新入社員にとって報連相(ほうれんそう)はなるべく早く身に付けたいスキルだ。多くの企業が身に付けさせようと研修を実施する。
しかし報連相という言葉は覚えるものの、報連相の上手な活用方法を知らず、効果を発揮できないケースもあるようだ。
そこで今回は報連相の意味を紹介しながら、「部下としての報連相の仕方」「上司としての報連相しやすい環境作り」に付いてポイントを解説する。
報連相とは30年以上前に誕生したビジネス用語で、「報告・連絡・相談」の頭文字をとった用語となっている。3つとも相手へ伝える行為だが、使う場面や用途はそれぞれ異なる。
仕事の進捗状況や、業務における結果や成果などを先輩社員へ伝えることを報告と呼ぶ。
業務に関連する情報や、自分のスケジュールなどを先輩社員へ伝えることを連絡と呼ぶ。
業務において質問や不明点、トラブルなどが発生したときに、先輩社員からアドバイスを聞くことを相談と呼ぶ。
社員に報連相を徹底している企業も少なくない。しかし、全ての企業で報連相が機能しているかと言えばそうではない。報連相を実行できていない社員も存在する職場もあるようだ。そのため、部下は上手く報連相をする方法を、上司は報連相しやすい環境や雰囲気作りを考えることが大事だ。
なお、「報告」と「連絡」の違いについてはこちらの記事でも詳しく紹介しているので、こちらも合わせて読めばより理解が深まるだろう。→今さら聞けない!?報連相の「報告」と「連絡」の違い・ポイントを解説【やり取りをスムーズに】
ここでは報連相の目的を2つ紹介する。
報連相をすれば各メンバーが何の業務を行っているのか把握できる。各メンバーがなんの業務を行えばいいか把握しやすくなり、業務効率のアップにつながる。
問題解決を早くする目的もある。報連相を行えば、業務上どのような問題が生じているか分かる。問題点が見えて対処法を見つけやすくなるため、問題解決までのスピードが上がっていくのだ。
報連相のメリットを5つ紹介する。
報連相をしておけば、ミスが起こりかけていることに周囲のメンバーが気づきやすくなる。未然に防ぐことが可能になり、ミスを減らしやすくなる。
部下の進捗具合を把握しやすくなるメリットもある。
進捗状況を把握できれば、今現在の業務の流れが分かり、部下の管理が楽になる。チームメンバーの業務が全て分かれば、自身がどのような行動をとれば良いか分かるため、チームの運営もしやすくなるという流れだ。
報連相をしておけば上司は部下の行動を読みやすくなるため、フォローしやすい。フォローのタイミングや内容・部下との接し方など様々なことを見極めやすくなる。
報連相では社員間で話すことが多いため、コミュニケーションを増やすチャンスと言える。コミュニケーションが増えれば、社員同士の距離感が縮まり、会社に馴染みやすくなる。仕事もよりスムーズに進められるようになるはずだ。
報連相の内容を把握すれば、チームメンバーの得意不得意が分かりやすくなるのもメリットだ。たとえば、特定の業務において相談が多かった場合、その業務に対して苦手意識を持っている確率が高いと判断できる。
逆に順調な報告が多ければ、その業務について得意な可能性が高いと言える。部下の得意不得意が予測できれば、適材適所に合わせて人員を配置しやすくなる。その強みを活かせば、成果を挙げられるチームを作れるようになる。
報連相を怠ると、様々な問題が起こってしまう。どのような問題が起こるか紹介する。
報連相をしていないと、どの場面で問題が起こったか分からなくなる。したがって問題解決の方法が分からなくなり、解決までのスピードが落ちてしまう。解決までのスピードが落ちると次の業務に移れなかったり、他の部署にいる方の業務を止めたりする恐れがある。
報連相をしていない状況だと、部下の進捗状況を把握できない。その状況を悪用されると、部下にトラブルを隠されたり、仕事が終わったフリをされたりなどウソをつかれる可能性も出てくる。
報連相をしなかったため、大きなトラブルが起こる恐れもある。業務のミスを放置したことで大損失を生んでしまったり、取引先に粗相を起こしたのに報連相をしなかったことで、数億円単位の取引がなくなったりするトラブルが起きるかもしれない。
チームの連携が弱くなり、意思疎通が取れなくなる恐れもある。それはチームの業務が進まなくなったり、メンバー間の仲が悪くなったりする確率を上げてしまう。最終的には、チームとしての機能を果たさなくなる。
ここからは、報告・連絡・相談の3つに分けて、仕方を紹介する。
報告の仕方は、以下の2通りだ。
