メンタルヘルス研修の目的とは | 期待できる効果と目的別の選び方

メンタルヘルス研修は、実施すること自体が目的になりやすい研修です。何を目指すのかが定まっていなければ、受講者にとっては「とりあえず受けさせられた研修」で終わってしまいます。研修を職場の変化につなげるには、目的をはっきりさせることが出発点です。

この記事では、メンタルヘルス研修の目的を、なぜ必要なのか・何を目指すのか・どんな効果が期待できるのかという流れで整理します。あわせて、企業の課題別の考え方や、目的に合わせた研修の選び方も見ていきます。

作成者
株式会社リスキル

東証グロース上場(291A)・研修実績 年間3,900社以上

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メンタルヘルス研修はなぜ必要?

 
メンタルヘルス研修とは、従業員がストレスへの対処法や心の不調を防ぐ方法を身に付け、心の健康を保ちながら働き続けるための研修です。メンタルヘルス研修が必要とされるのは、心の不調が個人の問題にとどまらず、職場や企業全体に影響するからです。具体的には次の3点が挙げられます。

不調は本人だけでなく職場全体に影響するから

 
メンタルヘルス不調を放置すると、本人のパフォーマンス低下にとどまらず、周囲にも影響が広がります。不調を抱えた人の業務を周りがカバーすれば、そのメンバーの負担が増え、別の不調を招くこともあります。

影響の範囲 起こりうること
本人 集中力の低下 / ミスの増加 / 休職や離職
チーム 業務カバーによる負担増 / チーム全体の生産性低下
企業 人材確保や育成の手間とコストの増加

 
一人の不調がチーム全体に波及しやすいからこそ、個人任せにせず、職場全体で向き合う必要があります。
 

知識がないと不調に気づけず相談もしにくいから

 
心の不調は、本人でさえ気づきにくいものです。「疲れているだけ」と無理を続けるうちに、状態が悪化することもあります。また、メンタルヘルスへの誤解があると「評価が下がるのでは」という不安から相談が後回しになりがちです。正しい知識を職場全体で共有することが、早めの気づきと相談を後押しします。
 

根性論での対応は逆効果

「頑張れ」「気持ちの問題だ」といった声かけは、本人を追い詰めてしまう場合があります。善意の対応が裏目に出ないよう、周囲にも正しい知識が必要です。

企業には従業員の心身の健康を守る責任があるから

 
職場のメンタルヘルスは、企業と従業員の双方が役割を果たしてはじめて守られるものです。法律でも、それぞれに次のような義務が定められています。

義務 担い手 内容
安全配慮義務 企業 従業員が安全で健康に働けるよう配慮する / 心の健康も対象と考えられている
自己保健義務 従業員 心身の健康管理に自ら努める / 予防に取り組む

研修は、企業と従業員の両方の役割を知ってもらう機会になります。
 

メンタルヘルス研修が目指す3つの目的

 
メンタルヘルス研修の目的は、自分の心を守る力・周囲を支える力・相談しやすい職場の土台の3つをそろえることです。どれか1つだけでは十分とはいえず、3つが重なることで職場のメンタルヘルスが守られやすくなります。
 

1

自分を守る

自分のストレスに気づき上手に付き合えるようになる

2

周囲を支える

周りの人の変化に気づき支援につなげられるようになる

3

土台をつくる

不調を感じたときに相談しやすい職場にする

目的1. 一人ひとりが自分の心の健康を守れるようになる

 
1つめの目的は、自分のストレスに気づき、上手に付き合えるようになることです。ストレスをゼロにするのではなく、たまりすぎる前に気づいて手を打てる状態を目指します。こうした自分へのケアは「セルフケア」と呼ばれ、役職や年齢を問わず求められる力です。
 

セルフケアで目指す状態

  • 自分がストレスを感じやすい場面を知っている
  • ストレスがたまったときのサインに気づける
  • 自分に合った対処法や相談先を持っている

目的2. 周囲の変化に気づき支え合えるようになる

 
2つめの目的は、周りの人の変化に気づき、必要な支援につなげられるようになることです。不調を抱えた本人は、自分からSOSを出せないこともあります。そのとき、日頃から様子を見ている周囲の気づきが早めの対応のきっかけになります。

立場 期待される役割
管理職 部下の変化を察知する / 声をかけて話を聴く / 産業医や専門機関へ橋渡しする
同僚 気軽に声をかけ合う / 困っている様子に気づいたら上司や窓口につなぐ

