キャリアは、一人ひとりの人生において大きな部分を占める。しかし、そのキャリアを設計する上で、どのような要素を重視すればよいのか迷うことも多いだろう。
そこで注目したいのが「Will・Can・Must」の3つの視点だ。これらのキーワードは、キャリアデザイン研修などでも扱う、キャリアに関する基本的な要素だ。自分自身を深く知り、目指すべき方向性を明確にする助けとなる。
本記事では、キャリアにおける基本的な考え方である「Will・Can・Must」の視点について解説をしていく。これから自身のキャリアを考えたい方におすすめの内容だ。
目次
Will・Can・Mustのフレームワークとは、キャリアを考える上で情報を整理するために有用なものだ。キャリア研修などでもよく用いられるものである
やりたいこと、できること、やるべきことを明確にすることで「やりたい仕事を任せてもらうためにはどうすれば良いか(身に付けるべきスキルなど)」「やるべきことや役割を果たせているだろうか」「今の自分にできることってなんだろうか」というものが明らかになる。
「Will(やりたいこと)」はキャリアデザインの出発点とも言える。この「やりたいこと」は、心が自然と引き寄せられるものや情熱を感じるものを指す。
例えば、誰かに何かを教えるのが好きだと感じたり、新しい技術やアイディアを生み出すのが楽しいと思ったりするのが「Will」の範疇だ。
自分の「Will」、つまり「やりたいこと」を具体的に知るためには、以下の方法で自己探求を深めることが有効だ。
生まれてから現在までの自分の人生を振り返り、特に記憶に残る出来事や経験を思い出す。これにより、自分の中で重要だと感じていることや価値観が見えてくる。
人生で特に充実していた時期や、心から楽しかったと感じた瞬間を振り返る。その時期に何をしていたのか、どんな環境にいたのかを詳しく思い出すことで、「Will」のヒントを探ることができる。
満足度が高い時期とその理由を振り返ることで、心からのやりがいや達成感を感じた瞬間を特定する。それらの瞬間が示す価値や興味をリストアップすると、自分の「Will」に繋がる要素が見えてくる。
未来において、自分がどうありたいか、何をしていたいかを具体的にイメージする。それにより、自分の内なる願望や目標が明確になる。
「Can」とは、自分が持っている能力やスキル、経験を指す。キャリアデザインにおいて、「やりたいこと」だけではなく、現在「自分にできること」を知ることも重要だ。
これまでの仕事やプロジェクトを振り返り、成功した点や困難を乗り越えた瞬間を思い出す。これにより、自分が得意とするスキルや知識が明確になる。
他者からのフィードバックや自己評価を元に、自分の独自の強みや資質をリストアップする。たとえば、人とのコミュニケーション能力や解決思考など。どうしても自分の強みがわからない場合「キャリアコーチング」など、専門家による“強みを見極める手段”は他にも存在する。
【参考】
キャリアコーチングおすすめ7社比較【無料相談を受けたリアルな体験談】ミチサガシ
ミチサガシは仕事の悩みやキャリア迷子を解消し、働き方を見直すことで“理想の道探し”ができるメディアだ。
自分が持つスキルや経験をカテゴリやレベルごとにマッピングすることで、一目で自分の能力を確認することができる。
達成したプロジェクトや業績を定期的に記録し、自分のキャリアの進化を可視化する。これにより、将来的な方向性を計画する際の参考となる。
「Must」は自分が果たすべき役割や責任を指す。キャリアをデザインする上で、自分の能力や願望だけでなく、組織や周囲との関係性を意識することも欠かせない。
会社や団体全体として期待される目標や役割を理解し、それに合わせて行動する。
自分が所属するチームや部門の中での立ち位置や、周囲のメンバーから期待される役割を把握する。
自己評価や他者からのフィードバックをもとに、自分が果たしている役割にどの程度貢献できているかを考える。
単にタスクをこなすだけの「作業」と、組織の目的達成や役割に基づく「仕事」の違いを理解し、後者のスタンスで日々を過ごす。
