クレームはビジネスを行う上で避けられないものだ。人が仕事を行う以上、なんらかのミスはどんな優秀な人材を集めても必ず発生する。また対応に間違いがなかったとしても、人がサービスや商品を提供される以上、感じ方に違いがありクレームは発生するものだ。
一方で、受けたクレームへの対応については適切なものを身に付けておきたい。
本記事では、クレーム対応の5つの手順を紹介しながら、クレームを更に大きくしてしまうNG行動についても解説する。
クレームが発生する根本の原因は、「顧客満足」が満たされない「顧客不満足」だ。
「思っていたよりも悪かった」「(悪い意味で)期待を裏切られた」などお客様の想定外のことが起こると、クレームも増加傾向にある。したがって、お客様の満足以上のことをする必要がある。
ひと口にクレームと言っても、様々な種類がある。ここでは代表的なクレームを4種類紹介する。
種類 | 内容 |
---|---|
商品に対するクレーム | 商品に不満を持たれたときに発生するクレームだ。「思った商品と違う」「商品が壊れている」「商品の使い方が分からない」といったものが該当する。 |
人に対するクレーム | 従業員へ不満を持たれたときに、発生するクレームだ。「接客の態度が悪かった」「質問に答えてくれなかった」「面倒くさそうな態度をとられた」といったものが該当する。 |
会社のサービスに対するクレーム | 会社のサービスに、不満を持たれたときに発生するクレームもある。「アフターサービスが悪い」「顧客に対するサービス精神がなさすぎる」といったものが該当する。 |
お客様の勘違いによるクレーム | お客様の勘違いによって、クレームが発生することもある。「正しい金額を支払っていたのに、お釣りをもらっていないと言い出す」「商品が故障していると言っていたが、実は電源が入っていなかっただけ」といったものが該当する。 |
ここからはクレーム対応の手順を紹介する。具体的には以下の通りだ。
クレーム応対で何より優先することは、相手の話をひたすら聴くことだ。その後、相手の身になって考えることが大事だ。ステップ①では、以下7つのことに気を付けよう。
「申し訳ございません」だけでは、何に対して謝罪しているか伝わらない。
形式上、謝っているだけに見えてしまうことがあるため、「謝罪の理由+謝罪」で伝えることが大事だ。これを部分謝罪という。
「ご不便をおかけし、申し訳ございませんでした」、「時間がない中でお電話をくださり、申し訳ございませんでした」といった形だ。すると謝っている気持ちが伝わる。
時間がもったいないからと言って、早く終わらせようとする雰囲気を出してはいけない。自分の言い分を聞いてほしいという想いで、クレームを言ってくる方もいるため、最後まで聞くことが重要だ。
話している内容に応じて、声のトーンを調整することも大事だ。お客様が神妙な気持ちになっているときは声を低くして、明るい話題になったら声を高くするといったイメージだ。状況に合わせて声のトーンを変えることで、お客様の気分を侵害する確率も減らせる。
特に、お互いの表情が見えない状況でやり取りするときは、「えぇ」「はい」と声に出しながら、あいづちを打った方がいい。理由は、あいづちを打っていることに気付いてもらうためだ。
あいづちを打っていないと思われると、真剣に話を聞いていないと誤解される場合がある。話を聞いていることをアピールするためにも、声を出しながらあいづちを打つべきだ。
相手が話している途中で割り込むと、怒りを助長する恐れがある。そのため、お客様が話し終わるまでは、自分の話をしてはいけない。
会話のテンポを相手に合わせることも大事だ。自分のテンポで話すと、お客様が会話の内容についていけなくなる恐れがあるため、お客様によって変えた方がいい。
「もし自身がお客様の立場だったら、どのような気持ちになるか」を考え、お客様に良い沿った言葉を伝えよう。
このフェーズをふむことで、次の最も重要な事実確認で、相手に話をしてもらう・こちらの話を聞いてもらうベースを整えることができる。
クレームに至った理由やお客様と意見の相違が起こっていないか確認するため、聞き取りを行う。その後、自分なりにまとめて、お客様に内容が合っているか確認するステップとなっている。ステップ②で気を付けることは以下の3通りだ。
質問をしながら記録しておけば、聞き取り後に話をまとめやすくなる。時系列で書くなど、自分が見やすいようにまとめるのがコツだ。
質問が長いとお客様を余計イライラさせる原因になるため、簡潔に質問をすべきだ。一問一答形式で質問をすると、お客様も答えやすくなる。
クッション言葉とは相手へトゲを与えないために、要件の前につける言葉のことだ。たとえば、お客様に教えてほしい旨を伝える場合は「差し支えなければ(クッション言葉)」+「お教えいただけませんでしょうか」という形になる。
「お教えいただけませんか」のみだとストレートに伝わってしまい、きつい言葉だと感じる場合がある。表現を和らげるために、クッション言葉が存在すると思っていただけるといい。
店側の都合ではなく、お客様の都合に合わせて解決策を提示する。提示するときは、以下2つのことを意識した方がいい。
誠意を見せた行動をとるときは、良識の範囲内で行うことが重要だ。度を越えた内容の誠意を見せると、噂が広まってしまい他の方にクレームをつけられる恐れがあるためだ。