 
管理職によるこうしたケアは「ラインケア」と呼ばれます。
 

目的3. 相談しやすい職場の土台をつくる

 
3つめの目的は、不調を感じたときに相談しやすい職場の土台をつくることです。相談窓口や産業医がいても、相談しにくい雰囲気があれば活用されません。研修をきっかけに、メンタルヘルスが「職場で話題にしてよいテーマ」だという認識が広がれば、打ち明けるハードルは下がります。
 

Before

相談窓口はあるが、使いにくく活用されていない

→

After

不調を感じたら早めに相談することが当たり前になる

メンタルヘルス研修で期待できる効果

 
3つの目的が達成されると、個人・チーム・組織のそれぞれで効果が期待できます。研修の効果はすぐに数字に表れるとは限らないため、誰にどんな変化が見込めるのかを押さえておくことが大切です。

対象 研修後の変化 期待できる効果
個人 ストレスのサインに早く気づける / 自分に合った対処法を選べる 不調が深刻になる前に立て直せる / 安定した状態で仕事に力を発揮できる
チーム・職場 メンバーの変化に周囲が気づける / 困ったときに声をかけ合える 一人に負担が集中しにくくなる / チーム全体で成果を出しやすくなる
組織・経営 休職や離職が減る / 相談しやすい風土が根付く 欠員補充や育成にかかる手間とコストを抑えられる / 人材が定着しやすくなる

 

個人に期待できる効果

 
個人では、自分のストレスに早く気づき、適切に対処できるようになることが期待できます。「最近眠れない」「イライラしやすい」といった変化を放置せず、休息を取る、誰かに相談するといった行動を選びやすくなります。その結果、不調が深刻になる前に立て直せるため、安定した状態で仕事に向き合えるようになります。
 

Before

限界まで我慢して、不調が深刻になってから気づく

→

After

ストレスのサインに早めに気づき、自分で対処したり相談したりできる

チームや職場に期待できる効果

 
チームや職場では、メンバー同士が変化に気づき、声をかけ合える関係が生まれやすくなります。その結果、業務の偏りや不調のサインに早く手を打てるため、一人に負担が集中しにくくなります。支え合いながら仕事を進められるので、チーム全体で成果を出しやすくなるでしょう。研修の受講者からは、次のような声も挙がりました。
 

男性イメージ

まず自分のストレスを知り、部下に対して同じストレスを与えない、言いやすい環境を作ろうと思いました。

組織や経営に期待できる効果

 
組織全体では、休職や離職が減り、相談しやすい風土が根付くことが期待できます。長期休職や離職が続くと、欠員の補充や新たな人材の育成に手間とコストがかかります。予防と早期対応が進めば、こうした負担を抑えられ、人材も定着しやすくなります。

どんな課題に対応できる?課題別に見る研修の目的

 
メンタルヘルス研修は、自社が抱える課題に合わせて目的を設定することで効果を発揮しやすくなります。代表的な課題と、それに対応する目的を整理しました。

企業の課題 研修の目的 適した研修テーマ
従業員がストレスを抱え込んでしまう ストレスをため込まず早めに対処する セルフケア
管理職が部下の不調に気づけていない 部下の変化への気づきと対応 ラインケア
休職者の復職がうまく進まない 受け入れ体制づくり / 再休職の防止 休職・復職対応 / ラインケア
ストレスチェックの結果を活かせていない 集団分析を職場改善につなげる ストレスチェック活用
メンタルヘルス対策が単発で終わる 方針を決めて継続的に取り組む 健康経営 / ウェルビーイング

従業員がストレスを抱え込んでしまう

従業員が不調を一人で抱え込み、限界になってから表面化するケースが多い場合は、従業員一人ひとりのセルフケアを目的に置きます。ストレスとの付き合い方や相談先を知っておけば、ため込む前に対処でき、不調が深刻になる前に立て直せます。新入社員や異動直後など、環境が変わる人から優先して取り組むのも一つの方法です。

管理職が部下の不調に気づけていない

部下の不調に気づくのが遅れている場合は、管理職のラインケアが中心になります。変化に気づくには普段の様子を把握していることが前提のため、日頃のコミュニケーションの見直しも欠かせません。テレワークで部下の様子が見えにくい職場では、特に意識したい目的です。

