現段階で部下の話し方が下手であっても、向上させることは可能だ。話し方が下手だと感じられる理由を明確にし、それに合った方法を実践させれば部下の話し方はうまくなる。
しかし正しい方法を知らなければ成長させることは難しい。そこで今回は部下の話し方を向上させる方法について、パターン別に紹介する。営業など、普段から話す仕事をしている方にも活用できるスキルのためぜひ確認してほしい。
はじめに話し方が下手な部下に見られがちな特徴を5つ紹介する。
会話の最中に沈黙ができて、お互い気まずくなるパターンだ。会話のキャッチボールができずに沈黙が何度もやってくる。何度も訪れる沈黙に、押しつぶされる部下もいるだろう。
話している途中に、何度も相手に聞き返されてしまうパターンだ。聞き返される時間が増えると、その分話す時間が減っていく。言葉を聞き取ってもらえない状況で会話が進んでいくと、会話がスムーズに進まず会話の質が下がる。結果、相手をイライラさせてしまうだろう。
言葉は分かるものの、話の内容を理解してもらえないパターンだ。自分では簡単に話しているつもりでも、相手からすると何を伝えたいのか分からないと思われてしまう。理解してもらえない状況で、相手を納得させるのは難しい。よって、話を進めるのも厳しくなるだろう。
相手が話しているのにも関わらず、割り込んでしまうのも話し方が下手な部下に見られがちだ。相手の話の腰を折ってしまい、話が進まなくなる。結果、相手を不快な気持ちにさせてしまうだろう。
自分の話ばかりするのも、話し方が下手な部下に見られがちだ。相手の話に見向きもせず、満足するまで自分の話をしてしまう。他の方が話す隙も与えないため、イライラさせてしまうだろう。
部下の話し方を向上させると、様々なメリットがある。ここでは3つ紹介する。
コミュニケーションが活発になれば、取引先など社外の方と話す頻度が増えて、お互いの距離感が縮まる。結果、信頼関係の構築につながっていく。取引先との関係性も良好になり、仕事を進めやすくなるだろう。
仮に取引先へ誤解を与えてしまうと、それがきっかけで取引が止まってしまうかもしれない。結果、業績に大ダメージを与える場合がある。しかし誤解を与えなければ、信頼を損なうことなくスムーズに仕事を進められる。社員間の関係性にヒビをつくらないためにも、部下の話し方は向上させた方がいい。
話し方を向上させれば、相手から良い印象を持ってもらえる。仮に取引先から良い印象を持ってもらえると、新規の仕事が生まれて会社に良い影響を与えるかもしれない。社員1人の印象が良いとなれば、その会社で働いている他の社員の印象も良くなる。結果、会社全体に利益をもたらす。
部下の話し方を向上させる方法は、状況によって異なる。ここではパターンごとに向上させる方法を紹介する。
話している途中に沈黙がたくさんできてしまう部下は、以下の方法で向上させるといい。
普段から多くの話題をつくらせておけば、様々な話題が生まれるため、沈黙は発生しづらくなる。とは言っても、いきなり話題を持ってもらうのは難しい。話題を持ってもらうには、普段からネタを集めておく必要がある。
たとえばニュースを見て情報収集をさせたり、気付いたことをメモさせたりする習慣をつくると、過去に記録した内容の中から話のネタを見つけられる。いつでも別の話題を振る準備をさせておけば、沈黙の回数も減るはずだ。
お互いの会話が盛り上がる雰囲気をつくらせるのも効果的だ。代表的なのが、相手から笑いをとることだ。たとえば自分の失敗談を話すと、相手は笑ってくれるかもしれない。
その他に相手との共通点を見つけ、それに関する話をして会話を盛り上げる方法もある。共通点に関する話は、お互い理解できるため相手との距離を縮めるのに最適だ。明るい雰囲気で会話を進められるだろう。しかし話題によっては自分の印象を悪くする恐れがあるため、相手との関係性を考えながら話題を選ぶことが大事だ。
相手が話してきた内容を、掘り下げていくのも沈黙を増やさないコツだ。たとえば飲食店の話のときに、相手がおすすめの飲食店を挙げてきたとする。
そのときに「そうなんですね」で終わらせるのではなく、「おすすめの料理は何ですか」「何がおすすめなのですか」と、掘り下げるイメージだ。1つのテーマに対して掘り下げていく習慣をつけさせれば、話題がない部下でも沈黙をつくらずに話せるはずだ。
何度も相手に聞き返されてしまう部下を向上させるには、下記の方法が効果的だ。
話すスピードが速すぎて相手に聞き返されてしまう場合、普段と比べてゆっくり話すことを意識させるといい。話すスピードを落とすことで、相手は言葉を理解しやすくなる。結果、聞き返されることが減る。
