明確で簡潔な文章は、伝えたい情報を読者に直接的に伝えることができる。一方で、文章力が乏しい場合やまわりくどい表現が多い場合、読み手側に上手くメッセージが伝わらない。
本コラムでは、「文章力」の向上を目指す皆様に向けて、一部の文章を改善する例をご紹介する。具体的な例文を挙げつつ、その前後で何が変わったのか、どのような観点で改善が図られたのかを明らかにしく。また、その過程を通じて、読者の皆様が自分自身の文章を見直し、より良い表現に修正できるヒントを提供する。
新入社員から上司に当てて、研修を実施した報告をメールで送ったと想定します。
「初めての新人研修に行ってきました。色々なことを学びました。
研修で、ビジネスマナーや基本的な職場のルールについて教えてもらいました。
リーダーシップとチームワークについても勉強しました。
研修は大変だったけど、楽しかったです。
多くを学んだので、これから頑張っていきたいと思います。」
「昨日受講いたしました新人研修について、ご報告です。
研修内では、以下3点を中心に学びました。
・社会人としてのマインドセット(プロフェッショナルとしての行動規範)
・ビジネスマナーと職場のルール
・リーダーシップとチームワーク(協調性)
いずれの内容も、実際の場面を想定した上でワークを実施してスキルを磨くことができました。
自身課題に直面するたびに挫折感を覚えましたが、学びを深めるうちに楽しみと変わっていったことが印象的です。
改めて、研修という貴重な機会をいただきありがとうございました。
明日からの仕事に活かして参ります。」
相手にわかりやすいように、一文に一つの内容を伝えるように工夫した。
相手に見やすいような形式にすることも一つの手段だ。
「色々なことを学びました」という抽象的な表現ではなく、具体的に何を学んだかを記述した。
「大変だったけど、楽しかったです」という単純な感情表現ではなく、挫折感とそれが楽しみに変わる経験を具体的に表現した。
文章力を高めるためには、具体的で詳細な表現を心掛け、自分の感情や経験を読者に伝えられるように工夫することが大切だ。
うちの店、忙しいときが多くて、もっと人がほしいと思っています。だから、もっとアルバイトを雇うのがいいと思います。
客の対応とか、品出しなどの作業もスムーズになると思います。
それに、新しい人が来たら、もっと楽しくなると思います。
最近、当店の業績は順調に伸びており、その結果として繁忙期が増えています。
この状況に対応するために、アルバイトスタッフの増員を提案したいと考えています。
増員により、顧客対応の品質向上や店舗の運営効率化を図ることができます。
また、商品の陳列や在庫管理もより迅速かつ正確に行うことが可能になります。
新規スタッフの導入は、既存のスタッフにとっても新たな刺激となり、職場の活性化につながると考えています。
「うちの店」「もっと人がほしいと思っています」などのカジュアルな表現ではなく、ビジネスライクな表現を用いた。
「忙しいときが多くて」「客の対応とか、品出しなどの作業もスムーズになると思います」などのあいまいな表現ではなく、具体的な説明を行った。
「新しい人が来たら、もっと楽しくなると思います」などの抽象的な効果ではなく、具体的な目的と効果を明確にした。
文章力を向上させるには、ビジネスライクな表現を使うこと、具体的な説明を行うこと、そして目的と効果を明確にすることが重要だ。
人事部門での業務効率化を目指す中で、様々な課題に直面しています。
これらの課題を解決する手段として、一つの可能性としてクラウド人事労務ソフトを考えることができます。
このソフトを使うと、人事労務業務が一括管理でき、かつデータの更新や追加も容易にできます。
また、モバイル対応もしていますので、場所を問わずにいつでもアクセス可能です。
このようにして、クラウド人事労務ソフトを導入することで、人事部門の業務効率が向上すると思います。
人事部門の業務効率化を図るため、クラウド人事労務ソフトの導入を提案します。
このソフトは人事労務業務の一元管理を可能にし、データ更新や追加を容易にします。
さらにモバイル対応で、いつでもどこでもアクセス可能です。
これらの機能により、人事部門の業務効率が大幅に向上します。
「これらの課題を解決する手段として、一つの可能性として」や「このようにして」などの余計な語句を排除した。これにより、メッセージが直接的に伝わるようになった。
「人事部門での業務効率化を目指す中で、様々な課題に直面しています。」という冒頭の部分をシンプルに「人事部門の業務効率化を図るため」と改善した。
「人事労務業務が一括管理でき、かつデータの更新や追加も容易にできます」を「人事労務業務の一元管理を可能にし、データ更新や追加を容易にします」と簡潔に表現した。
なお、「話が長い人はなぜ嫌われるのか?」という記事も上げているので、よければそれも読んでほしい。
まわりくどい文章を改善するには、余計な語句を排除し、文章を整理し、簡潔な表現を用いることが重要だ。
では、相手にわかりやすく具体的な文章を作るためにはどうすれば良いのか。具体的なポイントは以下の通り。
上手く書くことがゴールではなく、「誰に」「何を」伝えるかが明確であり、それが正しく伝わることがゴールである。
文章を書く前に「誰に」「何を」伝えたいかを明確にするだけでも、わかりやすさが格段に変わる。
大きな声で読む必要はないが、書いた文章を見直す際に声に出して確認することで、違和感やわかりづらさに気づくことができる。
また、「印刷して少し時間をおいてチェックする」という方法も効果的で、作成者ではなく読み手として自分の文章を読むことで、より客観的なチェックが可能になる。
効果的で効率的な方法として、文章力研修などの研修やセミナーを受けるのも良い。
自身の書いた文章を講師や他の参加者に見てもらうことで、一人では気づかなかった「書き方の癖」や「改善すべきポイント」が明確になる。
文章力を向上させるためには、読解力を高めることも重要である。文章の構成や論理の流れを理解し、自分なりに要点を整理する力が、良い文章を書くための土台となる。普段から様々なジャンルの文章を読む習慣をつけ、内容を深く理解することで、自身の表現力や発想力が磨かれる。
また、他人の書き方や言い回しから学び、参考にすることも文章力向上に役立つだろう。こちらの記事でも、読解力を向上させる方法について解説されている。 → 【もし苦手なら克服できます】高校受験「国語」の勉強法!継続的に学習する方法
本コラムでは、「新人研修の報告書」、「アルバイトスタッフの増員の提案」、「クラウド人事労務ソフトの導入を提案」の3つのテーマを取り上げ、それぞれの例文の改善を試みた。その結果、具体的な表現の使用、感情と体験の詳細化、自信の表現、ビジネスライクな表現、目的と効果の明確化、余計な語句の排除など、文章力を向上させるためのポイントが見つかった。
文章を書くという行為は、単に情報を伝達するだけではなく、読者とのコミュニケーションを図ることでもある。明瞭で簡潔な文章は、そのコミュニケーションをスムーズにし、効果的に情報を伝達する手段となる。私たちが日々書く文章が、読者の理解を深め、そして行動を促す力強いものであることを願う。