相手のスケジュールを確認させることが大切だ。
簡単に報告できる内容だったとしても、仕事中で聞いてもらえない場合がある。そのときは「〇〇について報告したいのですが。」と伝えるといい。状況に合わせて日程を調整してくれるはずだ。
必要な箇所だけ載せることが重要だ。報告に関係のない資料を載せてしまうと、読むのに時間がかかる。何を報告したいのか分かるように文書や図としてまとめるのがポイントだ。
連絡の仕方は、以下の2通りだ。
相手に伝えられる時間帯に連絡することが大事だ。社内にいる場合は、忙しくないときに伝えるといい。
また電話をかける場合は、先輩社員の会議中に連絡してしまうと、着信音が鳴り響いて会議の流れを止めてしまう恐れがある。そのため、会議が行われていない時間に連絡をするのがベストだ。
連絡をした目的を冒頭に記載することが大切だ。結論を文章の序盤に載せておくと、先輩社員が連絡した意図を理解するまでの時間が短く済む。
逆に結論を終盤に載せてしまうと、序盤を読み終えないと結論までたどり着かない。連絡してきた意図を理解するまで、時間がかかってしまうため控えるべきだ。
相談の仕方は、以下の2通りだ。
何で相談をしたいのか明確に伝えた方がいい。たとえば「〇〇という業務が苦手なのですが、何かアドバイスを頂けますか」といった形だ。すると先輩社員が質問をしてきて、会話のやり取りが楽になる。
相談したい内容を分かりやすく載せるといい。「〇〇の業務を上手にこなすコツを知りたいです」「対人関係で〇〇のときに緊張するので、克服法が知りたいです」といったイメージだ。
相談内容によって後日時間を作ってくれたり、見た瞬間連絡をくれたりなど、何かしらのアクションがあるはずだ。
この章では報連相を行うときのポイントを5つ紹介する。
報連相は自分のしたいときに行うものではない。相手の状況を確認してから行わせるのが大事だ。相手の状況を考えずに報連相をしてしまうと、先輩社員から「自分のことしか考えていない社員」、「周囲に対して気を配れない社員」となってしまうかもしれない。
結果、会社で働きづらくなり最悪の場合、退職することになる。先輩社員の気持ちになって、報連相のタイミングを決めることが大事だ。
報連相をするときに自分の感情を交えると、先輩社員は事実を報告されているのか判断できなくなってしまう。たとえば「私が思うには~」、「噂によると~」「絶対〇〇だと思います」という内容は、主観が入っているため報連相の中で用いるのは不適切だ。
事実を用いた方が良いため、「〇〇県で経済政策が発表されました」「〇月~〇月まで行ったプロジェクトで、〇〇万円の利益が生まれました」といった形で、発表された事実のみを伝えるのが大事だ。報連相の中身が事実のみで固められた情報になるため、先輩社員は適切な指示を出しやすくなる。
相談をするときは、基本的に迷ったり困ったりしたときに行われることが多い。よって、相談をする場合は早い段階で行かせるべきだ。行かせるタイミングが遅いと、相談をしても解決策が見つからずに、時間の無駄になってしまう恐れがある。トラブルが大きくなる前に相談させることが大切だ。
報連相は誰にでもすれば良いわけではない。報連相をする相手は選ばせなければならない。社員によって、業務範囲や役割が異なるためだ。
たとえば業務のクオリティを上げる方法が知りたいという相談をする場合、その業務をしたことがない方に相談しても、適切な回答を得るのは難しい。なぜならイメージでしか答えられないためだ。その業務を経験したことがある先輩社員に相談するのが正しい方法だと言える。
そのため報連相をさせる前には、誰にするか間違えないようにすることが大事だ。
たとえプライベートで親しく遊んでいる社員でも、報連相のときは言葉遣いを気を付けさせた方がいい。以下3つのことを意識させるといい。
ひと口に敬語と言っても、色々な種類がある。代表的な敬語は以下の通りだ。
上記3つの敬語をうまく使い分けることが大事だ。使い分けができないと会話や文章に違和感が出てしまい、先輩社員からの印象が悪くなってしまう。そのため、真面目な内容の報連相であるにも関わらず、先輩社員が相手にしてくれなくなる恐れがある。敬語を使い分けるだけで、周囲からの印象も変わるはずだ。
横文字や略語を多用すると文章の意味が分かりづらくなるため、多用するのは控えた方がいい。若年層から年配の方まで、全ての世代に理解してもらえるであろう言葉を使って話すのがベストだ。このことを意識すれば、横文字や略語を多用して話すことは減る。
