従業員たちのやる気を上げたいとき、期待理論を活用しながらモチベーションアップに勤しむといいかもしれない。本記事では期待理論の概要を紹介しつつ、活用時のポイントを解説する。
目次
まず、期待理論の定義から確認しよう。
期待理論とは、人がどのような心理的プロセスで動機づけられ、行動を選び、それを継続するのかを説明する理論のことだ。
端的にいうと、人は、ある行動をすることで自分が望む結果や報酬が得られる」と感じたとき、その行動へのモチベーションが高まるというものだ。
以下3つの要素が掛け合わさることで、モチベーションが決まると考えられている。
頑張れば、目標を達成できるだろうという見込み。
例:「一生懸命勉強すれば、テストで良い点数が取れるはずだ」
目標を達成すれば、良い結果(報酬)が得られるだろうという見込み。
例:「テストで良い点数を取れば、親に褒めてもらえるはずだ」
得られる結果(報酬)に、どれくらいの価値を感じるかという度合い。
例:「親に褒めてもらうことは、自分にとってとても嬉しいことだ」
3要素すべてが高いレベルでそろっているとき、モチベーションは最大になるとされている。なお、どれか一つでも欠けていると、モチベーションは下がってしまう。
このような場合、人は頑張ろうという気持ちになりにくい、ということを説明する理論だ。
ここからは、期待理論を活用するメリットを見ていく。
期待理論を活用すれば、従業員たちのモチベーションが上がり社内の業務効率が良くなっていく。業務効率が良くなれば各業務の時間が削減されて、別の作業に時間を回せるようになる。結果、生産性アップへつながっていく。
期待理論を活用できれば、モチベーションアップによって新たなアイデアが思い浮かぶかもしれない。アイデアが次々と出てくるチームになれば、新事業開発や業務に対しての改善案など、さまざまな場面で新しい意見が思いつきやすくなる。
社内に新しい風を吹き込んだり、業務改革を行ったりする上で役立つだろう。
期待理論を上手く使えば、従業員たちのモチベーションが上がっていく。結果、職場で働き続けたいと思う従業員が増えるため、退職者を減らせるかもしれない。退職者が減れば、優秀な人材がいなくならずに済む。そのため、会社の戦力低下を防ぐのに効果的だ。
ここからは、期待理論を活用するときのポイントについて紹介していく。
従業員に目標を設定させる理由は、目の前の事象を自分事として捉えてもらうためだ。自分事として捉えれば、仕事に対して真剣に向き合う空気ができる。結果、モチベーションアップに役立つ。
なお、従業員に目標を設定させるときは以下のことを心掛けると良い。
目標の内容は具体的に設定させることが大事だ。抽象的だと目標達成に向けて、どのようなアクションをとればいいか、進捗状況がどうなっているか分からなくなる。
仮に来月は営業活動を頑張るという目標であれば、今月は新規契約10件、売上個数100個を目指すといった形で設定するといいだろう。数字を入れることで、アクションの取り方が分かるためゴールを目指しやすくなる。
目標に対して締め切り日を決める理由は、ゴールまでのスケジュール感を把握させるためだ。仮に締め切り日を決めなかった場合、時間に余裕があると思い込み、いつまで経っても動かない恐れがある。
従業員が動かない時間をつくるのは、会社にとって機会損失となってしまう。従業員がゴールに向かって動く環境をつくる意味でも、締め切り日は設けた方が良い。
目標に対しての結果を明確にさせる理由は、改善案を出しやすくするためだ。目標は立てて終わりではない。結果に対して今後何をすべきか決めることで、目標を立てる意味が現れてくる。結果を分析できる流れが生まれるため、今後の業務に活かしやすくなるはずだ。
期待理論を活用する場合は、従業員によって活用の仕方を変えた方がいい。同じ施策でも、従業員のタイプによって効果の出方が違うからだ。
活用するなら、より大きな効果が出るように施策を考えたい。そのため、活用の仕方を考えるのは重要だと言える。なお、従業員のタイプを知るには以下の施策を行うと良い。