なおゆっくり話すことを意識させるには、周囲が気付かせてあげることが大事だ。たとえば部下に「ゆっくり話した方が聞き取りやすいよ」と周りが伝えれば、自分の行動を改めようとする機会が増えるはずだ。
自分に自信がなくて声が小さくなっていて聞き返される場合、自信を持たせるといい。すると声が大きくなって、聞き返される回数が減っていく。とは言っても、自信を持てない部下もいる。そのときは、以下のことを実践させるといいだろう。
様々な経験をさせると幅広くスキルを習得できて、何かかしらの成功体験を増やせる。仮に失敗したとしても何度も挑戦し打ち勝つことができれば、それも自信を生み出す糧になるため効果が期待できる。
「相手よりも優れていなければいけない」といった形で、相手と比較するクセがあると自身でプレッシャーを抱えて押しつぶされる場合がある。すると自信をなくしてしまう。その状況に陥らないためにも、人と比べる習慣は辞めさせるべきだ。
自分が話している内容を理解してもらえない部下が向上させるには、下記の方法が効果的だ。
話題が多すぎると話の流れが分かりづらくなり、相手に伝わらなくなる場合がある。それを回避するには、優先順位をつけて話題を絞らせることが大事だ。話したい内容を全て伝えようとするクセがなくなっていき、理解してもらえる話し方になっていくはずだ。
結論を伝えてから説明していくと、相手はどのような話なのかイメージしやすい。「結局、何が言いたかったの」といった状況になる確率が減り、理解してもらえるようになるだろう。
時系列で話をさせると理解してもらうのが簡単になる。たとえば「過去→現在→未来」というように流れに逆らわず話をさせるのがポイントだ。これが「過去→現在→過去」というように、行ったり来たりする話の流れになると理解するのが難しくなってしまう。
長い文章だと文の切れ目が分かりづらく、相手に理解してもらえなくなる。それを防ぐには、文を適度に切りながら話すことが大事だ。一文につき最大60文字程度で話をさせると文章の終わりが分かりやすくなり、理解してくれる人が増えるだろう。
一部の方しか知らない専門用語を多用して話を進めると、相手に理解してもらえなくなる。したがって相手に馴染みがないと思われる専門用語は、簡単な言葉に置き換えさせた方がいい。
相手が話している最中に割り込んでしまう部下を向上させるには、以下のことを意識させるといいだろう。
相手が言いきってから話すことを意識させると、相手が話している最中で割り込む頻度を減らせる。「相手が言い終わったら話始めよう」「相手が以上ですと言ってから話そう」など、自分でタイミングを図ろうとする習慣ができるため、割り込む頻度を減らすことにつながる。
相手が言おうとしていることを割り込んで先に言ってしまう場合は、相手が何と言おうとしているか予想する行為を辞めさせると割り込まなくなる。話の展開を予想するのではなく、相手が話している内容をしっかりと聴くよう指導すべきだ。
自分の話ばかりしてしまう部下には、下記の方法を使って向上させるといい。
自分が話す頻度を減らし、相手に話をさせるべきだ。相手の話を80~90%、自分の話を10~20%程度にさせるのがベストだ。しかし注意をしても、相手の話が聞けない部下もいる。そのときは、以下のことを意識させるといい。
相手からたくさん吸収することを意識させれば、相手の話を多く聞こうとする流れに持っていきやすくなる。上司が「相手の話をたくさん聞いて仕事に活かすといいよ」といった形で、部下が話を聞く体制をつくってあげるといいだろう。
相手に興味を持ってもらうと、相手の話に興味・関心が湧く。興味・関心が湧きそうなフレーズを言ったり、希少性を伝えたりなど様々な方法がある。効果が出れば、自分の話よりも相手の話を聞いた方が良いという考えになる。
話し方が下手な部下と言っても、様々なタイプの人がいる。
話し方が下手な部下は、上記のいずれかに当てはまると思っていい。しかし話し方が下手であっても向上させることは可能だ。向上させればコミュニケーションをとりやすくなったり印象が良くなったりして、会社にとってメリットになる。
しかし向上させる方法は、どのパターンに該当するかで変わってくる。向上させる方法は以下の通りだ。
上記のようにパターンごとに合う方法を実践させると効果が期待できる。話し方は社外とのやり取りで大事になってくる。話し方の印象によって、取引先の関わり方も変わってくる。部下に活躍してもらうためにも、話し方を向上させる取り組みをしていただきたいと思う。
なお、営業をメインの業務としている方はこれにプラスして営業研修を受けると良いだろう。部下と顧客という違いはあるが、上手く相手のニーズを引き出すという意味では活用できる部分も多い。加えて「営業チームのマネジメントを上手くやりたい」という方には営業マネジメント研修もおすすめだ。ぜひ確認してほしい。