管理職に必要なスキルの一つが「職場マネジメント」と言われるものです。職場マネジメントとは、誰もが働きやすい職場環境を整えることです。
適切なワークライフバランスを保った状態で働いてもらうためには、長時間労働や業務の偏り、人間関係悪化による職場環境の悪化は未然に防止する必要があります。
本記事では、管理職の方向けに「誰もが働きやすい職場にするためにはどうすれば良いか」をポイントを押さえて解説していきます。
職場マネジメントを実施する理由は、以下のメリットがあるためです。チーム全体で成果を上げていくという管理職の役割を果たすためにも実施していくことが求められます。
職場マネジメントをすることで、心理的安全性のある職場となります。心理的安全性とは、職場においてメンバー一人ひとりが自身の意見や気持ちを自由に伝えることができる状態のことを指します。
心理的安全性は優秀なチームに共通する特徴とも言われるものです。知識や情報が共有されなかったり、発言をしたら叱られるのではないかといった環境では安心して仕事に向き合うことができません。管理職として職場マネジメントを行うことで、誰もが発言しやすく働きやすい環境を整えることができ、成果を上げやすいチーム作りにつながります。
職場マネジメントにより心理的安全性のある職場になることで、自由な発言や意見の交換がよくされるようになります。そうすることでより良いアイディアが出やすくなり、チーム全体のパフォーマンスも上がりやすくなります。
成功例や失敗例などの情報も共有されるため、お客様やユーザーにとってより良いサービスや商品の提供ができるようになり、組織全体としての評価も高まることが期待できます。
職場マネジメントが適切にされていない状態だと、成功したことは各自が溜め込み、失敗は隠されてしまうということが多くクレームや大きな被害につながり兼ねません。リスクマネジメントの側面からも、職場マネジメントには大きなメリットがあると言えます。
誰もが働きやすい職場では、自然とチームメンバーのモチベーションが高まります。メンバー同士での適切なコミュニケーションや管理職からの成長につながるフィードバックなどにより「成長している」「このチームに必要とされている」「自分の強みが活かせている」と感じやすくなります。
チームはメンバー一人ひとりの存在によって成り立つものです。もちろん、メンバー自身でモチベーションを高く維持する努力はしてもらいつつも、管理職としてモチベーションが下がらないような職場づくりをすることが必要です。
メリットの多い職場マネジメントですが、今日実施して明日からすぐに効果が出るというものではありません。ステップを踏んで徐々に進めていくものです。ここからは、具体的なステップと押さえておきたいポイントを解説します。
まずは、管理するチームの現状を把握します。
心理的安全性がある職場かどうかをチェックします。確認方法は様々ですが、ここでは4つの不安をメンバーが抱えていないかを客観的に見ていく方法を取り上げます。
心理的安全性がない職場には、以下4つの不安が発生します。これらが自身のチームにないかを確認することで改善点を洗い出します。
次に、メンバー個人によって業務量の偏りがないかを確認します。チームメンバーそれぞれが抱える業務を書き出すことで偏りを確認できます。難しい場合はメンバーにアンケートを取る方法もありますが、メンバー自身すべての業務を把握していない場合もありますので管理職側で行うことがおすすめです。
もし、数人に業務や責任の偏りがある場合は、適切な業務分担や人員配置を検討する必要があります。
上記以外でよく挙がる問題として、人間関係があります。性格的にどうしても合わないという部分はしかたがないものもありますが、「全員が同じ目標に向かって協力できているか」「それを阻害しているような関係がないか」という視点で見ると良いでしょう。
もちろん、管理職側に見えない部分で人間関係のトラブルが発生している場合もあります。問題が発生してからでは遅いため、気軽に困ったことを話せる雰囲気づくりや管理職との面談の機会を定期的に設けるなど、機会の提供をすることも必要です。
現状把握をした上で、次に行うことは「どのような職場を目指すか」という目標設定です。できるだけ明確に文章化できると良いでしょう。