難しい言葉を使って解決策を伝えても、お客様は理解できない。勝手に話を進めると「そんなはずじゃなかったのに」、「あのときは何となくOKした」と言われるかもしれない。
お客様に納得してもらうためにも、分かりやすい言葉で伝えるべきだ。専門用語や横文字の言葉をできるだけ使わずに話すといい。
再度お詫びをするときは、クレームを伝えてくれたことや時間をいただいたことに対して感謝を伝えよう。
クレームを言ったお客様の中には再びリピーターになってくれるケースがあるため、謝罪後も丁寧に対応すべきだ。
クレーム対応が終わったら、内容をまとめてデータベース化し社内で共有する。繰り返していけばクレームの傾向が分かるようになって、予防策も立てやすくなる。
クレーム対応の注意点は、以下の6通りだ。
クレーム対応の中で不手際が生じると、さらなるクレームを生み出してしまい、問題が大きくなってしまう。そのため、お客様を怒らせないよう慎重に対応することが大切だ。
仮に会社側に落ち度がないとしても「そうだったのですね」「ご不便をおかけし申し訳ございません」と言って、お客様を否定しないことも重要だ。逆なですると、問題が複雑化するため気を付けた方がいい。
お客様を待たせるのも、イライラさせる原因になる。たとえば電話越しでクレームを言われているときに、自分だけでは解決策が分からない場合は「確認しますので、後ほどご連絡してもよろしいでしょうか」と言って、一度会話を終わらせた方がいい。
なお、折り返し連絡する旨を伝えるときは、何時ごろに連絡するか話しておこう。
お客様に攻撃的な言葉を使うと、会社側から責められている印象を与えてしまい、問題を大きくしてしまう。そのため、攻撃的な言葉は使うべきではない。
雑音が入ってしまうと、お互いの声が聞き取りづらくなり、コミュニケーションをとるのが難しくなる。クレーム対応をするときは周囲の雑音が入らない場所で行い、お互い聞き取りやすい場所で話すことが大事だ。
お客様の不満の内容を、個人的に受け止める必要はまったくない。不満はあなた自身に向けられているのではなく、あくまで提供した製品やサービスに対して不満
や意見を持っているだけだ。
受話器越しにお客様からいきなり怒鳴られると、身がすくんだり、逆にムッとして攻撃的な口調になってしまったりする場合がありますが、そのような反応は問題を悪化させるだけだ。常に冷静沈着に対応するものだと心に念じておくといい。
最後にクレームを減らすコツを3つ確認する。
クレーム対応の担当者によってクオリティが変わると、クレーム対応全体の質を上げられなくなってしまう。
クレーム対応するメンバーに、最低限のクオリティを発揮させるためにもマニュアルの作成は有効だ。なおマニュアル作成のポイントは以下の3通りだ。
マニュアルのテーマを決めなければ、どのような内容にすべきか定まらない。たとえば「クレームをなくすためのマニュアル」と「リピーターを失わないためのマニュアル」では、載せる内容が違ってくる。マニュアルの中身に統一感を持たせるためにも、テーマを決めることは大事だ。
どのような方が見るかイメージしながら、マニュアルの内容を作ることも忘れてはならない。なぜなら、人によって理解度が違うからだ。
マニュアルの質が良くても理解してもらえなければ、マニュアルとしての機能を果たさない。マニュアルを読む方のことを想像しながら、言葉の言い回し方や表現方法を考えた方がいい。
図を使う理由はマニュアルを見たときに、理解しやすくするためだ。表や楕円形や四角形の形をした図形・矢印など様々な図を使えば、読んだときに分かりやすくなる。テキストのみだと理解するまでに時間がかかってしまうため、図を差し込んでいくといい。
社内でクレームが起こった原因や対策法を考えると、新たなアイデアが出てくる。そのためクレームの減少につながる。社内で考えさせるときは、以下の2つ方法が効果的だ。
大人数で話し合うディスカッション形式もいい。数十人から数百人が集まって、議題に対する意見を言っていくイメージだ。
グループで原因や解決策を考えてもらう方法で、グループごとの意見を聞くことができる。大勢の方に見られているわけではないため、意見も言いやすい。
どの種類のクレームが多いか分析をし、件数が多いクレームに関する対応策を考えて対処すれば、必然的にクレームの数は減っていく。クレームの種類が多い順に対応策を考えていけば、件数の減りも速くなるはずだ。
その他の方法として、クレーム対応研修などを開催し、受講してもらうことが挙げられる。研修を通して普段の対応を振り返り、対応のロールプレイングなどでスキルを磨くことができる。
なお、ハードクレーム対応研修などもおすすめだ。自社で困っている課題や社員二身に付けてもらいたいものを明確にした上で、適切な内容で実施していきたい。
クレーム対応によって、お客様の怒りの静まり方が変わる。クレームを伝えた後も、リピーターとして商品を購入してくださる方もいるため、クレーム対応の正しい手順を覚えるべきだ。
本記事内で紹介したポイントを抑えながら手順を踏んでいくと、クレーム対応もスムーズだ。
クレームはビジネスを行う上で避けられないものだ。クレームの処理を円滑に行うためにも、関係する方に教えていただければと思う。