休職者の復職がうまく進まない

休職者の職場復帰がスムーズに進まない場合は、復職者の受け入れ体制づくりと再休職の防止が目的になります。復帰の進め方や受け入れ方が定まっていないと、本人も周囲も戸惑い、再び体調を崩すきっかけになりかねません。管理職が復職者の心理状態や適切な接し方を押さえておくことで、安心して職場に戻れる環境を整えやすくなります。

ストレスチェックの結果を活かせていない

労働者数50人以上の事業場では、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。しかし、実施しただけで終わり、結果を活かせていない職場も少なくありません。この場合は、部署ごとの傾向を分析する「集団分析」の結果を職場環境の改善につなげることが目的になります。結果をもとにした環境改善は努力義務ですが、取り組むことで従業員からの理解も得られやすくなります。

メンタルヘルス対策が単発で終わる

メンタルヘルス対策がその場限りで終わっている場合は、会社の方針を決めて継続的に取り組むことが目的になります。取り組み同士がつながっていないと、効果も見えにくくなります。経営層が方針を示して全社で共有することで、一つひとつの取り組みを同じ流れの中で続けやすくなります
 

用語

健康経営とは

従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践すること。従業員の健康を守ることが、生産性や組織の業績向上につながるという考え方にもとづく。

目的に合わせたメンタルヘルス研修の選び方

 
メンタルヘルス研修は、「課題 → 目的 → 対象者 → テーマと形式」の順で考えると選びやすくなります。テーマや形式から先に決めると、自社の課題とずれた研修になりかねません。研修担当者が押さえておきたい3つのステップを見ていきます。
 

1

目的を決める

社内の情報から課題を整理し目的を絞る

2

対象者を決める

目的に合わせて誰に受講してもらうかを決める

3

テーマと形式を選ぶ

目的と対象者に合う内容と実施方法を選ぶ

ステップ1. 自社の課題を整理して目的を決める

 
最初に、自社で起きている課題を整理します。感覚的な印象だけで判断せず、社内にある情報をもとに現状を確認することが大切です。
 

課題を整理するときに確認したい情報

  • ストレスチェックの集団分析の結果
  • 休職者や離職者の人数と傾向
  • 相談窓口の利用状況
  • 管理職や現場へのヒアリング内容

目的を欲張ると内容が浅くなりがちです。1回の研修で目指す目的は1つか2つに絞ると、受講者にも伝わりやすくなります。
 
 

研修の目的は受講者にも伝える

担当者が目的を決めても、受講者に伝わっていなければ「やらされる研修」になりがちです。研修の案内や冒頭で、なぜこの研修を行うのかを共有しておくと、受講者が自分ごととして参加しやすくなります。

ステップ2. 目的に合った対象者を決める

 
目的が決まったら、誰に受講してもらうかを決めます。目的によって、中心となる対象者は変わります。

研修の目的 主な対象者 選ぶときのポイント
自分の心の健康を守る 全従業員 新入社員や異動者など環境が変わる人を優先する
周囲の変化に気づき支える 管理職 / リーダー層 昇格時など部下を持つタイミングに合わせる
相談しやすい土台をつくる 全従業員 / 相談窓口担当者 役職を問わず共通の理解をそろえる
ストレスチェックを活かす 人事担当者 / 管理職 結果が出た後の時期に合わせる

 

ステップ3. 目的に合う研修テーマと形式を選ぶ

 
最後に、目的と対象者に合うテーマと実施形式を選びます。基本を広く届けるならセルフケア、管理職の対応力を高めるならラインケアがおすすめです。特定の課題がある場合は、テーマを絞った研修も選択肢になります。

目的や課題 研修テーマの例
ストレスへの対処力を高めたい ストレスマネジメント / アンガーマネジメント
困難から立ち直る力を養いたい レジリエンス / メンタルタフネス
生活習慣から整えたい 睡眠改善
復職者を支えたい 休職・復職対応

 
形式は、人数や受講のしやすさで選びます。まとまった人数なら集合型の研修、少人数なら公開講座、時間を揃えるのが難しい場合はeラーニング動画講座が候補です。詳しくは下記の記事でも紹介しています。

まとめ

 
メンタルヘルス研修の目的は、一人ひとりが自分の心を守り、周囲が支え合い、相談しやすい職場の土台をつくることです。心の不調は職場全体に影響するからこそ、企業として研修を通じて備えておくことが大切です。研修を選ぶときは、テーマや形式からではなく、自社の課題を整理して目的と対象者をはっきりさせることから始めましょう。

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