現代では様々な企業で「コンプライアンス」という言葉が使われている。コンプライアンス違反は企業や組織へのマイナス効果しか生み出さないため、適切に予防策を立て実行していく必要がある。
本記事では、コンプライアンスとは何か・何に気をつけるべきかを改めて認識してもらうために、基本的な解説と7つの項目から違反事例を紹介する。
コンプライアンスとは、企業が法律や社内のルールを守りながら、倫理観を脅かさずに経営することを指す。
日本語で直訳すると「法令順守」となる。ただし、法令だけ守っていればいいわけではない。大切なのは上にあるように「倫理観」だ。
コンプライアンスを説明するときにわかりやすいのは、「その行為は新聞の一面に載っても大丈夫か?」という質問を問いかけることだ。
それが仮に法令違反にならなくとも、その行為が新聞の一面に載って嬉しくないと思う場合(他の人に知られたくないと思う場合)、コンプライアンス違反をしていると思ってよいだろう。
コンプライアンス違反を起こすと様々な悪い影響が発生する。具体的には以下の通りだ。
悪い口コミが広まり企業としての社会的信用をなくす。社会的信用を失くしてしまうと、このようなことが起こる。
場合によっては業務に支障を与え、本来の仕事ができなくなってしまうため社内での不満も溜まりやすくなるだろう。実際、コンプライアンス違反が広まったある会社では、クレームの電話が止まらなくなり、退職者が続出した。
企業のブランド力が落ちてしまい売り上げの減少など、業績悪化の要因となる。上場企業では利益が大幅に減ると、不安に思った株主が株を売却し、株価が下がる。
長期的にはブランドが落ちることのデメリットが大きく、一度落ちたブランドはそうそう戻らない。ブランドを作るのには10年かかるが、崩すのには一瞬だ。
状況が悪い場合には、企業の倒産も視野に入ってきてしまう。また、売却などが行われてしまうケースもある。
企業によっては数十万人単位の失業者を出してしまう。
ここではコンプライアンス違反が起こる原因として、2つ紹介する。
不正行為を起こしやすい企業も存在する。
従業員の一部がコンプライアンス違反するケースもあれば、組織ぐるみで行うケースもある。
従業員が誰も注意しなかったり、従業員の管理が行き届いていなかったりする企業だと、コンプライアンス違反が起きやすいので注意が必要だ。
社内にコンプライアンスの知識を持つ従業員がいない場合、気付かぬうちに違反してしまう恐れがある。
外部から専門家を呼ぶか、コンプライアンス研修を社内・社外いずれかで実施するかの選択をして、コンプライアンスに関する知識を全社員に浸透させていくべきだ。
コンプライアンスの違反事例と言っても、様々な種類がある。ここでは7種類の項目に絞って、違反事例を紹介する。
不正会計とは、会計処理の内容を改ざんすることだ。決算書の金額を故意に変えたり、売上額を水増ししたりなど様々なパターンがある。
証券取引等監視委員会が調査をしたところ、実際よりも2300億円以上の利益を水増ししたことが問題となった。
これは内部通報によって問題が発覚し、調査へと発展した。結果、20億円を超える課徴金の支払いと新規契約に関する業務を3カ月ストップさせることになった。
電子機器メーカーが巨額の損失を隠し続け、多額の負債を不正に処理した事例だ。刑事裁判では、事件に関与した前経営陣3人の有罪が確定し、594億円の賠償金が支払われる事件となった。
製品の内容や、製品を紹介するにあたって引用するデータなどを偽装するのもコンプライアンス違反だ。これらの偽装は製品に直接影響することが多いので、消費者離れにつながる。
とある食品メーカーでは内部告発によって、牛ミンチと書かれているのにも関わらず豚を混ぜて販売していたことが分かった。
1980年代から偽装を行っていたことが分かり、携わった経営陣4人が逮捕される事件となった。
とあるお菓子メーカーでは、観光客向けに販売していたお土産の賞味期限を改ざんしていたことが分かった。発覚後は一時、工場での製造・販売が禁止となる。
その後、保健所などが立ち入り検査を行われ、数か月後に販売が再開された。
鉄鋼メーカーでは、アルミや銅を使った製品を購入した方に送っていた証明書のデータを、一部改ざんしていることが分かった。
その他にも、航空機のエンジンや部品などを不正検査していたことも発覚した。
虚偽の報告をして、国や地方公共団体などから補助金や支援金などを不正受給するのもコンプライアンス違反だ。
場合によっては、不正受給した企業名が地方公共団体の公式サイト内にて公表されるため、企業のブランドダウンになりかねない。
なかには専門家が不正受給を指南したケースも存在する。
福島県に工場を新設し、産業復興企業立地補助金を不正受給した事例だ。申請時にウソの情報を載せたことが分かり、福島県や南相馬市から返還を求められた。
その後、業績が悪化し2017年に倒産した。
介護施設を運用している企業が、介護報酬を不正受給した事例だ。従業員数の水増しなどを行って、本来よりも多い金額の介護報酬を受け取った。
不正受給が発覚した後は、介護報酬受給対象外の施設となり、最終的には破産することになった。
士業が企業に対し不正受給を指南して、手間賃をもらう事例も存在する。
