GRIT(グリット)とは「やり抜く力」のことを意味し、このグリット(GRIT)が、さまざまな分野で多大な成果を上げた「成功者に共通する力」として、今非常に注目を集めている。成功するかどうかは、生まれ持った才能や環境によってのみ決まるのではなく、GRIT(グリット)こそが重要であり、大人になってからもトレーニングによって後天的に伸ばすことのできる能力といわれている。
そこで今回は、グリットを伸ばす手順とポイントを解説する。
グリットとは物事をやり抜く力のことだ。IQに関係なく、意識すれば誰でも身につけられると言われている。グリットを身につけた社員は、周囲から仕事ができる社員だと思われる可能性がある。社会で生き抜くために必要な力だと言えるだろう。さて、グリットは、下記4つの合計によって決まる。
困難があったとしても、物事を解決するために立ち向かう力のことだ。難易度が高い業務や今までとは違うジャンルの業務を任されても、力を駆使して挑戦しようとする。それを続けられる社員は、Gutsの値が高くなる。
何度も失敗をしても、諦めずに行動していく力も必要とされる。上手くいかなかったとしても、成功するまでやり続けていく。その状態を維持できる社員は、Resilienceの値は高い。
目標に向かって、自ら行動を起こすことも含まれる。上司に言われてから行動を起こす「受け身」の状態ではなく、上司から言われなくても自ら行動を起こしていく社員はInitiativeの値が高い。
物事を最後までやり遂げる力も重要だ。「作品を完成させるまで作業を続ける」「目標を達成するまで仕事の手を緩めない」など、途中で放棄しない社員はTenacityの値が高くなっていく。
社員がグリットを伸ばすと、以下のメリットがある。
グリットを伸ばせば諦めない気持ちが生まれるため、根気強さが身につく。物事を途中で投げ出さなくなったり、同じ作業を続けたりする習慣が当たり前になってくる。辛くなったとしても、心が折れることなく作業を進められるはずだ。
社員が自ら考えながら、自主的に行動していく習慣が身につく。上司からの指示を待つ待機時間が減るため、生産性アップも期待できる。生産性が上がればスムーズに業務が進むようになり、別のことに時間を割ける。限られた時間の中で様々な業務を任せたい上司も、社員のグリットを伸ばすべきだ。
グリットを伸ばすと、健康体である確率が高いと言われている。そのため、体調不良による社員の欠勤率を減らせる。他の社員の業務をカバーする頻度が減るため、業務のトラブルも起こりづらい。業務を円滑に進めていく上でも、グリットを伸ばすことは大事だ。
グリットを伸ばす手順は以下の通りだ。
社員のグリットを測定する。測定時は「グリット・スケール」を活用するといい。グリット・スケールとは10個の項目に答えてもらい、グリットを算出するツールのことだ。以下の流れでグリットを測定する。
平均のスコアが高いほど、グリットは高いと判断される。
グリットの測定値を参考に、社員にとって少しハードルが高い目標を設定する。自分にとって難しい内容の業務でも、対応していく姿勢を付けてもらうために必要だ。
ここで大事なのは、頑張れば目標達成できそうな内容にすることだ。不可能な内容を目標にしてしまうと自分の可能性を信じられなくなり、グリットを伸ばすのに支障をきたす。その状況を作らないためには、頑張れば達成できそうな目標を設定して、社員のやる気を出すことが大事だ。それがグリットを伸ばすことにつながっていく。
行動させるときは、最終目標に達するまでの過程で小さな成功体験を積ませることが大切だ。なぜなら、自分の可能性を信じてもらうためだ。失敗しながらも成功していく体験を積ませることが、グリットを伸ばすことにつながっていく。
行動した結果をもとに、フィードバックを行っていく。いくら行動させても上司が何も言わない状況だと、社員は成長しない。自分で感じ取れなかったことに気付き、次回以降の行動に活かしてもらう意味でフィードバックは必要だ。
なお、フィードバックを行うときは、以下のことを意識するといい。
フィードバックに自分の感情が入ると、説得力が欠けてしまう。相手に理解してもらうには、客観的に伝えることが重要だ。数字やデータなどを用いて論理的に話すと、説得力が高くなり、社員も理解してくれるだろう。
