「アンコンシャスバイアス」は一般的に、無意識の思い込みや偏見を意味する言葉だ。
誰もが持っているアンコンシャスバイアスは、職場に悪影響をおよぼす可能性が高いという。
今回の記事ではアンコンシャスバイアスについて理解を深め、自分も職場のメンバーもより良い環境で働くためのポイントを確認していく。
職場にネガティブな作用をもたらすアンコンシャスバイアスだが、それ自体は悪くないようだ。誤解がないようにまず定義を確認しておこう。
アンコンシャスバイアスは無自覚に偏った見方をしてしまうことだ。物事を自分が知っている属性に当てはめる脳の機能ともいえる。
大量の情報を素早く処理することにくわえ、目前の対象に危険がないか大まかに判断している。
とはいえイメージだけが先行してしまい、事実にそぐわない場合もある。
根拠なく「きっとこうだ」と決めつける癖が、アンコンシャスバイアスといえるだろう。 こちらの記事では具体例・事例を多数紹介されているので、是非あわせて読んでみてほしい。
→【アンコンシャスバイアスとは】具体例や対策方法などを解説
アンコンシャスバイアスが発生してしまう理由は以下の通りだ。
誰かに共感してほしいという思いは、アンコンシャスバイアスを発生させる。
自分の感情をわかってくれる人がいる環境は居心地が良い。それゆえ身近な人には一方的に共感を求めるものだ。
誰しも喜びは分かち合いたいし、悲しみは誰かに話して軽減したい。
しかし価値観が違う人に自分の感情を理解してもらうには、お互いの努力が必要だ。
アンコンシャスバイアスは、従来の習慣が原因となる場合もある。
人間の行動は90%以上が無意識だという。 一連の動作に意思の力が必要ないため心理的ストレスも少ない。
過去の経験で培われた「そうしないと気が済まない」習慣は、面倒な作業も迷いなく実行できる。
だが臨機応変さが求められる環境では、自分にとって当たり前の習慣が周囲の迷惑になることもある。
自分を守りたいという思いは、ネガティブなアンコンシャスバイアスを発生しやすい。
誰もが自分をよく見せたい。しかしその考えは、脅威となる相手を攻撃することにつながる。
例えば「レッテル貼り」などの決めつけは、自分が優位に立つための行為だ。
つまりアンコンシャスバイアスは、危険や脅威から自分を守るための本能的反応といえる。
「自分ならできる」というポジティブな自信からも、アンコンシャスバイアスは生まれる。
不安ながらも未知の問題を解決するためには、確固たる自信が必要だ。
「そんなはずはない」「すべて想定の範囲内だ」という先入観は、自信があるからこそ生まれる。
しかしそのポジティブさは、裏を返すと都合の悪い情報を軽視することでもある。過信はミス・トラブルを起こしやすい。
外部要因とは、企業を取り巻く環境の変化だ。社会の動向とアンコンシャスバイアスは関係が深い。
技術革新・顧客のニーズ・法律など、コントロールできない時代の流れは人々の価値観を一変させる。
特に「コロナ」「災害」「物価上昇」など、インパクトのある出来事はメディアを通して印象付けられるものだ。
ただし、メディア特有の誇張表現によって事実を誤認してしまう人も多い。
自然発生するアンコンシャスバイアスは、大きな問題に発展する前に気づくことが重要だ。
自分自身のバイアスに気づくための方法の一つは「世の中にどのようなバイアスが存在するか」を理解することだ。
その種類は数百あるといわれるが、まずは以下のよくある型を理解しておくことが望ましい。
アンコンシャスバイアスの一例
その他職場で発生しやすい偏見については、アンコンシャスバイアス研修で理解を深めることも一つの手段だ。バイアスの種類はこちらの記事でも詳しく紹介されている。
→ アンコンシャスバイアスとは|具体例で知る要因と改善方法、バイアスとの違い | 株式会社サイカ-XICA
アンコンシャスバイアスに気づくには、自分が置かれている立場と逆の視点を持つことが重要だ
人は「自分本位」なものだ。自分が見えている範囲でしか考え行動することができない。
「企業と消費者」「上司と部下」「男性と女性」など、立場によって見方が違うのは当然だ。
自分と真逆の価値観で物事を見てみると、自分本位の言動に気づくことができる。
アンコンシャスバイアスに気づくためには、不確かな情報に注意する必要がある。
信頼性が高い情報であっても、発信する人の主観が入るケースもある。なにごとも盲信するのは危険だ。
「誰かが言っていた」などの、出どころの分からない情報に振り回されるケースも多い。
自分の目で確認・検証するまでは、どんな情報もいったん疑うことが重要だ。
先入観にとらわれない思考法を学ぶのも、アンコンシャスバイアスに気づく方法の一つだ。
まっさらな状態から発想する「ゼロベース思考」というものがある。前提条件を見直す考え方だ。
既存ルールや一般常識は、裏付けがないのに真実と思われているケースも多い。そもそも前提条件が間違っているケースも考えられる。
常識を疑う思考を学ぶと、「こうあるべき」と勝手に思い込んでいる自分を俯瞰で見ることができる。
アンコンシャスバイアス研修で、自分の固定概念を見直すことも考えたい。
無意識に生まれる概念を自分で気づくのは難しい。研修では自身の思考パターンを多くの事例と照合できる。
アンコンシャスバイアスが起こりにくい伝え方や受け取り方を、トレーニングによって習得することがポイントだ。
多くの社員が同時にアンコンシャスバイアスを学ぶ機会があれば、職場で意識合わせもしやすくなるだろう。
職場メンバー同士がアンコンシャスバイアスに気づき対処することで、以下のようなメリットが生まれる。
社員がアンコンシャスバイアスに上手く対処できるようになれば、職場の風通しがよくなる。
「風通しの良い職場」は、情報の透明性が高く社内のコミュニケーションが活発で雰囲気も明るい。
意見交換や情報共有がスムーズに行われるため、問題解決のアイデアが出やすいのが特徴だ。
役職・年齢・立場に関わらず、それぞれが主体性を持って活き活きと働くことができるだろう。
アンコンシャスバイアスに対処する雰囲気が職場に根付くと、ハラスメントを未然に防ぐことができる。
「もしかするとネガティブに受け取られるかも」という相手への配慮が、不用意な言動を抑制するからだ。
「そんなつもりはなかった」「喜ぶと思っていた」など、相手との認識のズレがハラスメントになるケースも多い。
アンコンシャスバイアスの存在を正しく理解している人が増えれば、ハラスメント行為は激減するはずだ。
アンコンシャスバイアスに対処する力を身に付けることができれば、職場の生産性は向上する。
お互いの偏見を考慮したコミュニケーションを心がけることは、必然的に他のビジネススキルも磨くからだ。
組織内で解釈のズレをコントロールできれば、働きやすい職場になり生産性も向上する。
アンコンシャスバイアスは自己防衛本能なので致し方ないことだ。しかし、相手を傷つけないよう努力することはできる。
自らの平穏を保とうとする言動が、知らないうちに職場の人間関係を悪化させているかもしれないことを意識すべきだろう。
仕事の生産性に人間関係が大きく影響することは否めない。偏見をコントロールして風通しの良い職場づくりを目指したいところだ。
アンコンシャスバイアスと上手く付き合うには、誰もが自分を守るための偏見を持っていることを知る必要がある。