性格診断とは質問を回答してもらうことで、どのような性格か診断することだ。紙だけではなくオンライン上でも実施できるため、リモートワークが多い企業でもできるだろう。
聞き取り調査を行って、従業員のタイプを知ることも可能だ。当人だけではなく、周囲の上司や部下などからも聞くことで、より深い所まで分かるかもしれない。ちなみに面と向かって聞き取るのが難しければ、アンケート形式で実施するのも効果的だ。
従業員に任せっきりだとやる気が出ず、モチベーション低下を招く。そのため、会社は従業員と伴奏することが大事だ。なお企業側がサポートする際は、以下のことを心掛けると良い。
コミュニケーションの機会を増やす理由は、会社と従業員の距離感を縮めるためだ。会社側がコミュニケーションの機会をつくらないと、従業員側は投げっぱなしにされていると思われる恐れがある。
従業員のモチベーションを削ぐことにつながってしまう。会社として支えていることをアピールする意味でも、コミュニケーションの機会は増やすべきだ。
会社側の都合のみで対応すると、従業員にとって迷惑に感じるかもしれない。会社側のサポートが邪魔になってしまう恐れがあるため、従業員のニーズを把握しながら対応すべきだ。
今の悩みや今後の目標など、さまざまな視点から質問することでニーズを把握しやすくなるだろう。
社風に合わせて活用すべき理由は、各社の社風によって効果の出方が異なるからだ。Aの方法が良い場合もあれば、Bの方法が良い場合もある。会社の文化によって効果の出方が違うため社風に合わせて活用すべきだ。
従業員へのフィードバックを怠らない理由は、従業員の行動を見ていることをアピールするためだ。従業員にアピールすれば、それに対して応えようとする従業員が増えるかもしれない。結果、各従業員のモチベーションが高まり会社の士気アップにもつながる。
それを実現させるためにも、フィードバックすべきだ。なお、フィードバック時は以下のことを行うと良い。
フィードバックは注意するだけではなく褒めることも盛り込んだ方がいい。注意ばかりだと、相手のモチベーションを削いでしまう恐れがあるからだ。
褒めることは相手の自己受容感を高めることにつながる。何を褒めるべきかあらかじめピックアップしておけば、スムーズに褒められるだろう。
上司の一方的な都合でフィードバックすると、相手を不快な気持ちにさせてしまう恐れがある。フィードバックの内容を理解してもらえない恐れもあるため、相手の価値観を尊重しながら行うべきだ。
相手の立場を考えて使う言葉や言い回し方を変えたり、伝える内容を調整したりすると良いだろう。
期待理論は多くの会社で用いられている。最後に期待理論を活用している会社を紹介していく。
資生堂では「カンガルースタッフ制度」を採用することで、働く社員でも子育てしやすい状態をつくっている。
ワークライフバランスが整っている分、子育てしている従業員のモチベーションが高まりやすい。結果、子育てしている従業員も働きたいと思える職場になっている。
サイボウズでは「働き方宣言制度」の導入によって、各従業員が自分に合った働き方を選びやすくなった。自分に合う働き方ができるため、仕事時のモチベーションアップに役立つ。
自分にとって快適だと感じる働き方を選択できれば、業務の質向上につながっていく。そのため、業務効率を向上させる上で重要だと言えるだろう。
リクルートホールディングスでは「Ring」制度を設けることで、従業員が新規事業やビジネスを提案しやすい状態を整えている。
チャレンジングな環境があるため、好奇心のある従業員はモチベーションが上がりやすい。新事業を打ち出したい会社にとって、良い政策だと言えるだろう。
期待理論を社内で活用できれば従業員のモチベーションを高められる。その結果、社内の士気が高まったり業務効率が良くなったりすれば、会社の業績アップにつながっていく。これらを意識すれば、期待理論を社内に活かしやすくなるだろう。
また、モチベーションアップ研修やモチベーション研修などを取り入れることもおすすめだ。従業員たちが働きやすい環境をつくるためにも、会社として力を入れていただきたい。
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