たとえば持続化給付金関連では、税理士が企業に対して不正受給のアドバイスをして逮捕されたケースも複数あるようだ。
また雇用調整助成金関連では、社労士が不正に受け取るためのアドバイスを企業にして逮捕される事例も発生している。
労働に関するコンプライアンス違反も少なくない。従業員が弱くなっている立場を悪用し、無理矢理働かせる企業も存在するようだ。
なかには働けなくなったり引きこもったりして、社会人として活動できなくなる方もいるようだ。
とある大手広告代理店では、長時間残業を強要したことが問題となった。
従業員の中には明け方まで残業をし、うつ病を発症した方もいる。
広告業界の闇が見えることになった事件だと言えるだろう。
某大学の教授が自身の研究室に出勤していた派遣職員に対して、パワハラが行われた事例だ。
自身の優位性を悪用して「派遣契約を更新するか迷っている」など、派遣社員から見て脅しとも捉えられる発言があったそうだ。
加害者は、停職4ヶ月となっている。
企業が管理していた個人情報が流出してしまうのも、重大なコンプライアンス違反だ。
企業の管理不足で情報漏洩してしまうケースもあれば、システム管理を任せていた委託先が原因となり、情報漏洩となるケースもある。
通信教材などのサービスを行っていた教育出版会社では、3000万件近くの個人情報漏洩が発覚した。
起こった理由は、従業員のデータ持ち出しによるものだった。
加害者は自身の借金を返済するのに、登録されている情報を販売していたために、大規模な情報漏洩につながった。
該当した顧客には、授業料の減額が行われたそうだ。
国内大規模のIT企業が運営するシステムの情報が、外部からの不正アクセスによって漏洩した事例もある。
漏洩した情報の中には、国土交通省、総務省関連のデータも入っており、国家を巻き込むニュースとなった。
著作権侵害とは著作権が守られている作品を盗用したり、無許可で引用したりすることなどを指す。絵や音楽、出版物など様々なものが該当する。
Youtubeに違法動画を載せて配信する行為は、著作権侵害に該当する。
Youtube側で発見された場合、削除をしているものの、全ての動画が削除されているわけではない。そのためイタチごっこの状態になっている。
著作権が保護されているマンガの違法アップロードも著作権侵害に該当する。過去には、海賊版のマンガが読めるサイトを運用し、逮捕される事件もあった。
購入を検討している消費者を迷わせたり誤解を与えたりする広告を載せると景品表示法違反となる。
「優良誤認表示」、「有利誤認表示」、「その他の誤認表示」に分かれており、いずかに該当するとコンプライアンス違反になってしまう。
ネット通販でおせち料理を販売していたが、値段が安くなったように見せかけたり、実際の料理とは違う内容の写真が載っていたりして問題となった。
家電製品の広告に書いてある謳い文句に、誇大広告があるとして景品表示法違反になった例もある。消費者に誤解を与える表現をしたとして、行政指導が入った。
掃除機や電球など様々な製品で報告されている。
ダイエット効果の根拠がない健康食品であるにも関わらず、広告にダイエット効果があるような文言を載せて、読者に誤解を与えた事例もある。
画像を加工して痩せたように見える写真を貼ったり、病気が治ったと思わせる文言を載せたりなど、様々なパターンで違法行為が行われた。
万が一コンプライアンス違反が起こったときは、正しく対処することが大事だ。ここでは対処法を3つ紹介する。
迅速に対応すると被害を最小限に抑えやすいからだ。対応が遅いと、以下の状況が生まれてしまう。
対応が遅れると、社内外に迷惑をかけてしまう。会社を守る意味でも、スピーディーさは大切だ。
どんな対策を立てたか、公式サイトやSNSで積極的に情報発信をすることも大事だ。
情報発信をすればコンプライアンス違反が発覚した後に、何かしらの行動をとったことが伝わる。
企業のとった行動を具体的に載せれば、真摯な対応をしたとみなされブランド力の低下を防げるかもしれない。
逆に情報発信が0だと、全く行動をしない企業だと思われ、消費者からのイメージが悪くなる恐れがある。
それを防ぐためにも、逐一報告しながら情報発信を行おう。
コンプライアンス違反に携わった関係者に、重い処分を下せばいいわけではない。なぜなら、人によって適した処分方法は異なるからだ。
処分の仕方を間違えると、このようなことが起こるかもしれない。
感情的になって、勢いのみに任せて処分をするのは良くない。だからこそ関係者の処分は慎重に行うことが大事だ。
組織図を見たり、今後の事業展開を考えたりしながら決めよう。
コンプライアンスとは何か解説しながら、違反事例について紹介した。ちなみにコンプライアンスを違反する理由は以下の通りだ。
職場の環境やコンプライアンスに関する知識を持つ従業員がいるかによって、違反の起こりやすさは大きく変わる。
しかし、ひと口にコンプライアンスの違反事例と言っても色々とある。コンプライアンスの違反の内容によっては、地方自治体などのホームページ上で公表される。
社内でコンプライアンスのことを共有し、違反が起こらない仕組みを作ってみてはいかがだろうか。
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