうえで大事な作業だ。チームとしての生産性アップを目指すためにも、作業の効率化を意識した行動をとっていただきたい。