ビジネスで物事を整理する際に欠かせないのが、「モレなく、ダブりなく」を意味する「MECE(ミーシー)」の考え方です。MECEが崩れていると、分析の抜けや検討の重複が生まれ、意思決定の質を大きく下げてしまいます。
本記事では、MECEになっていないNG例を6つ取り上げ、それぞれをMECEなOK例に改善する流れを解説します。あわせて、MECEになっていないと仕事でどんな問題が起こるのかも確認していきます。
目次

MECE(ミーシー)とは、物事を分類する際に「重複がなく、抜けもない」状態を表す考え方です。以下の頭文字をとっています。
・Mutually(相互に)
・Exclusive(重複せず)
・Collectively(全体として)
・Exhaustive(網羅されている)
つまり、いくつかの項目に分類したときに、項目同士が重なっておらず、かつ全体として抜けなくカバーできている状態がMECEです。

MECEな分類ができていれば、検討すべき論点を過不足なく洗い出せるため、原因分析や戦略立案、資料作成など、あらゆるビジネスシーンの土台となります。逆にMECEが崩れていると、重要な論点を見落としたり、同じ話を何度も検討し直したりすることになります。
実際に、リスキルのロジカルシンキング研修を通じてMECEを学んだ人たちからも、次のような声が寄せられています。
知識として知っているだけでは実践に移せないケースも多く、MECEは意識して使う練習を重ねることで身に付いていくスキルだと言えます。
ここからは、実際にありがちなNG例を挙げながら、どこが問題でどう直せばMECEになるのかを具体的に見ていきましょう。
この章では、業務でよくある6つのシチュエーションを取り上げ、MECEになっていないNG例を、MECEなOK例に改善してみます。
取引先を管理するために、顧客を次のように分類しました。
大手の法人顧客は『法人』と『大企業』の両方にカウントすればいいのかな…
従業員数はそこまで多くないけど資本金が大きい会社って、『大企業』に入れていいのかな…
パターン1:最もシンプルな軸
パターン2:規模も見たい場合
パターン3:規模の線引きを数値で明確にする場合
「法人か個人か」という軸と「企業規模」という軸が混在しているのが、そもそもの原因です。パターン1のように軸を1つに絞るのが最もシンプルですが、規模も見たい場合はパターン2・3のように軸を分けて表現します。特にパターン3は、「大企業」「中小企業」という主観的なラベルではなく従業員数という数値で線引きすることで、境界のあいまいさそのものをなくしています。
アパレルブランドのECサイトで、会員を次のように分類しました。
30代の優良顧客って、結局『30代』と『優良顧客』のどっちに入れればいいんだろう…
新規顧客が40代だったら、このリストのどれにも当てはまらない…
パターン1:年代の軸に統一
パターン2:新規・既存の軸に統一
パターン3:購入金額の軸に統一
複数の軸を併用したい場合は、軸を混ぜずに分けたうえで掛け合わせます。
この2軸を掛け合わせれば、「30代・既存顧客 × 優良」のように、重複や抜けのない形で顧客を分類できます。
MECEにするコツは、分類の「軸」を1つに揃えることです。「年代」「新規・既存」「購入金額」のように、どの軸で見たいかによって単純な1軸のリストが作れます。購入金額のように基準があいまいになりやすい軸は、金額などの数値で線引きすると境界がはっきりします。複数の切り口をどうしても併用したい場合は、無理に1つのリストにまとめず、軸ごとに分けて掛け合わせる(マトリクス化する)とよいでしょう。
売上が落ちている原因を、次のように整理しました。
「値段の割に魅力がない」場合って、『商品に魅力がない』と『価格が高い』のどっちだろう?
競合が新商品を出してきたら、このリストのどれに当てはまるんだろう…
パターン1:3C分析の枠組みで整理
パターン2:プロセスごとに整理
原因分析では、思いついた順に意見を並べるとMECEが崩れやすくなります。「自社・競合・市場」(3C)で要因ごとに整理する方法もあれば、「集客→商談→成約→リピート」というプロセスの流れで整理する方法もあります。売上を集客から成約、リピートまでのプロセスに分けることで、どこに課題があるのかを漏れなく整理できます。どちらも既存のフレームワークを枠として使うことで、重複と抜けを防ぎながら効率よく論点を洗い出せます。
営業担当者の1週間の業務を、次のように分類しました。
提案書の作成業務って、どこに入れるべきなのかな…
『日報』って、契約後に1カ月間お客様に毎日送っているレポートのことかな?社内日報のことかな?
パターン1(営業プロセス別の分類)
パターン2(目的別の分類)
パターン3(業務内容別の分類)
業務内容(見積書作成、日報など)と営業プロセス(テレアポ、商談、契約など)の軸が混在しているのが原因です。分類軸をそろえれば重複や抜けはなくなりますが、そのそろえ方は1通りではありません。時系列で追いたいならパターン1(プロセス別)、達成したいゴールで見たいならパターン2(目的別)、行っている作業の種類で見たいならパターン3(業務内容別)というように、目的に応じて軸を選ぶことが大切です。
新入社員向けマニュアルの目次を、次のように構成しました。
メールの設定は初日にやることが多いけど、『初日』と『メール』のどっちに書けばいいんだろう…
PC設定とメールって、初日じゃなくて2日目以降にやることなのかな…
パターン1:時系列で統一
パターン2:内容で統一
「いつやるか」(時系列)と「何をやるか」(内容)という別の軸が混在しているのが原因です。パターン1のように時系列で追うか、パターン2のように内容で整理するか、マニュアルの目的に応じてどちらか一方の軸に統一するとよいでしょう。
社内ツール導入の説明会の対象者を、次のように分類しました。
このリスト、他部署の管理職も対象に含まれるってことだよね…?たぶん私も対象なのかな…
私は管理職じゃないけど営業部だから、たぶん対象だよね…?
「営業部」「マーケティング部」という部署の軸と、「管理職」という役職の軸が混在しているのが原因です。部署にいる人は部署ごと丸ごと対象にし、それ以外の部署については管理職のみを対象にする、というように「対象範囲をどちらの軸で定義するか」を先に決めることで、誰が対象かが一目で分かるようになります。
ここまで6つの例を見てきましたが、注意したいのは「MECEになっていればそれで十分」というわけではない点です。形式としてはモレなくダブりなく整理できていても、実務でうまく機能しない分類も存在します。
例えば、経費精算の科目をこのように分類したとします。
すべての支出はいずれか1つの科目に必ず入るため、形式上はモレなくダブりなく整理できています。しかし、もし「その他」に全支出の3割以上が集まっているとしたら、本来知りたかったはずの「何にいくら使っているか」が見えなくなってしまい、分類としての目的を果たせていません。
つまり、MECEはあくまで「整理の形式」を担保するものであり、その分類が実務で意味を持つかどうかは別の観点で確認する必要があります。分類を作る際は、形式的にMECEになっているかだけでなく、「その分類は本来知りたかったことを教えてくれるか」もあわせて見直すとよいでしょう。
MECEを意識しないまま分類や分析を進めると、個人だけでなくチームや組織全体にも影響が及びます。