たとえば先輩社員の意見に対して「でも」「だって」「けれど」という言葉を使うのは避けるべきだ。
その他に否定的な意見や反抗的な言葉を使いすぎるのも良くない。仮に納得できないことを言われたとしても、最後まで話を聞かせることが重要だ。
ほうれんそう(報連相)を習得するため、部下のホウレンソウ強化研修を受けさせることも良いだろう。
なお、ほうれんそうをする部下側にだけではなく、管理職などの上司側にも研修を実施することが良いだろう。管理職研修や部下のホウレンソウ強化研修、部下育成研修や部下育成のための指示方法研修などもおすすめだ。報告・連絡・相談がしやすいような話の聞き方やアドバイスの仕方を学んでもらうことも良い手段だろう。
報連相は基本的に部下から上司に対して行うことではあるが、報告を受ける側の上司も気をつけなければならないポイントがある。大きく分けて以下の通りだ。
上司自身が常に忙しそうにしている場合、部下は報連相のタイミングに困ってしまう。
「部下から声をかけられたら一旦手を止めて話を聞く」「時間がない時は次対応できる時間や方法を伝える(メールやチャットでおくってほしい等)」など、上司や先輩側から話しやすい雰囲気や職場環境を作ることが重要だ。
職場全体で「部下も上司もお互いに声をかけやすい環境」があることで、トラブルを隠したり連絡が遅れたりすることがなくなる。そのためには、「心理的安全性」と言われる環境を整えてあげることが重要だ。
心理的安全性とは「職場で誰にどのような発言をしても、拒絶されることがなく、罰せられる心配もない状態のこと」だ。仲が良いということではなく、チームの目的のためには上司部下関係なく意見を交わし、チームや組織に貢献をしていく姿勢のことを指す。以下の3点が必要だ。
ミスを犯す、知らないこと、できないことがあるのは当然であるという認識をチーム内で共有しよう。失敗に終わったとしても、上司や先輩として受け入れ、失敗は学習する機会であると促すことが大切だ。そうすることで、常に報連相を行い失敗を恐れず挑戦し続ける部下が育成される。
全てのメンバーが平等に発言できる環境作りのためには、メンバー同士がチーム内の様々な多様性や価値観を認め、年齢や役職などに左右されることのない平等な関係を築くことが重要だ。これは上司や先輩社員側から行動・発言をしていくことが有用だ。
報連相を受ける時にしてしまいがちなことが、報連相へのフィードバックがネガティブな内容になってしまうことだ。
まずは報連相してくれたことに感謝を伝えた上で、できるだけポジティブな言葉でフィードバックするようにしよう。もちろん、悪いフィードバックに対しては指摘をする必要がありますが「次同じことをしないためにどうしていこうか」と一緒に考える姿勢や発言が必要だ。
指示を出すタイミングで「半日やったら一旦メールで報告してほしい」「○月○日に進捗確認したいからスケジュールに入れておいてほしい」など、報連相するタイミングについても話しておくことがおすすめだ。また、相談はメールだとすぐ返せるなども伝えておくと部下としても行動しやすくなり、上司も報連相を漏らさず確認することができる。
報連相(報告・連絡・相談)は社会人として働く上で、なるべく早く身に付けるべき習慣だと言える。仕事を円滑に進めるためにも役立つ。報連相を行う意味は以下の2通りだ。
1.部署内の業務効率を上げる
2.問題解決を早くする
上記の目的を果たすことで社内の業務が円滑に進んだり、チーム内での連携が取れやすくなったりする。これが会社の経営成績を良くすることにつながるのだ。しかし報連相は、ただ行えばいいものではない。上手に行わないと報連相の効果は発揮されなくなる。ポイントは以下の5通りだ。
1.相手の状況を確認せずに報連相をするのはNG
2.自分の感情を交えて報連相をしない
3.相談をするときは早い段階で行う
4.相手を選んで報連相をする
5.言葉遣いに気を付ける
上司側としては部下が報連相しやすい環境作りや指示の際の工夫が必要となる。上記のポイントを意識しながら報連相を行わないと、先輩社員の気分を悪くすることにつながる。
なお、本記事を作成したリスキルでは、部下のホウレンソウ強化研修や、新入社員ホウレンソウ研修を用意している。ぜひ参考にしてほしい。
報連相の仕方がうまいと、先輩社員は時間をとって聞いてくれる。しかし下手だと、軽くあしらわれる確率が上がってしまう。話を真剣に聞いてもらうためにも、報連相の大切さを意識していただければと思う。
報連相や新入社員