相性が合わない社員へのフィードバックだと、感情的になるかもしれない。しかし相手を追い詰めるのは良くない。なぜなら、ハラスメント被害に遭ったと思われる恐れがあるためだ。精神的苦痛を感じて、体調を崩す社員もいる。その状況を防ぐ意味でも、社員を追い詰めてはいけない。
フィードバックでは、良い点も伝えて長所を伸ばしてあげることも大切だ。改善点ばかり伝えると、社員のやる気を削いでしまう恐れがある。モチベーションが低い社員が増えると、社内に広がっていき、職場の士気が下がってしまう。その状況を防ぐためにも、改善点だけではなく良い点も伝えるべきだ。
速めに改善してもらいたくても、フィードバックしないと改善してもらうのは難しい。したがって気付いた段階で、速めに伝えるべきだ。長期にわたって悪い状態を放置しないためにも重要だ。
最後にグリットを伸ばすポイントを解説する。
興味・関心がないものばかり挑戦させると、行動するのが苦痛に感じるケースがある。それが悪循環になると、グリットを伸ばすまでに時間がかかってしまう。社員に業務を続けたいと思わせるためにも、興味・関心があるものに挑戦させるべきだ。
上司の指示が当たり前の状況になると、自分で考えなくなる。結果Initiativeの能力が減り、グリットが伸びなくなってしまう。自己決定の機会を設けることで、考えさせる時間が増えるため、グリットを伸ばすのが楽になる。ただし社員に自己決定させるときは、以下のことに気を付けた方がいい。
全ての場面において自己決定させると、大きなトラブルにつながってしまう。そのため、自己決定させる範囲を決めることが大事だ。たとえば「リカバリーできる内容のみにする」「大きなトラブルにならないものだけにする」といった形で基準を設ければ、範囲を決めやすくなるだろう。
自己決定させるときは、社員に理由を考えてもらうことも大切だ。自分なりの根拠を持ってもらうことが、グリットを伸ばすことにつながる。
行動していると、何度も失敗することもある。しかし失敗したことを責めると、社員は落ち込んでしまうかもしれない。結果、自尊心が失われてしまいResilienceを鍛えるのが難しくなる。グリットを伸ばすには自信が必要だ。よって、失敗したときに責めてはいけない。
グリットの効果的な伸ばし方は、社員によって異なる。Aの視点から伸ばした方が良い場合もあれば、Bの視点から伸ばした方が良い場合もある。いくつかの視点を検証したうえで、伸ばし方を考えるといいだろう。
人間は環境によって、価値観や行動が変わる生物だと言われている。グリットが高い社員と行動させるとグリットが高い社員の行動を見るようになり、やがて真似をするようになる。自然とグリットを伸ばす行動をとっていくため効果的だ。なお、グリットが高い社員と行動させるときは、以下の方法を導入するといいだろう。
OJTとは実務を通じて、先輩社員が後輩社員に指導していく教育方法のことだ。マンツーマンでの指導となるため、後輩社員は先輩社員の真似をしやすい。後輩社員の実務のレベルを上げたいときに活用できる。
先輩社員が後輩社員の相談や悩みに乗ってサポートしていく制度のことだ。ブラザー制度では後輩社員と社歴が近く、業務で関わりのない社員がサポート役になる。配属部署の上司ではないため、思い切った行動ができるかもしれない。
テーマを与えてグループ内で考えてもらう「グループワーク」を実施してもいいだろう。メンバー間で関わる機会を増やすことで、グリットが高い社員はどのような考え方をしているかが分かる。自ら話す機会も増えるため、グリットを伸ばすのに効果的だ。
社員のグリットを伸ばすと生産性が上がったり、根気強い社員が増えたりなど、社内に良い影響を与えてくれる。結果、会社にとって良い結果が出るはずだ。とは言っても、正しい方法を知らなければグリットを伸ばすのは難しい。伸ばすときは以下の手順に沿って行うといい。
ここで大事なのは、社員のグリットを測定してから伸ばす方法を考えることだ。グリットの効果的な伸ばし方は社員によって異なる。社員のことを知らずに様々な方法を試しても結果は出ない。よって事前準備を行ってから、実践することが大切だ。
また、グリットを伸ばすときのポイントもあるため紹介する。
これらのポイントを意識すれば、社員はグリットを身につけやすくなる。グレットを習得した社員が増えると、社内の雰囲気が変わって業績が良くなっていくかもしれない。成果を挙げるチームにするためにも、社員のグリットを伸ばしていただければと思う。