現状と目標を決めたら、そのギャップを埋めるために何をしていけば良いかを考えます。多くの問題が出てきた場合は「問題を解決することで得られる効果」を考えた上で優先順位を付けて実施していきましょう。よくある問題と施策としては以下の通りです。
チームメンバー内での競争ではなく、助け合えるような環境を作ります。ミスや知らないことがあるのは当然であるという認識をチーム内に共有し、お互い支え合いながら仕事を進める姿を推奨します。
もちろん、何度言ってもわからない場合などはメンバー個人に問題がありますが、基本的なスタンスとして「助け合う」という考え方を浸透させると良いでしょう。
具体的には、まずは管理職から部下へコミュニケーションを取りにいくということです。上司自ら助ける・支える・問題を解決するという姿勢を見せることで、メンバーへと浸透していきます。
ある程度の失敗は次への成長につながります。失敗を恐れて行動しないチームは成果を上げることが難しくなります。失敗に対しては原因を分析し、次同じ間違いをしないように指導したら終わりという形で対応します(顧客や関係者への謝罪などは必要)
ダイバーシティという言葉が浸透してきた現代社会において、働き方や考え方・価値観は多様化しています。チーム全体で多様性を受け入れるようにしましょう。具体的には、まず管理職自らが多様性を受け入れる姿勢を見せることです。相手の声に耳を傾け、違いを理解し分かろうという姿勢で部下と接することが良いでしょう。
上司が相手の価値観や違いに対して理解しようと歩み寄ってくれることは、部下にとってはとてもありがたいことです。部下が多い場合には少しずつにはなりますが実施することがおすすめです。
チームメンバー同士の信頼を強化するためには、おおよそでも構いませんので「誰が何の仕事をしているか」が常に見える状態にします。隣の席の人が何をしているのかよくわからない状態では、助け合うことやコミュニケーションを取ることも難しくなり、信頼関係の構築は遅くなります。
手法としては、Googleカレンダーに業務タスクを書き込んでもらいチーム内で共有するなど簡単なもので構いません。他には、朝礼で今日のタスクを共有したり、ホワイトボードに書き込むなどでも良いでしょう。なお、業務が視覚化できるアプリやツールなどがあれば活用していくと効果的です。
職場環境や人間関係に不安を覚えていても、誰に相談して良いかわからない場合や言い出せないというメンバーがいる場合があります。定期的に部下と1on1ミーティングや面談を実施するなど、機会を管理職側から設けることも一つの手段です。
管理職側にはコーチングスキルや面談スキルを身に付けてもらい、部下の言いたいことや考えが引き出せるようにします。スパンとしては1~2ヶ月に1回程度の実施が理想ですが、部下の人数や繁忙期は避けるなど柔軟な対応で実施ていきましょう。なお、「いつか実施する」という形では忘れてしまいますので、あらかじめいつ行うのかスケジュールを決めておくことが推奨です。
上記の通り、職場マネジメントをしていくためには様々なスキルが必要です。ここからは、職場マネジメントをスムーズに進めていくために活用できるリソースをいくつかご紹介します。
チームメンバーの業務を可視化するツールのことです。有料で契約できるアプリもありますが、WBSやガントチャートなどをExcelで作成するだけでも良いでしょう。
国から出ている成功事例も活用できるリソースの一つです。職場マネジメント事例集(内閣府)など、様々なデータがあります。他社の事例をそのまま取り入れることは難しいものがありますが、一部だけ活用するなど参考にしてくことはできます。ぜひ利用していきましょう。
職場マネジメントをしていく管理職に向けて研修を実施することです。本記事でも扱った通り、職場をマネジメントしていくためには様々なスキルが必要となります。
管理職研修、チームビルディング研修、コミュニケーション研修、コーチング研修、1on1ミーティング力強化研修 などが必要なスキルを身に付けるための研修の一例です。
独学で学ぶことも良いですが、同じ企業や組織の管理職を集めて学ぶことも重要です。ぜひ検討してみてください。
本記事では、管理職の方向けに「誰もが働きやすい職場にするためにはどうすれば良いか」をポイントを押さえて解説しました。
職場環境はすぐに変わるものではなく、少しずつ段階的に変わっていくものです。誰もが働きやすい職場にするために、現状を把握した上でできることは何かを考えるところから始めてみましょう。