新入社員が入社したら、仕事を始める前にやらせるべきことがある。それは「目標設定」だ。
本記事では、新入社員が目標設定をすべき理由を解説しつつ、コツや具体例を紹介する。
対象は人事や教育担当者向けだが、今年から新人であるという方にも参考になる内容のため、ぜひ確認してほしい。
はじめに、新入社員が目標設定をすべき理由を見てみよう。
目標設定をせずに行動する習慣を身につけるのは難しい。何に向かって行動すればいいか分からないためだ。マラソンを例に挙げてみよう。
たとえばマラソンではゴールが設定されていないと、選手はどこへ向かえばいいか分からなくなる。方向が分からないため「走る」という行動が、とれなくなってしまう。仕事においても一緒だ。ゴールを目標に置き換えて考えると、目標が設定されていなければ、どの道を進んでいけばいいか分からない。したがって目標設定をさせることが、行動の習慣をつけることになるのだ。
主体性とは、自分の考えや意志を持って行動することだ。
目標設定をしていない場合、何を基準にして仕事をしていいのか分からなくなってしまう。その状態を回避するには、目標設定を行って自分の頭で考えながら働くことが大切だ。
下記のようなイメージで、自分の考えを大事にしながら仕事に取り組めるように目標設定しよう。
企業に貢献できる人材になってもらうのも、新入社員に目標設定をさせる理由だ。入社後、活躍できるかは、仕事への向き合い方によって決まると言っても過言ではない。
たとえば目標設定をしなかった場合、モチベーションが上がらずに仕事をサボってしまう恐れがある。結果、企業に貢献できる人材として認められるのは難しい。しかし目標設定をすれば、それを達成するために必死に努力しようとするきっかけが生まれる。それが企業の即戦力として、成長できる可能性につながるのだ。優秀な人材を育てる意味でも目標設定は大事になるだろう。
目標設定をすると、自分がどの程度進捗したか振り返る機会ができる。この行動を習慣化すれば、自分の仕事がどうだったかチェックする仕組みができるということだ。
一方、目標設定をしなかった場合、目標に対して仕事内容がどうだったか反省する機会はない。PDCAが回るきっかけがなくなってしまうので成長に悪影響が出てしまう。したがって新入社員に結果を反省してもらう意味でも、目標設定は有効だと言えるのだ。
新入社員が目標設定をするときは、設定の仕方も重要だ。ここでは、目標設定における5つのコツを紹介する。
目標を設定させるときは、達成可能な目標にすることが重要だ。達成することが難しい目標を設定すると仕事に対するモチベーションが下がってしまう。
そうならないために、自分なりに頑張れば達成できそうな目標を設定することが大事だ。ちなみに達成可能な目標を設定すると、以下の効果が期待できる。
仕事において好都合なことばかり起こるため、達成可能な目標を設定すべきだと言える。
目標の内容は進捗状況が分かるものにしよう。たとえば以下のような目標は、進捗状況を把握しづらい。
目標を設定した人の満足度によって、達成度合いが決まってしまう。そのため目標は、具体的かつ進捗を確認できる内容にした方がいいのだ。
ちなみに具体的かつ進捗を確認できる内容を目標にするときは、以下のことを意識しよう。
設定する目標には、数値を入れよう。
「1カ月以内にテキストを10ページ覚える」という目標であれば、10ページのうち何ページまで覚えたかが分かる。7ページ分覚えた場合であれば、進捗度70%と表すことができるなど進捗確認の点でも有用だ。
何種類もの目標を盛り込みすぎると、ゴールがたくさんあるため、行動している最中に混乱してしまう危険性がある。
新入社員によっては足かせとなってしまい、成長できるチャンスが阻害されるかもしれない。設定した目標に振り回されないためにも、目標の内容はシンプルにすることが重要だ。
もし目標の進捗状況をしっかりと管理したい場合は「OKR」と呼ばれる指標を取り入れるといい。OKRとは設定した目標の管理や進捗状況の追跡で役立つフレームワークのことだ。
導入している企業も多いため、上手く活用するといいだろう。
目標を達成するまでの期限を決めることも大事だ。期限を決めなかった場合、「そのうち達成する」「達成するまで見守ってほしい」など、様々な逃げ道ができてしまう。