「Will・Can・Must」を具体的な状況に当てはめることで、より明確に自分のキャリアを見つめることができる。以下、それぞれの視点での具体的な例を紹介する。
・顧客の真のニーズを解決する商品を提供。
・チームでの目標達成に貢献。
・高い営業成果。
・顧客との強固なリレーションシップ構築。
・年間の営業目標を20%超過。
・アポ獲得率を40%から50%に改善。
・新しい市場や顧客層の開拓活動。
・チームの営業トレーニングや育成活動のリーダーシップ。
・ユーザーの期待を超えるデザインの提供。
・ブランドイメージの向上。
・UI/UXデザインの専門性。
・多様なメディアへのデザイン適応。
・プロジェクトごとのデザインの承認率を80%以上。
・新製品のデザインでユーザー評価を2割向上。
・新たなデザイン方針の策定やチームのガイドライン整備。
・他部門とのコラボレーションを通じた商品やサービスのデザインの質向上。
・効率的かつ高品質な製品生産。
・生産ラインの最適化。
・高い機械操作スキル。
・複数の製造プロセスの経験。
・毎月の生産目標を10%上回る。
・不良品率を3ヶ月で5%削減。
・新しい製造技術の導入や研修の実施。
・部署間の連携を強化し、全体の生産効率の向上。
・社員のキャリア支援と成長。
・社内文化の更なる向上。
・人事評価システムの構築。
・社員教育・研修プログラムの開発。
・新入社員の定着率を1年で85%以上にする。
・年間の社員満足度を10%向上。
・新しい採用手法や戦略の導入。
・部門間のコミュニケーション促進活動やチームビルディングの実施。
現代社会の不確実な状況を表した「VUCA」という言葉がある。
※参考:「VUCA」とは?具体例で分かる、VUCA時代に求められるスキルとは?【キャリアデザインを学ぶ重要性】
VUCA時代において、キャリアデザインは過去にも増して重要性を増している。不確実性が高い今日の環境では、個々の選択が将来に大きな影響を与える可能性がある。このような状況で「Will・Can・Mustを考えるタイミング」が至る所に存在する。
それでは、このフレームワークを考える最適なタイミングはいつなのだろうか。
等級や役職が変わるタイミングは、自身の職務内容や求められるスキルが大きく変わることが多い。この変化に適応するため、自分のWill(やりたいこと)、Can(できること)、Must(しなければならないこと)を再評価し、適切なアクションプランを立てることが重要である。
自分のキャリアの方向性を再考する時、何を基準にして進むべきかを明確にするために「Will・Can・Must」の視点を活用することは非常に有効である。
年に1回や半年に1回の定期的なキャリアの見直しの際も、現状の自分の位置を確認し、今後の方向性を決めるための参考として「Will・Can・Must」を考えることが推奨される。
新しいプロジェクトやタスクに取り組む際、そのプロジェクトにおける自分の役割や寄与を明確にするためにも、このフレームワークを活用することが有益である。
「Will・Can・Must」は特定の瞬間だけでなく、キャリアの様々なタイミングでの自己反省や方向性の確認ツールとして活用することができます。
キャリアデザインの際に参考として用いることができる「Will・Can・Must」のフレームワーク。この考え方は、キャリアの方向性を見つめ直す際の一つの手法として有効である。絶対的な指針やルールではなく、自分の中の意欲や能力、そして役割を見つめるための参考の一つとして捉えてほしい。
等級や役職が変わるタイミングやキャリアの転機、または日常的な自己反省の中で、このフレームワークを活用することで、新しい視点や気づきを得ることができるかもしれない。
また、社内や社外においてキャリアデザイン研修が開催されている場合、参加することでこれらについて研修内で学び、自身について見つめ直すことも可能だ。
さまざまなキャリアの局面で直面する悩みや課題。その中で「Will・Can・Must」は、考え方や手段の一つとして、自分自身のキャリアをより豊かにするヒントを与えてくれるだろう。