| 起こりやすいこと | 職場で起こる具体例 |
|---|---|
| 抜け漏れによるトラブル | 検討したはずの論点に抜けがあり、後から重要な問題が発覚して手戻りが発生する |
| 施策や工数の重複 | 同じ課題に複数の部署がそれぞれ別々に対応し、予算や工数が無駄になる |
| 優先順位が決められない | 分類の軸がバラバラで何と何を比べているのか整理できず、意思決定が遅れる |
| 資料や報告のわかりにくさ | 分類基準が一貫していないため、聞き手にとって理解しにくい資料になる |
| 議論の堂々巡り | 同じ論点を別の言葉で繰り返し話してしまい、会議が長引く |
このように、MECEになっていないと「なんとなく整理した気になっているが、実は論点が抜けている、あるいは重複している」という形で、後になってから問題として表面化しやすくなります。
本記事では、MECEになっていないNG例を6つ取り上げ、それぞれをMECEなOK例に改善する流れを解説しました。
6つの例を振り返ると、MECEを崩す原因の多くは3つに集約されます。
「法人か個人か」と「企業規模」のように、性質の違う軸が同じリストに同居している状態です。分類の軸を1つに揃えることが基本の対処になります。迷う場合は3C分析などのフレームワークを枠として使いましょう。
形式上は分けられていても、大半が「その他」に入れば実態は見えません。「その他」はあくまで例外の受け皿と位置づけてください。
「大企業」「優良顧客」といったラベルは、人によって解釈が変わります。「従業員数1000人以上」のように数値で定義を明文化すれば、境界のあいまいさそのものをなくせます。
MECEになっていないままだと、抜け漏れによるトラブルや施策の重複など、組織全体の生産性にも影響が及びます。まずは本記事の6つの例を、自分の業務や資料に当てはめて見直すところから始めてみてください。
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