またゴールが定まらないため、目標達成までのスケジュールやプロセスを決めにくい。スムーズに目標達成するためにも、期限を決めることは大事だ。なお期限を決めるときは、長すぎてはいけない。締め切りがだいぶ先だと、胡坐をかく新入社員が出てきてしまう恐れがあるからだ。
そのため一生懸命取り組めば間に合う日を、期限にすることをおすすめする。
理由は目標を達成するまでのプロセスを描きやすくするためだ。長期・中期・短期の順で目標を立てておけば、各期間の中で自分が何をすべきかが分かる。長期の目標を達成するために、歩むべきプロセスが見えてくる。目標までの道をスムーズに進む意味でも役立つはずだ。
上司や先輩に相談して決めるのも重要だ。目標設定の方法を勉強したとしても、社会人経験の少ない新入社員は、間違った目標を設定する恐れがあるからだ。
相談する際のポイントは以下の通りだ。
新入社員の中には相談内容を整理していなかったため、本来聞くべきはずだった質問ができなくなるケースがある。そうなると、新入社員も相談を受ける側も時間の無駄になってしまう。上司や先輩によっては仕事のスケジュール上、相談に乗る時間をあまり取れない場合もある。沈黙ができて気まずい雰囲気にならないためにも、大切なことだ。
新入社員の中には緊張してしまい、相談しに行くことに対して躊躇するケースもある。その場合は前もって、相談先のスケジュールを確保するといいだろう。相談の日時が決まっていれば、新入社員は半強制的に相談せざるを得ない状況になる。そのため、相談する流れに持っていきやすい。
最後に新入社員の目標設定の具体例を見てみよう。
この目標は期間を自由に設定できるため、とても活用しやすい。
1日・1週間・1カ月と様々な期間の目標が設定できるため、同じテーマで短期・中期・長期の目標を立てたい方に便利だ。
会議やミーティングで〇回以上発言するというのも、よくある目標だ。目標を細かく設定したい場合は、会議やミーティングごとに設定するといいだろう。
上記のように細かく設定すれば、会議やミーティングの日になるたび、目標を意識しながら参加できる。
一方「〇月分の会議やミーティングで〇回発言する」という目標にしてしまうと、参加した会議やミーティングで発言できなかったときに「次の会議やミーティングで発言すればいいや」という感情が湧いてしまう。「まとめて発言すればいいや」という感情を生まないためにも、細かく設定することをおすすめする。
資格取得を目指す新入社員に向いている目標だ。1週間単位の目標であれば、仮に仕事が忙しくて勉強できなかった日があったとしても、休日に時間を埋め合わせて勉強時間を調整できるため、目標を達成しやすくなる。
また、細かく設定したいのであれば「毎日〇時間勉強する」と、1日単位で設定してもいいだろう。ただし1日単位で設定すると、仕事が忙しくて目標を達成できない日が多くなるかもしれない。
それによって自分の自信をなくしてしまい、勉強する意欲が削がれる場合がある。達成が厳しそうであれば1週間単位で設定した方がいいだろう。
アポを獲得しなければいけない営業職向けの目標だ。件数を設定すれば、獲得するまで諦めずに行動しようと思うきっかけになる。目標を達成しようという想いを持ちながらアポ取りをすれば、根気強さが身につくかもしれない。ただし、取り扱う商品や時期によって目標に最適な数値は変わる。無理なノルマを掲げると精神的に滅入ってしまう恐れがあるため、適切な数値になっているか周囲の同僚がチェックしてあげよう。
期間を決めて、特定の業務スキルを手に入れる目標も効果的だ。たとえば、このようなイメージだ。
上記のように期限とやるべき内容を決めておけば、どのようなプロセスを辿ればいいかイメージしやすくなるだろう。
新入社員の目標設定は、自身の成長に繋がるため大切だ。目標の内容によって、各新入社員の成長度合いは変わっていく。会社で有意義な時間を過ごしてもらうためにも、周囲の同僚がサポートしよう。ちなみに新入社員が目標設定をするときは、これらの内容を意識するといいだろう。
社会人の経験がない新入社員が、いきなり自分に合った目標を1人で決めるのは難しい。新入社員が自分の立てた目標に振り回されないために、先輩社員は新入社員が立てた内容を確認すべきだ。
ちなみに新入社員の目標には、以下のようなものがある。
目標達成を意識して動けば、自然と仕事がスピーディーに進むはずだ。自分を奮い立たせるためにも、目標は設定した方がいい。新入社員が仕事に力を注ぐためにも、目標設定に力を入れていただければと思う。